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広大、絶景、日本一○○…兵庫県の「道の駅」3選

行楽の秋ですね。9月の「シルバーウイーク」は終わってしまいましたが、季節外れの記録的な暑さが続いたこともあり、最近になって「休日にどこかへ足を延ばそうか」と考え始めた方もおられるのではないでしょうか。

ドライブ旅行の定番の立ち寄り先といえば、「道の駅」が浮かびます。実は今年は、1993年に全国で103の「道の駅」が初めて登録され、制度が始まって30年の節目。今やドライブの休憩場所にとどまらず、体験型施設を併設するなど個性豊かな駅も登場し、道の駅自体が観光地となっています。

国土交通省によると、5月末時点で全国にある道の駅は1204駅。都道府県別の内訳で最多は、登録数が唯一、3桁に上る北海道の127駅。次いで2位が岐阜県、3位が長野県、4位が新潟県、5位が岩手県と和歌山県。

そして、ここ兵庫県には、6番目に多い35駅があります(福島県、熊本県と同数、同順位)。今回はその35駅から、私、ぶらっくまの独断で、絶景や施設の充実度、独自路線などが売りの3駅をご紹介します。

道の駅神戸フルーツ・フラワーパークおおぞう(神戸市北区大沢町大沢)

観覧車(画面右端)がある遊園地や、地元特産品の販売・飲食施設などを備える(提供)

「道の駅」に関する各種サイトの人気ランキングで1位になることもある、こちらの駅。広大な敷地に遊園地や飲食・物販施設、バーベキュー場、猿まわしの劇場、ホテル、日帰り温泉(ホテル内)、プール(夏期)などなど、実にさまざまな施設があり、一日中いても飽きません。その名が示すように、フルーツ狩りも体験でき、季節の花々も目で楽しめます。

地元の農産物、特産品などが豊富に並ぶ
日帰り利用できるホテルの大浴場。源泉かけ流しの温泉やジェットバス、サウナなどもある(提供)
ヨーロッパの古城のようなホテル。オランダの国立美術館を模している(提供)
敷地内にある「神戸モンキーズ劇場」
冬場にはイルミネーションのイベントも催される

さながら大規模レジャー施設のようですが、こちらの道の駅、元はテーマパークだったんです。2017年に道の駅として生まれ変わりました。

物販・飲食施設「ファーム サーカス」

 神戸市北区おおぞう町上大沢に開業する道の駅「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」の内覧会が現地で開かれた。「地産地消を遊ぼう!」をコンセプトに、地元の農産物を販売し、加工食品の物販とレストランを兼ね備えた飲食施設「ファーム サーカス」を併設。近隣住民らが買い物や食事を楽しんだ。
 ホテルや遊園地などがある同パークの入場者は、1993年の開園当初は年間約130万人を数えたが、近年は約60万人に減少。集客の起爆剤として「農業への原点回帰」を掲げ、同市北区の会社「北神地域振興」が新たな道の駅を整備した。
 敷地に「ファーム サーカス」のほか、定期的に加工食品を販売する「マルシェ」やコンサートなどを催す広場を設けた。足湯もあり、観光案内係を配置し、周辺のイチゴ農園などもPRする。

2017年3月27日付朝刊記事より抜粋

道の駅あわじ(兵庫県淡路市岩屋)

壮大な明石海峡大橋を淡路島側から間近に眺められる

こちらの道の駅は、淡路島と神戸市を結ぶ明石海峡大橋の真下に位置し、橋桁を見上げることができる絶景スポットです。夜は橋のライトアップが楽しめます。地元グルメを手軽に味わえるのも魅力で、毎年4~11月には、淡路島ならではのこんなメニューもあります。

生シラスの丼

 つるつるとした食感が特徴の淡路島名物、生シラスを各所で一斉に提供する「淡路島の生しらすプロジェクト」が今年も4月から始まった。飲食店や宿泊施設計68店が参加し、工夫を凝らしたメニューを考案。主催団体は「新型コロナウイルス禍前の2019年の販売数量を超えたい」と意気込む。提供は11月30日まで。
 淡路島岩屋漁業協同組合と、北淡路地域にある観光施設などでつくる北淡路ブランド推進協議会が11年から続けている。
 同プロジェクトの生シラスは、岩屋港で水揚げしたものに限る。まず船上で氷を使って冷却し、着岸後に漁港近くの加工業者で瞬間冷凍して鮮度を保つ。
 ご飯に生シラスを盛った丼が基本。店によって、タイやサワラ、山芋をトッピングするなど多彩な形で味わえる。ペペロンチーノの上に生シラスをのせた変わり種もある。
 また、自宅でも味わってもらえるよう、21年に始めた土産用「淡路島の生しらす沖漬け」を今年も販売。島内16店(4月18日時点)に並ぶ予定。

2023年4月26日付朝刊記事より抜粋

道の駅あわじには複数の飲食店舗があり、海鮮丼や穴子丼、淡路牛バーガーや地ビールなどと並んで、今の時期は「生しらす丼」も人気のようです。

道の駅「あゆの里矢田川」(兵庫県香美町村岡区長瀬)

 すぐそばを矢田川が流れるロケーション。 キャンピングカーで車中泊が楽しめる「RVパーク」も備えている(香住青年会議所提供)

三つ目は、ユニークな試みで注目を集めた駅です。といっても、独自の施設やイベントとか、そういうこと以上に、とにかく「駅長さん」が…。一言で説明するのが難しいので、2018年の過去記事を読んでいただければ。

経営不振にあえぐ道の駅の再生に奮闘する阿瀬大典さん

 2017年12月に新駅長の阿瀬大典さん(40)を迎え、慢性的な経営難からの脱却を目指す、兵庫県香美町村岡区長瀬の道の駅「あゆの里矢田川」が、インターネット上で存在感を増している。会員制交流サイト(SNS)などでは「まじでつぶれる5日前」などの、〝開き直り〟とも取れるメッセージを精力的に発信。崖っぷちの経営状況を自虐的に開陳する一方、現状を打破すべく、さまざまな企画を矢継ぎ早に打ち出している。
 同駅は1999年に完成。運営は地元住民らでつくる「おおなる会」が担い、開業時には運営資金として、住民有志160人が800万円を出し合ったという。
 しかし高規格道路の開通などで、同駅前を通る「県道香住村岡線」の交通量は減少。売り上げにも如実に響き、近年は前任の20代の若手駅長が経費を切り詰めて経営再建に奔走してきたが、ついに刀折れ矢尽きて退職してしまった。
 阿瀬さんが駅長に就任した17年12月時点で、同駅の資金残高は15万円。年末年始で20万円を売り上げたが、必要経費を差し引くと、何と1万円しか残らなかったという。
 このままでは地域活性化の拠点がつぶれる―。もともと情報発信が得意な阿瀬さんは、現状を知ってもらうことで同駅のファンを増やそうと、起死回生のネット戦略を思い立った。
 ほとんど開店休業状態だったSNSは小まめに更新し、同駅の存在感をアピール。ホームページでも「まじでつぶれる5日前」と身もふたもない宣言を掲げ、「ばくたん、変人駅長」などと、親しみやすい雰囲気を前面に打ち出した。
 また、そりを無料で貸し出して敷地内で雪遊びができるようにしたり、新商品の記者発表を設定したりと、同駅の魅力づくりにも尽力。今後も月1回程度の頻度で、新企画を実施していきたいという。
 「ここは日本一ダメな道の駅。何年も前から〝お荷物〟なんです」。大平会会長の男性(61)は、そう言い切る。阿瀬さんの奮闘に「新しい発想と実行力を頼もしく思っている。とにかくやってみい、そんな気持ちです」と話す。「ここが再びにぎわいのある場所となるよう、経営の立て直しに努めたい」とどこまでも前向きな阿瀬さん。「生死をかけて頑張るぞ!」

2018年1月27日付朝刊記事より抜粋
インターネット上で反響を呼んだ「まじでつぶれる5日前」のメッセージ

ユニークの意味、お分かりいただけたでしょうか。「日本一ダメな道の駅」という不名誉な称号がネットやテレビですっかり広まってしまった同駅ですが、阿瀬駅長にはその後もたびたび神戸新聞にご登場いただいています。

「すみません、赤字でした!」と決算の結果を公表する阿瀬大典さん

 「まじでつぶれる5日前」。そんな深刻な経営状況をあけすけに発信し、神戸新聞の紙面をにぎわせてきた道の駅「あゆの里矢田川」が、2017年度の決算をまとめた。17年12月に駅長に就任した阿瀬大典さん(40)の奮闘もあって、無事、危機的状況を脱したことが数字でも裏付けられ…、え、80万円の赤字ですか?
 阿瀬さんが駅長を引き継いだ時点で、銀行口座に残る同道の駅の運転資金は15万円だった。1月に経費の支払いを済ませると、残金はわずか1万円。ま、まじでつぶれる―。ネットを主戦場とする阿瀬さんの戦いはここから始まった。
 駐車場の雪で山を築いた「矢田川スノーパーク」、某有名キャラに酷似していることで話題を呼んだ萌えキャラ「矢田川あゆか」の考案、「RVパーク」の開業など、なりふり構わず独自の企画を打ち出して存在感を発揮。「日本一ダメな道の駅」として、人気バラエティー「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系列)にも取り上げられた。
 「前年に比べると、売り上げは確かに増えましたよ」とうなずく阿瀬さん。特に決算最終月の3月は、前年の2倍近い売り上げを記録するなど、その勢いは確かに出ていたはず。「でも焼け石に水でしたね」
 とはいえ今年4月以降の来客数は、毎月、前年の2~3倍を維持。阿瀬さんも「もう5日後につぶれるということはない」と断言する。決算こそ赤字だったが、口座残高にも多少の余裕が生まれているという。
 駅長就任からもうすぐ1年。阿瀬さんは「あまり表沙汰にはなっていないけど、これまで自転車操業でいい加減にやってきたことが裏目に出始めた」と聞いてもいないことを告白し、「今は反省の時期。2年目は丁寧に仕事をしていく所存です」と殊勝に語る。

2018年9月26日付朝刊記事より抜粋

上の記事から約5年。阿瀬駅長の奮闘は続いています。

「矢田川サブカルフェスタ」をPRする矢田川あゆかちゃんと阿瀬大典駅長=2022年9月、道の駅あゆの里矢田川

阿瀬駅長のキャラクターが注目されがちですが、連日のように投稿されている同駅のX(旧ツイッター)を見ると、天然の鮎の塩焼きが実に美味しそう。川のせせらぎ、満天の星空など、豊かな自然も魅力です。ネットでは香美町が運用するライブカメラの映像も見られますよ。

〈ぶらっくま〉
1999年入社、神戸出身。先日、久しぶりに会った会社の同期デスクとの会話で、キャンピングカーの話題になりました。彼いわく、「老後はキャンピングカーで旅するのが夢やねん」。気の向くままに車を走らせ、各地のご当地グルメを味わい、星空の下で眠る。「ええなあ」と2人で天を仰ぎ、会話は途絶えました。夢のまた夢ですね。