デッサンって何のためにやるんだろう、写真とデッサンについて

大学のとき学んだデッサンが、今仕事で写真撮影やレタッチにそのまま生きている。デザイナーにどうしてもなりたくて、仕方なく大学受験のためにやったデッサンだったが、今写真の仕事で役に立っているから、皮肉だし不思議な話だ。

当時は確かに、毎日夜に画塾が終わったあと、1時間に一本しかない電車を暗い駅で待つような生活だった。(少し歩くと本屋があって、そこで時間を潰せたのがまだ幸いだった)

だから大学に入ったあと、チラシなどを作るグラフィックデザインの勉強にも、製品デザインの勉強にも、デッサンが生きてくる実感があまりないのが余計に強く感じられた。

でも今、写真の仕事にデッサンがすごく役立っている。はっきりわかる。もともとトマトがあるだけの普通の写真に、水滴を散らすレタッチの時、水滴の陰に、どのくらい暗さをつければいいのか、分かる。それは、昔デッサンでガラスのコップを描いたことがあるから、何度も何度も鉛筆で描いたことがあるからだ。透明なものの陰がはっきり暗くつくのが、感覚で分かっているからだ。

写真は、デッサンよりもラクだと思う。写真を否定している訳ではない。デッサンは、全て自分の意思で鉛筆を動かさないと絵が完成しない。レタッチはそうじゃない。だから、レタッチの方が速く出来るところでラクというだけで、どちらも大変で面白い。

ただ、デッサンと写真を比べるのは少し変かなとも思う。比べるなら、写実絵画と写真を比べるべきなのかもしれない。写実絵画は写実絵画で、すごい世界だ。千葉のホキ美術館に行ったことがあるが、肌の透明感といい、写真では絶対に表現できない質感がある。油絵の、絵具を何層にも重ねる技法が為せる技なのだと思う。作者の、人物に対する深い観察もあるのがよく分かる。私は普通の絵だと人物画より風景画が好きだが、写実絵画では人物画の方がいい。画集で見るより、実際に見るのが何倍もいい。

(一応、写真より写実絵画の方が素晴らしいっていう話ではないです)


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