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1894 Visions ルドン、ロートレック展:1 /三菱一号館美術館

 「1894」とは、美術館のモデルになった三菱一号館の竣工年。ルドンもロートレックも、ちょうどこの頃のパリで活躍した。
 本展は開館10周年を記念し、岐阜県美術館との共催で両館の収蔵品から構成された展覧会だが、単なる所蔵品展にとどまらない濃密なコラボになっている。
 ルドン(岐阜県美)とロートレック(三菱一号館)は両館を代表する存在で、三菱一号館にはルドンの大作《グラン・ブーケ》もある。彼らを軸にして、同時代の印象派や日本人画家の作を展示。滞欧経験者である黒田清輝と山本芳翠(岐阜の出身)が架け橋となっている。
 「1894年」が起点となって、一直線につながる。このコンセプトの発案者は思わずユリイカと叫んだだろう。

 わたしのお目当てはルドン。2年前のルドン展で得た至福の時間を忘れられず、楽しみにしてきた。
 岐阜県美は国内では圧倒的、世界でも有数のルドン・コレクションを誇る。なぜそうなったのかはわからないが、それは静岡のロダンも宮城の洲之内コレクションも板橋の狩野派も同じで、ただしかるべきタイミングでよき縁があっただけだ。おかげでこうして地域性を超えたバラエティあるコレクションが、日本のあちこちで楽しめるのだ。今回も大人しくその恩恵に浴することとする。
 岐阜県美からはそのルドン・コレクションをまるごと借りてきたかと思いきや、そうでもない。岐阜県美では先日まで、会期が重なる形でルドンの特集展示が開催されていたともいう。
 油彩やパステルのあざやかで幻想的な作品をわたしも好むのだが、点数としては多くなく、展示全体のバランスとコンセプトを重んじた展示作のチョイスと映った。(つづく



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