見出し画像

GMOぺパボ×マネーフォワード CDO対談@福岡【イベントレポート】

2023年5月12日、GMOペパボ株式会社と株式会社マネーフォワードが共同で開催した両社のCDO対談イベント。GMOペパボ株式会社の福岡オフィスでコロナ規制緩和後に久々に行われたオフラインのイベントでしたが、当日は多くの方にご来場いただき盛況でした。

対談のテーマは「福岡と他拠点で生み出すデザインコラボレーションの価値とは?」。日本各地に拠点があり、福岡を重要拠点のひとつと位置付ける両社ならではの視点で、デザイン組織の戦略について語り合いました。

本記事では、イベントで語られた内容をお届けします。登壇いただいた両社CDOのプロフィールは以下の通りです。

GMOペパボ株式会社 執行役員CDO 小久保 浩大郎

フロントエンドデベロッパー、インターフェイスデザイナー、IA としていくつかのデザインファームでキャリアを積む。2011年Google、2018年CAMPFIRE CXO などを経て、2019年よりGMOペパボへ。全社横断でデザイン組織のマネジメントを経て2020年執行役員CDOに就任。デザイン経営を推進し、組織的なデザインの活用とアウトプットの質の向上というミッションに取り組んでいる。

株式会社マネーフォワード グループ執行役員CDO 伊藤 セルジオ 大輔

2003年にフリービット株式会社に入社し、CEO室にて広報、ブランディング、事業戦略などを担当。2006年に同社を退社し渡米。ニューヨークにてアートを学び、フリーランスデザイナーとなる。2010年に帰国し、デザイン事務所である株式会社アンの代表を務める。2013年度グッドデザイン賞受賞。2019年からは、当社デザイン戦略グループのリーダーを務める。2020年、CDOに就任。

モデレーターは筆者の古長です。

福岡拠点の位置付け

古長:それではまずは各社のご紹介とデザイン組織における福岡の位置付けを教えていただけますか?

小久保CDO : GMOペパボ株式会社は、今年で創業20年を迎えました。本社は東京ですが、実は創業は福岡なんです。 創業者はみなさんご存知の家入一真氏なんですが、 彼がこの地で起業したわけですね。 しばらくは福岡で事業をやっていて、途中から東京に本社を移しました。 そして2019年には、鹿児島オフィスも開設し、組織の拡充をしています。大きくこの3拠点のオフィス(+リモートでの連携)という組織です。

基本的には「作る」ことがメインの会社で、 サービスを通して自分たちもものを作るし、サービスを通して世の中の「作る」人を増やしていくことを大事にしています。 実は今年ミッションを新しくしました、「人類のアウトプットを増やす」というミッションです。

このミッションを実現するためのサービスとして、「ロリポップ」、「ヘテムル」、「ムームードメイン」、「グーペ」という、インターネット上のコンテンツをホスティングして皆様に見ていただく支援をするサービスがあります。

さらに実際にそこから色々な価値交換をするためのプラットフォームとして、「カラーミーショップ」、「SUZURI(スズリ)」、「minne(ミンネ)」、そして、こうしたクリエイティブな活動をしていく方々の金銭面でのバックアップをするための金融事業なども手掛けています。

その会社の中でどんな風にデザインに取り組んでいるのかというと、 基本的には各サービスに紐づく事業部があり、それぞれ5〜10名ほどのデザイナーが所属しています。そして全社横断組織としてデザイン部があり、私はこのデザイン部の直接の指揮とペパボ全体のデザインの統括をしています。 拠点としては、福岡に10名ほど、東京には30名ほどのデザイナーがいます。

福岡は創業の地なので、他社でありがちな東京で創業して、特定の機能を地方にアウトソースするような位置付けにはなっていません。福岡にもサービスの要になるデザイナーが在籍しています。

基本的にはプロダクトごとに大まかな拠点との紐付きがあるので、例えばホスティング系のサービスは福岡拠点が中心に担当しています。minne(ミンネ)は以前は福岡でしたが、現在は東京拠点が中心です。

ただ、最近ではホスティング系も東京で担当し、拠点を跨ぐような配置に一部はなっています。遠隔でも仕事をすることが当たり前になって、人員も流動的になり自由度が高まりました。

古長:そうすると、デザイナーも関わる事業の選択肢が増えますし、採用面でも優秀なデザイナーを集めやすくなりますよね。

小久保CDO : そうですね。多拠点展開している価値はそのあたりですね。近年鹿児島オフィスを開設したのも、それぞれの地域にいる優秀な方を仲間にしてより大きくビジネスをやっていきたいという想いがあります。

エンジニアに関していうと、弊社は福岡テック企業の先駆者だと思っていて、いまでは多くのテック企業が開発拠点として福岡に進出してきてますから、人材獲得の競争も激化しています。そんななか鹿児島に新たなオフィスを構えたわけです。

鹿児島は福岡からのアクセスもいいですし、親戚的な位置付けですね。現在の鹿児島オフィスは、エンジニア拠点という位置づけから始まりましたが、現在は他の職種の方も加わりました。今後はデザイナーを採用する可能性もゼロではないと考えています。

古長:では、マネーフォワードとしてはいかがでしょうか。元々東京本社から福岡に進出したわけですが、その組織戦略について教えてください。

セルジオCDO:株式会社マネーフォワードは2012年創業で、創業10年を超えたところですね。プライム上場しておりまして、本社は東京の田町にあります。今は社員も2000名程度になっています。

我々はミッションとして「お金を前へ。人生をもっと前へ。」を掲げています。マネーフォワード ME(ミー)という個人向けの家計簿アプリですとか、マネーフォワード クラウド会計などのバックオフィス向けのプロダクトを色々と展開しています。色々なお金の課題を解決しながら、ユーザーさんの人生を前に進めていく、そういった取り組みをしている会社です。

我々のデザイン組織体制は、GMOペパボさんと近いんですが、B2B事業、B2C事業、それから共創という 金融機関さんと一緒にサービスを作っていく事業という領域があって、それぞれにデザイン部が存在しています。それと同時に横串のデザイン戦略室がありまして、 私もこのデザイン戦略室に在籍しています。なので縦と横で繋がるマトリックス型の組織構造になっています。

マネーフォワードは全国に拠点があり、東京、関西、名古屋、福岡、あと海外だとベトナム、インドで開発をしています。その中でも今日はここ、福岡がテーマになっていますね。

福岡拠点は2017年にマネーフォワード初の地方拠点として開設されました。非常にアグレッシブというか、本当にオーナーシップを持っている拠点で、 福岡初のプロダクトをいくつも生み出しています。ここにも複数名のデザイナーが所属しておりまして、 今日もこの会場に何名か来ております。

福岡で開発しているのは主にバックオフィス系のプロダクトです。マネーフォワード クラウドの一部ですね。皆さんの馴染み深いところでいくと、 経費精算のプロダクトや、ビジネスカードです。それらのプロダクトを福岡で開発しています。

今日は奇遇にも、このイベントにマネーフォワードの福岡拠点を立ち上げたご本人がきているので直接話を聞いてみましょうか。執行役員の黒田さんお願いします。

黒田:マネーフォワードの黒田です。福岡開発拠点長をしております。福岡はマネーフォワードにとって初の地方開発拠点で2017年12月に開設しました。組織拡大していく中で東京だけでエンジニアやデザイナーの採用をしていくのにも限界を感じていたころ、私自身が九州出身かつ大学・大学院を福岡市で過ごした経験もあって、縁の地である福岡で組織拡大の役割を担いたいと思い手を挙げ、開設が決まりました。

先ほど両社CDOも言っていた通り、福岡拠点というと、東京から一部の仕事をアウトソースされるような企業さんが少なくないと思っています。そういう拠点にしたくなかったので、オーナーシップを持って開発できる拠点にしたいという想いが強かったです。 そういった拠点にしようと思って、いろいろこれまで取り組んできています。

福岡拠点を皮切りに、その後は海外含めて各所に開発拠点が開設されました。多分福岡拠点をひとつのモデルケースに、各拠点もオーナーシップを持って、みんなが当事者意識を持って開発できるというところを大事に、各拠点が作られていっているんじゃないかなと思います。

古長:なるほど。福岡拠点の立ち上げからさらに遡ると、その福岡という地でテック企業が活躍するモデルケースを業界として切り開いてくださったのがGMOペパボさんということでもありますよね。

小久保CDO:その通りです(笑)

セルジオCDO:デザイナーが福岡拠点に入ったのは、2017年の拠点の立ち上げから2年経ったところですね。最初の2年間はエンジニアだけで、そこから最初のデザイナーがジョインしてさらに数名加わり現在の体制になっています。

デザイナーの多拠点体制の狙い

古長:それでは次のテーマに移ります。体制の話は先ほど伺いましたが、現在そのようなデザイナー体制になっている狙いと福岡デザイナーに対する期待についてもう少し詳しく聞かせていただけますか?

小久保CDO:私は組織的にチームでデザインして成果を出すことが大事だと考えているし、やりたいことなんです。そのうえで、どこにいる人かよりも、どんなスキルや特性を持っている人かの方が重要です。各地にいる優秀な方と一緒に仕事をしたいという気持ちで体制を作っていますね。 

デザイナーのひとりを例に挙げると、元々東京に長くいたminne事業部のシニアデザインリードは、現在福岡に在籍しています。minneの他のデザイナーは東京にいて、彼だけ福岡にいるという状況です。

その体制に組織的な狙いがあるかというと、そういうことはなく、デザイナーひとりひとりの「ここで活躍したい」とか「ここで生活していきたい」という思いを尊重して働く選択肢を増やす。多拠点展開はそういう位置づけなんですよね。

特に弊社は福岡が創業の地です。他社だったら東京に本社があって、地方に行くとチャンスとか待遇とかで不利になるんじゃないかという状況が起こる可能性があるのではと想像するんですが、GMOペパボにおいてはそれがまったくないし、 むしろ福岡は”Back to Origin”という感じですね。

いま例にあげたデザイナーだけでなく、福岡のメンバーの何名かはもともと東京とか他の場所にいて、福岡オフィスに何度もきて現地のメンバーと仲良くなるうちに福岡が気に入って、福岡に住みたくなったから移住してきています。

古長:マネーフォワードでの本日のイベントのために来福しているメンバーが何人かいますが、福岡行きたいなって言ってます。私も思ってます(笑)

それでは、マネーフォワード福岡拠点のデザイナー体制の狙いについては、実際にマネジメントをしている古長から話をします。

先ほどセルジオCDOが言っていた通り、福岡開発拠点で担当しているプロダクトがいくつかあって、その担当プロダクトデザイナーが福岡に所属しています。開発チーム+プロダクトデザイナーセットでタッグを組んで同じ拠点に所属することを大事にしています。

一方でPdMは東京に所属しているので、福岡のエンジニアチームと東京のPdMとの橋渡し役としてのプロダクトデザイナーの働きが期待されています。やはりプロダクトづくりの根幹は開発ですから、開発に深く関わっていけるデザイナーが福岡にいることの意味は大きいと思っています。

そんな中でセルジオCDOに聞きたいのは、福岡に関わらず全国の拠点でデザイナーを配置している狙いなどあれば教えてほしいです。

セルジオCDO:GMOペパボさんの考えに近いと思っています。全国または世界に優秀なデザイナーがいると思っているので、その輪を広げていくというのが基本的な考え方です。

福岡拠点に限った話ではありませんが、日本全国どこでも優秀なデザイナーさんがいらっしゃるなと思っています。 今デザイナーがいるのは東京以外に福岡、関西、名古屋ですけど、 最初の地方拠点のデザイナーが福岡の1号デザイナーなんです。

彼が当時は3、4年前ですか、1人だけ福岡にいて他全員東京にいるみたいな状態だったんですけど、多分その頃はそれなりにコミュニケーションギャップがあったのかなと思っています。

僕らとしては東京側で気を使うんですけど、 飲み会をするとタブレットを置いて彼だけタブレットで登場するみたいな、そういう飲み会とかしてたんです。どうやら辛かったらしいですね。 当時はそういうこともありました。

現在は原則どのデザイナーも週1出社にしていますが、7〜8割の仕事はリモートでなので、当時のようなギャップは今はなくなってきています。福岡を皮切りに数年かけてその基盤ができてきたので、各地の優秀なデザイナーさんと一緒にやっていきたいですね。

基本リモート、時々オンサイトでフェイスtoフェイスで信頼関係を構築しながら仕事をすることで、よりクリエイティブなことが生まれてきますし、 それが各拠点で重要な役割や価値になっていると感じています。

古長:ここで1つ質問がきていますので投げかけてみます。先ほどから「福岡でのオーナーシップ」というのがひとつのキーワードになっていますが、具体的にどういうことでしょう?

セルジオCDO:拠点がプロダクトを企画し、拠点が開発し、拠点がリリースし、全国で使われることですね。要するに、東京で考えたものを拠点がつくる訳ではなく、新規プロダクトも考える自主性や責務を拠点自身が持っているということです。

私のイメージですが、マネーフォワードの場合、社内にスタートアップがいっぱいあって、自律したユニットが各所にあるんですよね。それぞれのユニットが企画からリリースまでを一貫してやっている、それがオーナーシップという意味合いです。

拠点間でのコラボレーション

古長:それでは、最後のテーマです。拠点デザイナーが実際に全国各地のメンバーとどのようにコラボレーションして価値を生み出しているか。両社の状況を教えてください。

小久保CDO:GMOペパボの場合は、デザイナーだけではなく、エンジニアもビジネスサイドのメンバーも含めて、いろんな拠点に、一つの事業のメンバーが所属しているケースがあります。

なにかフィーチャーを開発しようということになって必要なチームメンバーの一部が他拠点にいれば、当然その人はリモートで参加するし、たまに大きな話をするときは合宿をするぞ、とどこかのオフィスに集まって、しっかり時間を取って話し合うことをやっています。

リモートとリアルを組み合わせてバランスをとってやってますね。合宿は東京と福岡どっちが多いかというと、事業部によりますね。他拠点をうまく活用して、東京・福岡・鹿児島それぞれの地で、美味しいもの食べて親睦を深めていますよ(笑)

古長:鹿児島でも集まるんですね、いいですね。美味しいものがいっぱいありそうです(笑)

小久保CDO:ただ、マネーフォワードさんも同じだと思うんですが、我々は主にインターネット上でのサービスを提供しており、現状、それがどこかの土地や文化に根差しているわけではないですよね。

一般論としてデザイナーが地方に在住している場合、その土地ならではの文化や環境が価値に現れたりする事はあるだろうと思います。現状だと我々のサービスではそれを活用する機会はなかなかないですが、将来的な可能性はありますよね。

セルジオCDO:確かに我々のサービス、特にB2Bのサービスだと、日本全国の様々な会社さんに使っていただいているので、もしかしたら拠点にいるからこそ分かる地域の企業のペインが拾えている部分もあるかもしれないですね。

とはいえ、現状今のリモートが活用できている中で、どんな価値を見出せてるかというと、拠点垣根なくデザイナーが活躍できていることが一番だと思っています。

最近面白いなと思うのは、福岡所属のデザイナーが東京のデザインチームやPdMに対してデザイン勉強会を開いてくれたり、価値をしっかりと拠点に限らず巡るようなことが起きています。非常にいい流れができているとなと思いますね。

あとは、やっぱり実際に対面するのが一番良いと思うので、GMOペパボさんもやってらっしゃいますけどAll Hands、デザイナー総会、そういったリアルイベントを定期的に開催しています。全国各拠点のデザイナーに集まってもらえる企画を考えていますね。

小久保CDO:他拠点にいるデザイナーも、そのイベントの時は物理的に集まるんですか?

セルジオCDO:そうですね。年に開催できる回数は限られますが、今企画中のイベントでは東京に全員集合してみんなでワイワイやろうかなと思っています。

古長:参加者から現在のテーマに関わるご質問をいただきました。「インターネットの世界で拠点としての事業はどういった特色や有意性がありますか?福岡ならではの事業は起きているのでしょうか?」今までのお話しいただいたところだと、福岡ならではというよりは場所に関わらず活躍できる文脈のほうが強いと思うのですが、いかがでしょうか?

セルジオCDO:事業内容という意味では、ローカライズした事業を特にやっているわけではないので、独自性はあまりない気がします。どちらかというと人材に広くアプローチできるというのは拠点を持っているメリットとして強いです。国内に限らず海外も含めてですね。 なので積極的に拠点展開をしています。

小久保CDO:私が昔いた企業ではグローバルにオフィスがあって、そこも地理的なところに紐づいた組織体系というよりは、同じ組織にいる人たちが地球の各経度にいる感じでした。ひとつのプロジェクトをこの地域の人が8時間やって、その次の人が8時間やってみたいに24時間稼働し続けるようなことをしてましたね。地理的な多様性の範囲がグローバルレベルに広がると、そういったメリットも出てきますよね。

拠点に依らないデザイナーの働き方

古長:それでは、ここからはみなさまからの質問に答えていこうと思います。「拠点に制限がなくなることによって、在宅勤務と出社のハイブリッドな働き方が進みますが、デザイナーの中には他のメンバーと積極的に関わりながら進めるタイプと、単独で進めるタイプとに分かれると思います。両社ではそういったことは実際に起きていますか?そしてそれをどう評価しますか?」

小久保CDO:より一般化して考えてみると、マネジメントをする人間のスキルさえあれば、それぞれのメンバーの特性に合わせて適した仕事をアサインして、そこでうまくやってもらうという考え方がありますよね。

デザイナーと一口に言っても幅広い業務の領域を担っていると思うんですよね。グラフィックやコミュニケーションデザインをやっている人もいれば、リサーチやフロントエンド実装が得意な人もいます。

その人にとって苦手なことを頑張らせるのはすごく不毛だなと思っていて、やっぱり好きで得意なことを伸ばして、それを組み合わせてどうやってビジネス目標に繋げていくか。それがマネジメントの力の見せどころだと思います。

今回のご質問でいうところの、内向的とか社交的みたいな本人の性質も、そういった特性のひとつと考えると、得意なことが有利に働く環境を作って成果に繋げられるようにするのが理想的ですよね。

古長:私も同じように思います。 単独で進める性質のデザイナーでも、その中でスペシャリティを発揮できる方はたくさんいると思います。結果的にその働き方で成果が出せれば特に何も問題ないと思います。

セルジオCDO:マネーフォワードに関していうと、会社のカルチャーとして「みんなでコラボレーションしていこう」という価値観のデザイナーが比較的多く集まっているように思います。先ほども話をした通り、PdMとの伴走を意識して、 プロダクトチームのコミュニケーター的な位置づけで動いているデザイナーが多いです。

さらに言うと、マネーフォワードのデザイナーはデザイン業務をあまり分業化していないので、 ひとりのデザイナーが見る領域が幅広いです。そうすると、コツコツタスクを進める時間帯はありますが、 一方で、しっかりみんなを巻き込みながら前に進んでいくこともデザイナーに求められます。それもあって、あまり、質問のような状況が起こりにくいようにはなっています。

CDOに必要な資質とキャリアパス

古長:それでは、二つ目の質問です。「おふたりは、どのようなキャリアパスで、どうやってCDOになったのでしょうか?」さて、どうしたらCDOになれるのでしょうか。教えておください(笑)

セルジオCDO:そうですね(笑)。まず経営という意味では、私は10年くらいデザイン事務所を経営していました。小さなデザイン事務所です。そこで2018年にマネーフォワードからプロジェクトを受けたのが、マネーフォワードとの初めての関わりです。 

そうして一緒に仕事をしているうちに、「セルジオさん、中のデザインも見てくれませんか?」と声をかけていただけるようになって、そのうち「CDOをやりませんか?」と。なので、デザインのアウトプットを出していく中で信頼いただいたのだと思います。

当時、マネーフォワードはデザイン経営を少し意識し始めた時期だったので、 CDOを探していて、たまたま僕はそこにフィットしたという状況ですね。ちなみに僕は、CDOの依頼をいただいて最初の2年間は断っていました。やりたくないなと思って(笑) 。

けど業務委託として2年くらい一緒にいろんなメンバーと仕事していく中で、 ぜひみんなと一緒にデザインを前に進めていきたいなと思って、最終的にCDOのオファーを受けたという経緯でした。 

「どのようなキャリアパスでCDOになれるのか?」の答えでいくと、そもそもCDO自体、人によってやっていることが全く違うと思っています。 なので、どういうタイプを目指すかによって答えが変わってきます。

マネーフォワードの場合だと、デザイナーももうすぐ100名くらいの体制になって、プロダクトも50以上あって、従業員2000人規模の会社なので、CDOに求められる役割は、マネーフォワードという会社の中で「デザインの力を最大化」することです。そのためには、経営にデザインをどう活用するか、デザイン組織をどう良くしていくのか、そんな役割が求められます。

経営とデザインをどう結びつけるかを一番考えるわけですが、私の場合は、実は自分でデザイン事務所をやる前に、スタートアップで社長室で働いたこともあって、 経営者の傍で何年か仕事をしていたこともあります。

僕みたいなタイプを目指すのであれば、経営者の方と対話する時間を増やすといいんじゃないかなと思っています。とにかくいろんな会社さんのトップの経営者の方と対話を繰り返していくことで、 経営者がどんなことに困っているんだろうかとか、 経営に対して何をするとデザインから価値が生み出せるんだろうか、その解像度を上げていくことで、明確になってくるんじゃないですかね。

小久保CDO:めちゃくちゃいい話ですね。 本当におっしゃる通りで、この手の役職って本当にやってることは色々だし、会社規模によっても違う。CTOなども一緒ですよね。

すごい小さいスタートアップで、デザイナーが2、3人で一番最初の人がCDOって名乗ってる場合もありますよね。肩書きは同じなんだけど、全然違う仕事をしてるんですよ。

だからCDOって、別にデザインが一番上手い人がなるわけでもないし、ある程度の会社規模になってきたとき、CDOの役割は、会社のミッションを実現するために、デザインをどのように活用していくか、そこに対して貢献・寄与できるか、目標が達成できるかになってきますよね。それを考え続ける性質がグッと強くなるので、デザインを良くしていこうという意識だけだと、ちょっとCDOは違うのかもしれません。

キャリアの話をすると、私はバイトしているフリーター時代もあったし、なんとなく流れや出会いでウェブやデザインの道に入って、Googleに入って、色々あってベンチャーに転職して、という感じなので計画的にキャリアパスを描いたわけでもなく、面白そうなことやってたらこうなっていた感じです。

再現性もないし、参考にならないですよね。それで何で今の仕事をしてるのかというと、その時々で自分が思う「面白そうなこと」が変わっていって、「チームでデザインの成果を出す」になってきたんです。 キャリアの前半はプレイヤーだったので、自分がマネジメントする側に回ることに当時は興味がなかったし、絶対自分はそっちのラインに行かないんだろうなと思っていました。 

ただ、プレイヤーで職人気質ではあったんだけど、ひとつを突き詰めるよりは、いろんなことが全部面白くて、作り込んでいくタイプだったんですよね。やればやるほど、全部を自分一人でやりきって、最高だなと思えるものを作るのは無理だなと思えてきたんです。

チームでやるしかないなと思った時に「じゃあマネジメントをやるか」という気持ちになった時があったんですよね。そしてそれが実現できる場を考えた時に縁があってGMOペパボにお声がけいただいて、自分が取り組みたいと思える領域と、それが必要な組織側のニーズが合致したので、 CDOをやるということになったという流れですね。

拠点1人目デザイナーの苦悩

古長:それでは、最後の質問です。たくさんいただいた中で最多の「いいね」が集まっている質問があります。「福岡拠点の1人デザイナーが、つらかった時をどうやって乗り越えたんでしょうか。せっかくご本人がいらっしゃっているので、聞いてみたいです。」福岡1人目デザイナーの大川さん、いかがでしょうか?(笑)

大川:どんなことがつらかったか?つらかったというよりは、不安なことが多かったです。やっぱり拠点のデザイナーが僕だけという状況だったので、 誰に相談したらいいんだろうというのが一番不安でした。

でも東京メンバーが、色々と気にかけてくれたので、少しづつ不安はなくなってきましたね。今では何人かデザイナーがいるのでそういう不安もなくなりました。

古長:当時の東京のメンバーが大川さんをケアしまくったということですね?セルジオCDO覚えていますか?

セルジオCDO:当時のそれで不安を払拭できていたかは分からないですが、組織ってみんなで作っていくものだと思うので、そういう工夫でいろんな困難を乗り越えるものはあるだろうなと思っています。 結果的に今も在籍してくれていますしとてもありがたいです。

さいごに

今回マネーフォワードのデザイン組織としては初めてのデザイナーイベントをオフラインで開催でき、来場者の関心も含めてあらためて福岡でのデザイナーコミュニティの熱さをを感じたイベントとなりました。

そして創業以来、福岡をテック企業の中心地として業界を引っ張るGMOペパボさんとの共同開催ができたことにより、福岡という地をより盛り上げていきたいと感じれる機会となりました。

オーナーシップをもった拠点として、より多くの優秀な人材が集まるようマネーフォワードも業界を盛り上げる一役を担いたいと思います。準備から開催まで多大なるご協力をいただきましたGMOペパボのみなさま、そしてご来場いただいた多くのみなさま、本当にありがとうございました。

マネーフォワード、GMOペパボではデザイナーを積極採用中です。プロダクトの価値を高め、より良いサービスを一緒に創っていきませんか?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?