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過去と、今と、未来の自分をつなぐのは。〜「さみしい夜にはペンを持て」読書感想文〜

「ぼくは、ぼくのままのぼくを、好きになりたかった。」

そんな一文で、物語の幕が上がる。
この本は、古賀史健さんの「さみしい夜にはペンを持て」。

古賀史健さんといえば、「嫌われる勇気」の筆者である。
そんな著者の最新作であり、何やら書くことに対する本のようだ。
とっても面白そうじゃないか。
実際、知人にも勧められていたこともあり、書店で目にするや否や購入を決めた。

この本の中では、登場人物が海の生き物たちである。
主人公は、タコのタコジロー。
「ゆでダコジロー」というあだ名でいじめられており、「タコになんか生まれなきゃよかったのに」と思っている中学3年生。
そんなタコジローが、いじめで登校がしんどくなり寄り道した公園で、不思議なヤドカリのおじさんと出会う・・・。
ここから先は、タコジローとヤドカリのおじさんとの会話がメインで進んでいく。

さながら、どの年齢層でも読みやすく構成された、新「嫌われる勇気」だ。
加えて、あえて人間でない海の生き物を登場人物に据えることで、ファンタジーを楽しみながら考えさせてくれる。

自分のことを好きになれないタコジローは、ヤドカリのおじさんとの会話を通して、「書く」ことで「人生最大の謎を解く」ことができるのだと学んでいく。果たして、「人生最大の謎」とは何か・・・?


気づけば、あっという間に読了していた。
ページを捲る手が、いつも以上の速さで、そして止まらない。
こんなに夢中になって一気読みしたのは、まさに「嫌われる勇気」以来。
そして、読書で得られる心の動きも、「嫌われる勇気」以来の読書体験だった。
こんなにも、「書く」という行為の大切さとその意味を、優しく、それでいて心に強く語りかけてくれる本は、他にないだろう


「『いま、ここ』を真剣に生きていたとしたら、その刹那は常に完結したものである。」(「嫌われる勇気」より)

この「嫌われる勇気」の言葉を踏まえて、この本から学んだこと。
それは、「いま、ここ」を真剣に生きていた過去の自分との対話は、
未来の自分への最高のプレゼント
だということだ。
「いま、ここ」を真剣に生きていた自分を振り返り、日記を書くことで過去の自分と対話できる。
もう消しゴムをかける余地がない、というところまで書き上げられた日記は、自己との対話を重ねて導き出された、その時点での、自分だけの答えだ。
そしてその日記を、未来の自分が読むとき、「そうか、こんな日々もあったんだなあ」「ああ、この経験があったから今があるんだなあ」と、きっと笑うことができる。
たとえ今が苦しかったとしても。
そうやって、書くことによって、過去、現在、未来の自分がつながるのだ。

「さみしい夜にはペンを持て」を読み終えて、書くことは、自分を大切にして生きることに深く関わる行為なのだと思った。
未来の自分のために、そのかけがえのないひとときを自己との対話の中で磨き上げ、大切に保管しておくことなのだから。


やっぱり、「書く」ことって、最高だ。

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