読書好き総合診療医が選ぶ、今年のベスト本〜医学書も、一般書も〜
さて、2023年も残りあとわずか。
私にとって、今年は特に、読書に力を入れた年でした。
読みたい本が次から次へと現れる・・・。
これはもちろん、医学書に限ったことではありません。
私のモットーは、「広く自由に、読みたいものを読む」ことです。
今年は、自分としては沢山の本を読んだのですが、読んだ冊数は覚えてもいないですし、数えてもいません。
ましてや、誰かと冊数を競うこともありません。
それも、広く自由に読みたいからこそです。
そんな年末。
医学書も、エッセイも、ミステリも大好きな総合診療医として、2023年の、【あくまで私にとってのベスト本】を選んでみました。
よろしければお付き合いください。
医学書編
【医学書におけるベスト本=私が最も使った医学書】
以下の選書は、私自身が「総合診療医=ジェネラリスト」であることが多分に影響していると思います。私がよく使う「相棒」二冊です。
⭐️ジェネラリストのための内科外来マニュアル第3版
一般内科外来や家庭医外来をもつ医師にとって、外来におけるトップマニュアルと位置付けられている本です。2023年9月25日にアップデートし第3版になりました。
前半は患者さんのよくある主訴ごとに挙げるべき鑑別疾患と、診断のために必要な考え方、とるべき問診と身体所見、オーダーすべき検査が一覧でまとまっています。一覧の後にはフローチャート含め、鑑別疾患の想起ポイントについて詳しい解説がなされています。また、後半は高血圧や糖尿病など、common diseaseごとのマネジメントが最新のエビデンスに沿って載っています。まさに内科外来必携の一冊です。
⭐️内科レジデントの鉄則第4版
初期研修医ほぼ全員が持っている本が、2023年10月10日にアップデートし第4版になりました。ここに書いてある知識は、全研修医の共通認識となるものです。初期研修2年間で最低限身につけておくべき内科的知識は、ここにあります。
Ⅰ 病棟当直編は、救急外来にもそのまま役立つような、症候別の対応方法が、Ⅱ 入院編は、入院理由としてよくみられる疾患についての対応方法がまとまっています。Ⅲ 病棟管理編は、輸液や栄養、抗菌薬の使い方など、病棟管理の基本の「き」がまとまっています。研修医から必携の書です。
いずれにせよ、「ジェネラリストのための内科外来マニュアル」が内科外来のバイブルであり、「内科レジデントの鉄則」が病棟管理のバイブルであることは、まず間違いないでしょう。
実用書・エッセイ編
【実用書・エッセイにおけるベスト本=私が読んで最も心に残った本】
実用書・エッセイとしては、私にとって、今年は圧倒的にこの一冊でした。
⭐️さみしい夜にはペンを持て/古賀史健
「ぼくは、ぼくのままのぼくを、好きになりたかった。」
この言葉に心を掴まれたなら、まずは読むべき。
これは、本書の冒頭一行です。
一言で言って、凄く良かったです。
ページを捲る手が止まらず、あっという間に読み終えていました。
まさに「嫌われる勇気」以来の読書体験でした。
書くことは、あの時を真剣に生きていた「過去の自分」との対話であり、
それは「未来への自分」に与えられる最高のプレゼントなんだと。
「『いま、ここ』を真剣に生きていたとしたら、その刹那は常に完結したものである」(嫌われる勇気)
これで、過去、現在、未来の自分がつながったように思えます。
「嫌われる勇気」を読んだ時の感情が呼び覚まされ、かけがえのない読書体験を味わえた、ある海の中の物語です。
詳しくは以下のnoteへ。
自分を好きになれずに悩んでいる人に、そっと贈りたい本です。
ミステリ編
【ミステリにおけるベスト本=私が「これは面白い!」と心から思えた本】
私が大好きなジャンルであるミステリ編は、日本ミステリ界の礎を築いた二人の巨人から一冊ずつ選びました。
⭐️八つ墓村/横溝正史
本当に、ページを捲る手が止まりませんでした・・・。
横溝正史のミステリは、こんなにも面白かったのかと。
ホラーが大の苦手であるために、その題名や装丁のおぞましさから大分回り道をしてしまったのが悔やまれます…。
ことに八つ墓村は、恐ろしい伝奇を元にしたミステリに加え、財宝をめぐる鍾乳洞の冒険譚的側面も実に見事です。そしてその根底にある人間の業たるや・・・。
ミステリ愛好家の間で、なぜに八つ墓村の評価が著しく高いのかわかりました。いやあ、大満足です。
⭐️孤島の鬼/江戸川乱歩
子どもの頃に「少年探偵」シリーズを始め江戸川乱歩はよく読んでいましたが、本作は「江戸川乱歩と名作ミステリーの世界」で初めて触れました。
(子どもの頃に読んでいたら色々とトラウマになりそうな本…。)
前半は、不可思議な連続殺人事件を巡る探偵小説、
後半は、絶海の孤島を舞台に、八つ墓村のように宝を巡る冒険小説。
そして、全編を通して悲しい恋愛小説でもありました。
映像化したらなかなかに目を背けたくなるように不気味な情景の連続なのですが、その中にも怪しい美しさがあり、ページを繰る手が止まらないのは乱歩の筆が成せる業。
まさに乱歩ワールド全開の傑作でした。
今年は新作ミステリも読んだのですが、何せ今年は、江戸川乱歩作家デビュー100周年記念の年です。
それにNHKでは、横溝正史作品の実写版の再放送があり、しかもそのどれもが秀逸だったので、一気に横溝作品ブームが(私に)訪れたのでした。
したがって、ミステリにおいては「原点回帰」が必至だったのです。
最後に
読書は、他者の人生を、ノーリスクで追体験できる、かけがえのない体験です。読書している時の自分が、最も心が平静で、充実しているような気がします。
さて、来年はどんな本を読んで、どんな年にしよう?
私にとって、読書を続けている限り、きっと良い年になることは間違い無いでしょう。
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