今井麗展 /ロロ・ピアーナ銀座店
ひいきの油彩画家・今井麗(うらら)さんの展示に行ってきた。
出品作品は、5点。
これまで当ページで取り上げてきたなかでは、最小規模の展示となる。
それもそのはず、今回は個展ではなく、ファッションブランド「ロロ・ピアーナ」とのコラボレーション企画。ブランドの旗艦店の一角を間借りする形式での展示だったのだ。
松屋銀座の向かい、Appleストアの並びのガラス張りのビルまるまる一棟分すべてが、アパレルのショールームになっている。
馴れないオサレな雰囲気に緊張が走ったものだが、エレベーターになぜかあった、アルパカのような獣の巨大パネルに癒された。カワイイ。こちらをガン見する面長の顔とにらめっこをしながら、上の階へ。
エレベーターの中で、記念品の謎の紙筒をポンッ!と開けてみると、かっこいいマスキングテープが6本も出てきた。これでしばらく、マステにはこまるまい。
麗さんの作品は、4階の奥まったスペースに集められていた。
コラボというからには、服飾と絵画とが同じ空間に置かれるものと錯覚していたが、存外にギャラリーの展示に近い環境であった。中央に大作が1点、左右に2点ずつの計5点。
こちらが今回のメインとなる新作《VICUNA》。
大きい! そして、麗さんとしては珍しい作だ。
麗さんのことは、以前、2回に分けて書かせてもらったことがある。
タイトルは「ステイホームの絵描き」とした。
麗さんが主に描いてこられたのは、食卓にあるトーストや果物、自室のぬいぐるみやフィギュア、おもちゃの類、雑草の生えた庭など。そのどれもが、自宅に居ながらにして完結ができるモチーフだ。だからこその「ステイホームの絵描き」というタイトルだった。
《VICUNA》は「ステイホームの絵描き」といった作家像からは、少し離れているようにみえる。
おそらく日本国内ではないどこかの荒野で、アルパカに似た獣がこちらを向いて、ひとり佇んでいる。華奢な体つきながら、その居ずまいは凛としてたくましい。
獣のまっすぐな視線に射抜かれつつも、わたしがより魅かれたのは、底抜けにさわやかな空の青、変化に富む荒れ地の描写だった。
麗さんに風景画の印象はないけれど、できればもっと観てみたいなと思った。麗さんはどんな風景に興味をもって切り取り、どんな色や筆遣いで描きだすのだろう……《VICUNA》を前にして、そんなことを感じたのだった。
作品解説を読むと、この獣はアルパカではなく「ヴィキューナ(ビクーニャ)」で、ブランドのシンボル的な動物であることがわかった。そして、麗さんはブランドの写真集をもとに、この絵を描いたということだった。
本作も、結局のところは「ステイホームの絵」だったのだ。
《VICUNA》の脇を固める4作は、果物や台所用具、ぬいぐるみにフィギュアなど、いずれも代表的なモチーフのもの。これらの存在によって、作家像の輪郭をなぞることもできるようになっている。
小さな宝石箱のような展示であった。
※本日のカバー写真は、踊り場にあったヴィキューナの写真。麗さんが参考にしたのはこれ?
※エレベーターで出会った巨大パネルの獣も、アルパカでなくヴィキューナだった……
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