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ネットが生み出したフリーランス搾取社会/ギグエコノミー


サラリーマンであることは次の3つの特徴を持っています。毎日同じ時間に同じルーティンをこなし、自分よりも会社を優先し、上司や顧客は無条件に偉くなる。会社員は安定と引き換えに嫌いなことでも文句も言わず働き続けなければならない。ではそんな働き方に納得のいかない人はどうしたらいいのでしょう?決められた時間に起きたくもないし、嫌いな人とも会いたくない。なによりもっとド派手なロマンが欲しい。

そんな野望を抱いている人にとって現代はうってつけの時代となりました。テクノロジーの発展によって新たな収入源はずいぶんと広がり多様な働き方のひとつにフリーランスとして独立する人も増えています。特にパンデミックを背景に副業や組織に依存しない働き方はより注目を集め、その中でもギグエコノミーと呼ばれる分野は非常に人気です。
しかし、その人気の陰には搾取構造や法整備の問題、幻のライフスタイルなど。自分に合った環境で伸び伸びと働くどころか圧倒的理不尽な立場へ追いやられてしまうことがよくおこります。

ネットが生んだギグエコノミー

ギグとはミュージシャンから広まった言葉でクラブなどで一度だけ演奏することを差しています。ウーバーイーツなら聞いたことがあるでしょう。働きたいときにアプリを使い単発で仕事を請け負う宅配サービス。他にもオンラインで仕事のマッチングをするクラウドソーシングなど。
このようなネット上のプラットフォームを通じて、単発で仕事を請け負う人たちをギグワーカーと呼び、それによって成り立つ労働市場をギグエコノミーと呼びます。

国内のギグワーカーは年々その数を増しており配達員やプログラマー、家事代行や事務関連など少なくとも300万人以上が働いており、以来の受発注を行うプラットフォームは各業界に隔たりなく多種多様なニーズを網羅しています。
田舎や山奥に住んでいようと、すでに持っているスキルや才能を活かし日本中のどこからでも仕事を見つけることができる。免許取り立てだろうが、デザイナーだろうが、行政書士だろうがネットさえあれば誰でもギグワーカーになれる。

ひと世代で働き方は大きな変化を遂げました。順を追って説明すると最も一般的な働き方に会社員があります。そこから個人で独立するとフリーランス(個人事業主)になります。そのフリーランスの小分類の中にギグワーカーが含まれる。独立と聞けばよくフリーランス側に焦点が集まるのですが実は雇用主にとっても嬉しい特典なんです。
例えば会社Aで働く田中君がいるとしましょう。社長は田中君を呼び出しこう提案します。「給料は変わらないから独立してみない?そうすれば君は他の仕事も経験できるし勤務時間も自由に決めれる。君の成長を考えると悪い話じゃないと思うんだ。お金の面なら安心してくれ。これまで通り給料分の仕事は君にお願いするから。」
この提案が成功すると会社Aは得点を受け取ります。まず人件費を売上原価へ変えることができ税金を払わなくて済すむ。社会保険料や源泉徴収などの負担も減ります。さらに最も大きな利点として会社の外に出してしまえば取引停止や交換がとても簡単にできる。従業員をフリーランス化することで会社はもっとフリーになる。

ギグエコノミーの特徴はネットを使って好きな時間に好きな場所で好きなだけ働けることでフリーランスの入り口としては非常に人気の高い働き方です。企業側としても経費削減に役立つため国内の割合は年々、従業員の数を減らし非正規雇用の数を増やし続けています。

法律の抜け穴

フリーランスと従業員では法の扱いが違います。従業員はすべて労働法によって守られていますがフリーランスは自営業者として扱われるため保護の対象には含まれません。従業員として働く場合、最低賃金や補償など多くの雇用契約で守られていますがフリーランスには社会的な雇用契約などがなく、依頼主とフリーランスお互いの合意さえあれば契約は成立します。働く時間、ルール、報酬などをお互いに決められる。
なのでギグワーカーは依頼主からの仕事を常に断る権利をもっており労働基準法上の労働者には該当しません。最低賃金を下回り何時間働かせようとも、または働こうとも互いの合意さえあれば問題ないのです。

ビジネスをマッチングを行うクラウドソーシングでは著しい価格破壊が多くの場所で起きており目ん玉が飛び出るほど低い単価で大量のプロジェクトが売られています。時給に換算して300円以下なんてものもザラです。誰がこんな搾取的な条件で仕事を受けるのだろうと不思議に思うかもしれませんが、スタートアップしたての人や未経験者の空き時間、失業してすぐにでも仕事が必要な人には絶好のチャンスのようにみえる。取引は需要と供給。そして力関係によって決まるため放置しておくと貧富の格差を引き起こし強者はさらに繁栄し、力なき者はさらに転落する。
プラットフォームではどの依頼主もより安く、より良いものを求めるため法外な労働者時間を提供する者が取引を獲得できる。よって無法地帯であるがゆえ不健全な相場が普通になり巨大な低価格帯の競争に閉じ込められる。抜け出せるのはごく一部で大半のギグワーカーは望むほどの生活水準には戻れません。固定給を失い、収入を失い、補償を失い、プラットフォームへの依存度は益々高くなる。

ギグワーカーはエントリーが簡単で教育制度も基本的にないため、いわゆるハズレ事業者も紛れ込む。盗作の販売や個人情報の悪用、ビジネスモラルの欠如した山のものとも海のものとも分からない相手がサービスに関わってくる。
依頼主はブラック案件を平気で要求してきます。あそこならもっと安くしてくれた。これくらいサービスしてよ。それじゃ評価下がっちゃうな~。とにもかくにも安くて良ければそれでいい。どんなに非人道的な要求だろうと相手は交換可能なつまようじ。こちら側の一方的な条件を飲めないのなら代わりのギグワーカーを探すだけ。

結局のところギグエコノミーが伝統的な産業を弱体化。そこで働く多くのギグワーカーはプラットフォームが謳っているほど多くの収入も、自由な働き方も実現できていません。フリーランスであるがゆえ法的な保護からはこぼれ落ち、不利な状況、弱い立場へ置かれやすくなる。

最後に笑うのは誰か

これが近代の楽園が生み出した副作用です。企業は残業代やマネジメント、ケガの医療費などを支払う義務がないため人件費を30%以上節約できる。さらにギグワーカーたちを労働者としてではなくパートナーや顧客として分類することで人件費は抑えながらも正社員と同じ努力を要求できます。

プラットフォームについても詳しく知っておく必要があるでしょう。ギグワーカーたちの依頼件数はすべてプラットフォームが握っています。一般的にネットやアプリの情報はアルゴリズムが管理しており、その役割は最も効率的に業務を遂行することです。頻繁にプラットフォームへ貢献し、よく働いてくれる人が優先順位の上のほうへ表示され、逆に依頼を拒否すれば下のほうへ最適化される。そんな仕組みについて本当のところどうなのかバカな振りをして聞いてみました。

=実際の調査音声(詳しくは動画をご覧ください)=

アルゴリズムについては開示していないので詳しい数字はお答えできませんが、早く配達できる方を優先して依頼をしています。

どのプラットフォームも生産性を求めるのは企業活動の一環で当然です。本当にややこしい点はアルゴリズムはブラックボックス化されており優先順位やペナルティーについては分からないようにされている。なので明言することはできませんが、もし仮に一方的な労働基準を満たさない限り仕事を与えない暗黙のシステムがあるのなら、それは実態として搾取構造を強化しており、ギグワーカーに対して従業員レベルの努力を要求しながら、一方で管理責任は放棄している。人材を使った新手のピンハネといえるのではないでしょうか。

もしもプラットフォームが失敗したらギグワーカーたち全員が痛い目にあいます。ですが反対にプラットフォームが成功したとしてもギグワーカーたちに見合ったリターンはありません。リスクを社会に押し付けてリターンは自分のものへと私物化する。それを可能にしたのがネットの新しい働き方なのです。

ギグエコノミーについては歴史が浅くまだ法的にも整備されていません。通常なら弱い立場の従業員は労働組合を結成して交渉やストライキの機会を手に入れますが、ギグワーカーたちは単独で働いているため被害状況を把握しにくく声を社会に届けずらい状況です。もしかすると2012年に日雇派遣が原則禁止になったように、これからフリーランス活用のために新たな法規制が生まれるかもしれません。実際に去年、東京都労働委員会はウーバーイーツに対してドライバーとの交渉に誠実に対応するよう命じました。

ギグエコノミーのお陰で新たな職業への挑戦もし易くなり、収入源の選択肢は広がりました。また深刻な人手不足を解消し依頼主は効率的に欲しいものが手に入る。

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