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戦国最強の家老 ―細川家を支えた重臣松井家とその至宝―:1 /永青文庫

 江戸幕府は一国一城令を敷いたが、例外的に複数の城をもつことが許された藩もあった。肥後熊本藩がそのひとつで、熊本城と八代城の「一国二城」制。八代城主と熊本藩の家老職を代々兼務したのが、松井家である。
 主君・細川家の永青文庫と同じく、松井家の松井文庫には、名門の「家の歴史」を物語る膨大な文化財がまるっと遺されている。そのなかには、縁が深かった剣聖・宮本武蔵の関連資料や、松井家初代・康之が交流した千利休、古田織部ゆかりの茶道具も含まれていて多彩だ。
 本展ではこれらにも目配せをしつつ、「家の歴史」の根幹をなす初代・康之、二代・興長の功績に主にスポットを当てた展示内容となっていた。

 「松井家」といわれても、よほどの歴史通・戦国通でなければ、すぐには反応できないだろう。展覧会としては、一般向けの端的なコピーや、一発で目を引くデザイン性が必須となる。
 今回は「戦国最強の家老」というコピーを設定。リーフレットやポスターは、からし色と黒の片身替わり、中央にはどうやら只者ではない雰囲気の老人の姿を配している。フォントも、歴史・古美術系の展示としては珍しい書体を採用。ひときわインパクトをそそるものとなっている。

 「戦国最強」とは、もとから広くいわれてきた評言ではない。
 そうなると、なにゆえに今回「戦国最強」とされるのかという理由が、がぜん気になってくるもの。
 その答えは、3つからなる展示室のうち第2室にあった。初代・康之、二代・興長の事績を示す史料が、集中的に紹介されていたのである。(つづく


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