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うどん屋が閉店したから3万5千円散った話

 踊るうどんが閉店した。

 いきなりこんなこと言われてなんのこっちゃわからないと思うが、踊るうどんというのは私が世界一おいしいと思っているうどん屋さんの名前だ。私と踊るうどんとの出会いは10年以上前にさかのぼる。

 愛媛県松山市に祖母が住んでおり、首都圏で暮らす私たち家族はお盆に合わせて毎年帰省していた。例年通り家族と帰省していた私に、祖母は言った。

 「そこの川の向こうにホラ、踊るうどん永木って店があるやろ。なかなかおいしいけん、あんたも行っとーみ」

 帰省してもとくにすることもなくだらだらと過ごしていたので、試しに行ってみることにした。

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 肉玉ぶっかけ750円。これが、これが超おいしかった。運命の出会い。逆Pretender。君の運命の人は僕。出会ってしまった。マイベストうどん。サンキューゴッド。勤労感謝。世界平和。

 あまりのおいしさにすっかり取り憑かれてしまい、次の日も来ていた。

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 肉玉ぶっかけ750円。超おいしい。死ぬまで全部の食事これがいい。

通った。毎年松山に行くたびに、昼のみの営業なので、滞在期間が許す限り昼食は毎日ここに通った。

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 肉玉ぶっかけ750円。何度来てもほんっと美味しい。

 滞在期間が許す限り、とは言ったが松山に来るのは年に1度、それも3泊程度なので年に2~3回しか来られない。肉玉ぶっかけは外せない。これは毎回食べたい。でもこのままでは他のうどんが食べられない。

 そうだ、1回で2つ食べよう。

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 肉玉ぶっかけ750円、しょうゆ550円。これが、これがまたシンプルでおいしい。こんなおいしいうどんを注文しなかったなんて、なんて愚かだったんだ。

 次の日は、

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肉玉ぶっかけ750円、カレーうどん650円(だった気がする)。これもおいしい。ほんとおいしい。

 他にもたくさんうどんの写真はあるのだが、ここまで見ていただいてわかったと思うが殆ど同じ写真なので割愛させていただく。

 年に一度、3日くらい連続で若い女が一人で2人前平らげて即帰る。大きな声では言えないが、祖父が亡くなったときも隙を見て喪服で行った。初めて夫を連れて行ったときは二人で5人前食べた。そんなことをしていたらついに大将から「いらっしゃい!なに『から』いきましょう?」と言われるようになった。嬉し恥ずかし初めての常連認定。いや、正直なところ恥ずかしいのほうが大きい。

 そんな10年越しで通い詰めたうどん屋さんが、2020年3月29日をもって閉店することになった。理由は大将の腰痛。身を削っておいしいうどんを打ってくれていたんだね……。

 いてもたってもいられず、松山行きの飛行機を取った。片道8000円のジェットスター。家族には高いうどん代だと笑われた。

 しかしコロナの影響で大幅にダイヤ変更され、昼過ぎに着いて翌日の午前中には帰るという、1回行けるかどうかすらわからないような便になってしまった。泣く泣くキャンセルしようとしたが今はこんな状況。問い合わせの電話やサポートは全くつながらず、夫の分と合わせて35000円無意味に散った。おのれコロナ。

 肉玉ぶっかけに直接別れを告げることもできず、35000円失い、途方に暮れていた私はあることを思い出した。冷凍うどんの宅配をやってたはず…!

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 18玉頼みました。

 大将、最後の最後に仕事を増やしてしまい本当にごめんなさい。腰の調子はいかがですか。

 この場を借りて、長い間おいしいうどんを提供してくれた大将に感謝を伝えたい。本当にありがとうございましたーーーーーー!!!何回行ってもどれを食べても全部最高においしかったーーーーー!!!!

 現在のお店から少し離れたところに新しく、踊るうどんのメニューを取り入れたお店が開店するらしいのでそれを楽しみに過ごします。

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