TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」 /WHAT MUSEUM
「近現代美術×ミッドセンチュリーの名作家具」の展示を観に、天王洲アイルの寺田倉庫「WHAT MUSEUM」へ行ってきた。
蒐めた人・竹内真さんは、次のようにおっしゃっている。
たいへんうらやましくもあるこの言葉を、会場では具現化。絵画や立体作品のかたわらに、モダン・デザインの巨匠たちによる名作家具を取り合わせていた。
さらに、数点の椅子に関しては、腰掛けることが可能。竹内さんの日常の一端を擬似体験できる。
たとえば、コレクションのきっかけともなった本展最初の一作・ピカソのエッチングが掛かる壁の裏面には、応接スペースのようにさりげなく、こんな一角が設けられていた。
ペリアンのスツールはどっしりとしていて、座ると背筋が自然にスッと伸び、骨盤が立つ気がした。そうしないと、ジャコメッティのペン画デッサンがよくみえないということもあったが、なんというか、安心して任せられる感触。
反対に、ジャコメッティを背にして座ると、この光景である。
1950年代、ル・コルビュジエが進めた北インド・チャンディガールの都市計画。その一環として、ピエール・ジャンヌレによってデザインされた籐張りの椅子が、ワイヤーを使って、たくさん吊り下げられている。
市内の各施設で使用する家具を、現地の素材を用い、現地の職人が量産する。土地の風土を重視した、地産地消のはしりともいえる製作手法である。職人の裁量も多分に残されており、見比べると、少しずつ違っていた。そんな「味」も、コレクターを魅了するのだろう。
竹内さんはこの椅子がよほどお気に入りらしく、書斎をイメージしたこちらのしつらえでも使用。
こういったショールーム風の展示のほかに、竹内さんが最近力を入れているという、コンテンポラリーの抽象絵画を集めた部屋も。写真は、岡﨑乾二郎の作。抽象画はどれも大画面だった。
——現役のコレクター、進行中のコレクションによる本展は、コレクターの嗜好や傾向のみならず、作品に対する向き合い方・接し方までも表す内容となっており、それがまたユニークで、惹かれるところが多かった。
竹内さんのように、少しずつでも、生活空間のなかに美を取り入れていきたいものだ。
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