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シン・長田を彩るプレイヤー~命をつなぐため奔走する熱き職員~【前編】

今月は「新長田鉄人前献血ルーム」の所長、毛藤もと子さんの記事をお届けします。
※2021年9月にKOBE007が取材をした記事のリメイクです。

新長田に来られて以来、命をつなぐため日々精力的に奔走されている毛藤さん。献血への熱い想いや新長田のまちについて語っていただきました。

前編では献血ルームの現状と取り組み、さらには活動を通して毛藤さんが感じる新長田の特徴についてフォーカスします。お楽しみください!

―――「県内ワースト」―――

-記者-
本日はよろしくお願いします!
まずは、新長田鉄人前献血ルームの様子についてお聞かせください。

-毛藤さん-
実は当施設は、県内で一番ご協力者が少ないんです。
今年(取材当時2021年)3月に神戸新聞が当施設のことを取り上げてくださったのですが、その見出しに「県内ワースト」という言葉を使われてしまいました(笑)
記者からは謝られましたが、関西人としては“おいしい”ワードだと思ってます(笑)

―記者―
伸びしろがありますよね(笑)

―毛藤さんー
はい(笑)
ご協力者が少ない理由としては、主に施設が地下にあることと、この地域の方の年齢層が高いことがあります。
当施設ができてから10年以上経ったのに、地下に献血ルームがあることを知らなかったという方もまだまだ多いんですよ。
また、60歳から64歳の間に献血をしていただいた方は69歳まで献血することができるのですが、そのことを知らない方も多くて・・・。

-記者-
それは知らなかったです。

-毛藤さん-
そこで、69歳まで献血をしていただけるように、主にシニア世代に向けて、「昭和なあなたにお願いです」というキャッチコピーでどんどんアピールをしています!

-記者-
凄く印象的なキャッチコピーですね!

-毛藤さん-
このキャッチコピーを掲げてから、どんどんご協力者が増えているんです!
5年前は平日だと1日当たりわずか8名、土日でも30名ほどの方にしかご協力いただけない日もありましたが、今では平日で約30名、土日は約50名の方に来ていただけるような日もあります。

-記者-
すごい!明らかに増えましたね!

―――「次の世代へ」―――

-毛藤さん-
そうですね。
ただ、全国的には若い方達に献血を知ってもらおうという動きが主流になっています。
なぜ若い方向けに献血啓発をするのかというと、献血のご協力者がどんどん減っているからなんです。中でも一番怖いのは30代の方が減っていることなんですよ。
というのも、一度も献血をしたことがない親御さんがお子さんに献血を伝えるのはやっぱり難しいんですよね。

最近は献血バスが学校に行くことも減っているので、初めての献血が献血ルームという方も多いんです。
でも、献血ルームにわざわざ行くとなると、初めての方はよっぽどのきっかけがないとなかなかハードルが高いんですよね。
そうするとどんどん次世代に伝える人達がいなくなってしまうんです。

-記者-
それは大きな問題ですね。

-毛藤さん-
だから、うちの施設ではキッズルームを作ってます。子どもさんがここに来たらジュースも飲めるし、遊べると思ってくださればそれだけでいいんですよ!
それで大きくなった時に、「そういえばあそこでタダでジュース飲んで、遊べて楽しかったな~」とかそういうことを思い出してまた献血をしてくれるんじゃないかなと思うんです。
それがうちでやっている若年層への工夫ですね。
みなさんのいらっしゃる合同庁舎にも、若いパパ、ママがおられると思いますけど、お子さんを連れて一緒に来ていただけると凄く良い効果になりますね。
お家に帰ってからも、「お父さん何してたの?」ってお子さんに聞かれたら「あれは献血でね・・・」と献血のお話もしていただけますし!

-記者-
それこそ、ここで献血の参加記念品としてお渡しされているパンとかラスクを持って帰ったら、「これどこでもらったん?」と献血の話をするきっかけにもなりますよね!

-毛藤さん-
お子さんといえば、小学校に出向いて献血のお話をすることがあるんですが、その時にはまずお父さんお母さんに「注射が好きな人は手を挙げてください」って聞くんですよ。
そしたら「しーん」とするじゃないですか。

そこで、「どうして大人も注射が嫌いなのに献血してくれるのでしょうか?」と聞くんですよ。
そしてその後に、「それはね、血液が人工的に作れないから、お父さんお母さんたちは患者さん達のために本当は注射が嫌いなのに献血してくれてるんだよ」と説明すると、子ども達は、「お父さんすごいと思った」とか感想文に書いてくれるんですよね。
子どもたちに献血を知ってもらうために、そういう地道な努力を積み重ねています。

-記者-
血液は人工的に作ることができないこと、献血によって人の命を助けられることを知れば、子ども達にもなぜ献血が必要なのかを理解してもらえるんですね!

-毛藤さん-
そうですね。
輸血用血液を得る手段は献血しかないんです。
ポスターにも「初めての人大歓迎」って書いてますが、そういう方にこそ来ていただきたいですね!

―――「地域の特徴」―――

-記者-
ではここで話題を変えますが、新長田で活動されていて地域の特徴など何か感じることはありますか?

-毛藤さん-
やはりノリのよさ、あたたかさですね(笑)
「献血のご協力者数が県内施設でワーストって、新聞載っちゃってん!」って言ったときに、ゲラゲラ笑って、「それやったら来たろか」って言ってくれる方-
私達が寒い中や暑い中で呼びかけしてたら、そっと飴を握らしてくれるおばあちゃん-
「こんなとこおったら寒いから中に入り」って言ってくれるおじさん-
こういった方たちがめちゃくちゃ多いんですよ!

-記者-
おもしろくて、優しい方ばかりで、お話を聞いているだけでもほっこりします(笑)

-毛藤さん-
このまちには、温かく見守ってくださる方々がたくさんいらっしゃいます。
やっぱりまちの方々に認めてもらって、「あの子ら頑張っとうな~」って思ってくれるだけで嬉しいですね!
そういう方々に触れると、私達も頑張ろうって思えるんです!少し熱く語りすぎたかも(笑)

-記者-
いえいえ、毛藤さんの熱い思いが伝わってきました!

~編集後記~
いかがだったでしょうか?“県内ワースト”とショッキングな見出しもありましたが、その中でも前向きに奮闘する現状、さらには新長田という地域ゆえのポジティブな一面が垣間見えたのではないかと思います。
後編では知っているようであまり知らない献血のこと、さらにはなぜ毛藤さんが献血に携わるのかに熱く迫ります。お見逃しなく!
(編集:むかぼー)

(後編)