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16: 逃げられない国の住人たち G

加藤隆弘(かとう・ たかひろ)
九州大学大学院医学研究院精神病態医学 准教授
(分子細胞研究室・グループ長)
九州大学病院 気分障害ひきこもり外来・主宰
医学博士・精神分析家

『みんなのひきこもり』(木立の文庫, 2020年)
『メンタルヘルスファーストエイド』(編著: 創元社, 2021年)
『精神分析と脳科学が出会ったら?』(日本評論社, 2022年)

いま私は、木立の文庫で刊行予定の原稿を執筆中です。
このnote連載が土台となっています。
題して『逃げるが勝ちの心得――精神科医がすすめる「うつ卒」と幸せなひきこもりライフ』
★タイトル! 出版社と激論中!! 二転~三転~ワクワク展開になっています

前著『みんなのひきこもり』で試みた趣向を踏襲して、
巻頭で「にげられない」シーンのバリエーションをお示しします。

☆『みんなのひきこもり』に引き続いて
 おがわさとしさん〔京都精華大学マンガ学部教授〕が
 私の原稿を読み込んで「ひとコマ漫画」として描いて下さっています!!

メランコリー型

——5年前に母親を亡くした50代後半の女性Gさん


〇三姉妹の長女として地方都市の郊外で生まれ育ったGさんは、高校卒業後、事務職に就きますが、そこで出会った6歳年上の男性と結婚し、夫の転勤に伴い国内を転々としていました。徐々に病弱になっていく両親のことが心配でしたが、遠方に住んでいるため、直接的なお世話をすることが出来ずに、悶々とした生活を送るようになりました。

〇40代後半には子ども達が巣立ち、夫も定年を間近にして、そろそろ実家近くに家を建てようかというちょうどその頃、母が心筋梗塞で突然死したのです。その一ヶ月後には十年来飼っていた犬も亡くなりました。

〇葬儀のあとも、気分の落ち込みが月単位・年単位で持続しており、最近では、亡き母や犬への罪償いのためには「自分が消えるしかない」との思いが強まっています。

――なぜGさんは、亡くなった母親や犬の魂から逃げられないのでしょう。

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