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下町の面白さってよ〜わからん。・・・けど、なんかええ。【前田さんのWSレポ①】

長田区役所まちづくり課のヒラノです。
これまで長田区が開催するワークショップのレポートをC・Nさんに書いてもらっていましたが、まちの人目線でもレポートをお送りしたいと思います。
書き手は、前田彰さん。

前田さんと私は、数年前にゲストハウス萬家で出会いました。
このゲストハウスの夜勤スタッフをしていた前田さんは、顔にドクロペイントを施した私に気さくに話しかけてくれました。(ちょうどメキシコ風のハロウィンパーティーをやっていた日でした)
そんな奇妙な状況で夜中におしゃべりしていたら、同い年だということも分かり、それからなんとなく前田さんの活動を気にしていました。

前田さんは、東京や神戸の企業での経験を経て、現在、長田区にある多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」で働いています。

前田さんなら長田の良さも難しさも、正直に、丁寧に発信してくれそう。様々な場所に身を置いた前田さんだからこそ、生き方を模索する私たちの世代に響く言葉が発信できるのではないか。
そんな思いから、ワークショップに並走してもらうライターとして真っ先に声をかけさせてもらいました。

いろいろ書きましたが、結局のところ、前田さんが書く文章が好きなんです。全4回、どうぞお楽しみください。

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難しい。言葉にするって本当に難しい。

ふとした出来事の中から感性に触れたもの。ようわからんけど心にジーンと染み込んできたもの。それが奥まで届き、なんだか世の中に放出したくなるもの。でも言葉にうまく落とし込めなくて、口にするのは「めっちゃ良いっすね」程度の一言。

特にだ。「なんかええ」と思っているものを言葉にするって難しい。

例えば、バスケットボールで枠に当たらずゴールに直接入った時に感じる「シュコッ」という音と感覚。バスケ部でもないのに、まぐれで決まるナイスシュートに快感を覚える。日向ぼっこをしながら猫がのんびりしている様子。気まぐれでフラフラと過ごす様子に羨ましさすら感じる。心地良さなのかよくわからないけど、どれも理由なんてない。でもとりあえず「なんかええ」といつも思う。

【良いものは言葉にできない】と聞いたことがある。漫画だっけ?アニメだっけ?哲学書だっけ?覚えてはいないけど、まぁそういうことなのだろう。

・・・という話を保険にかけて、これから「なんかええ」と思っている街の記事を書いていきます。どうぞよろしく。

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「長田区おもろいで」っていろんな人にいうんですけど、「その話増田さんからしか聞いたことない」っていろんな人に言われまして。

そう話すのは区長の増田さん。
「長田区生き残り戦略ワークショップ」開催の言い出しっぺ。

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この夏は長田区発祥のビーチサンダルの広報活動に邁進。ビーサン姿で街を歩く様子をたくさんの人が目撃していた。そういえば駅前の吉野家でお昼ご飯食べていた。あまりに溶け込んでいたので二度見した。区長と聞くと背筋を伸ばさないといけないように感じるが、そんなことを忘れてしまう。

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長田の街が好きすぎて移住しちゃった区長。・・・区長って呼んじゃうけど、増田さんって呼びたくなる素朴な人だ。

新しい人が入ってきている。それってなんでかな?って。きっとこの街に魅力があるんやなっていうのはわかるんですけど、その魅力ってようよう考えたらなんなんやろ?で、そこんとこをキチッと認識をしたいなと。

下町の「おもろさ」ってなんなん?

便利さで言えば都心の方が快適で、歩けば欲しいものが大体揃う。オシャレなカフェではオシャレなBGMが流れる。

窓際で広げるパソコンには西日が当たる。チャットツールには連絡がバンバン届く。「あの話どこのチャンネルやったっけ??」。通知を知らせる赤い文字にビビりながら連絡を捌く。

交通の便もなかなか便利で、山も海も自然がある。昨今の情勢で定着したリモートワークもやりやすい。東京や大阪などいろいろな場所で暮らしや仕事をしてきたけど、地元神戸が「ちょうど良い」なと思っている。

特に東京などの都心では刺激がたくさんあってオモシロイ。最新のAIやVRを駆使した広告が街に溢れ、流行の情報もイチ早く目にできる。

周りには同世代だけでも眩しい活動をしている人がいる。自ら情報を取りに行って、取りに行かなくても自然と届いて、刺激的なオモシロさを日々感じることができた。だから背筋は常にシャキッとさせていたような気がする。

見えない襟はいつもピシッと立っていて、真っ白のシャツもアイロンで綺麗に皺を伸ばして着ていたような感覚だった。

でもこの街でのオモシロイはちょっと違う。

「コンビニ行きたいからついて来て」と大人を逆ナンしてくる小学生。突然「バナナあげるわ」と渡してくれる果物屋のおばちゃん。「今日はご馳走やな〜。ワシもよばれよか〜!」スーパーでお肉を買っただけでヨイショしてくれるオッチャン。お股からトイレットペーパーを引きずって歩いてるオバアチャン。

「ほんまに病気とか年金の話するんやな」と思わされる昼下がりの純喫茶。明日の天気、週末の競馬でかけるべき本命馬、昨日阪神勝ったか負けたかはネットを開かなくてもわかる。

アレクサもSiriも街の中にいる。そんな街でスクスク育つ子供の未来が気になる。市場の惣菜屋が長期休暇に入れば「大丈夫かな?」と気になる。

便利さでいえば都心には叶わない。

でも「立地の良さ」や「物理的環境」では測れないものが、この街の良さなのかもしれない。

朝のゴミ出しに間に合わなかった時、「ちょっと向こう側に行ったらまだ間に合うで」という一言とか。仕事なのか遊びなのかようわかんらんうちに働いてて「ありがとう」とか言われたり。

そんな日常の中に生まれるちょっとしたこと。何気ない「なんかええ」なと感じることの積み重ねなんだと思う。


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そんな下町で、新しい暮らしがはじまった。
築100年。長屋や古民家が多く立ち並ぶこの街の、ちょっと小道を歩いたその場所で。

時を同じくして長田区に関わる有志(区役所、合同庁舎)のメンバーによるワークショップがはじまった。そこに縁あって参加させてもらうことになった。

所属の部署を超えて集まったメンバー。案の定最初はガッチガチの空気だったけど、徐々に解けていく姿にホッとした。初めて知ったけど、合同庁舎で働くメンバーの中に「007」ってチームがあるらしい。「007」、いい響きだ。

昨今の情勢が落ち着けば新長田アートマフィアへの潜伏取材をお願いしようかと思う。


「なんかええ」理由を探りたい。でもその中にある共通する部分、この街だからこその部分、自分の持っている大切な価値観を知ってみたい。

そして広報、PR(パブリック・リレーション)を行うことで、この街に関わってくれる人と出会ってみたいなと思います。

・・・でもわかりすぎても面白くないよね。

意味を求めて、意味を見出しすぎると疲れる。

「いいものはいい」でええやん。

だって、【良いものは言葉にできない】もんやから。

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最後に増田区長の挨拶を記載します。
これはワークショップの初めに語られた言葉で、これはぜひ載せたいな〜と思いほぼほぼそのまま載せています。

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増田匡(ただす)と申します。今日は色々な部署からお越しいただいていて、場所もお借りしましてありがとうございます。この取り組みは、いろんな想いがあってやりたいと思ってました。長田区って実はいろんな新しいことが起きているんですよね。外から新しい人もきている。でもその動きがなかなか知られていない。色々な人に「長田区おもろいで、アーティストやクリエイター、若い人も増えてるし」っていうんですけど、「その話増田さんからしか聞いたことない」っていろんな人に言われて、これPRならへんなあっていうのがまずひとつありましてね。あともうひとつが、新しい人が入ってきている。それってなんでかな?って。きっとこの街に魅力があるんやろなっていうのはわかるんですけど、その魅力ってようよう考えたらなんなんやろ?で、そこんとこをキチッと認識をしたいなと、みんなでそういう認識を持ちたいなと思いました。そんな認識がなかったということも課題意識です。街の魅力を深く考える必要がある、そしてその魅力を色々な人に伝えたい。その二つが今回の取り組みへの私の思い、それで今回このような機会を設けさせていただきました。こういうことをやりながら、一番の思いは下町の文化って、、、一般的に下町っていうのは濃い人間関係があったりとか、いろんな魅力があるんですけども、実はその魅力って脆い。残す努力をしないと残っていかない。ある昔ながらの市場が、今行くと周りにはマンションしか立ってない中で少しだけお店がある。それを見ると下町の魅力って脆いんだなと、下町の文化、この街をそんな風にさせたくないなという気持ちがあって。住んでいる人が下町の魅力や文化、人間関係を守り育てていく環境づくりが必要かなというのが一番大きい。そのためにまずは我々が魅力に気付いて発信していって、住民の方にも同じ気持ちをもってもらおう。そんなことを個人的に思っていまして、街の人に思いをぶつけていった結果このような機会ができました。それと、役所ってなかなか横のつながりが生まれる機会がないので、こういう機会に区役所と合同庁舎のメンバー、色々な部署との横のつながりが生まれれば嬉しいなと思っています。みなさんよろしくお願いします。


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