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ドラマ『ふたりのウルトラマン』視聴レビュー

NHK BS4Kにて3/26(土)、『ふたりのウルトラマン』という単発ドラマが放送されました。

(以下、ドラマの内容に触れています。視聴前の皆様はご注意ください)

ウルトラマンを生み出した沖縄出身のふたりの脚本家・金城哲夫さん上原正三さんにスポットを当てたドラマです。素晴らしい内容でした。

ドラマは、沖縄から上京した若き脚本家・上原正三さん(佐久本宝)の目を通して、円谷プロで『ウルトラQ』以降、企画・脚本・文芸を担う天才・金城哲夫さん(満島真之介)の姿を描いています。

円谷英二監督、飯島敏宏監督、実相寺昭雄監督、中野稔さんなど、当時の円谷プロのスタッフも実名で物語に登場します。

さらに、高画質で『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『マイティジャック』などの本編の映像が使用されています。

ウルトラマン創世記の円谷プロを描いたドラマとしては、過去に『ウルトラマンをつくった男たち』『私が愛したウルトラセブン』といったドラマがありました。

これらのドラマとの決定的な違いは……
・『ふたりのウルトラマン』は、物語全体が上原さんの視点(語り)で貫かれている点。
・そして、沖縄帰還後の金城さんの死を描いている点。
・さらに、金城さん死後の上原さんの視点も丁寧に入っている点です。

もう1つ重要なことがあります。
沖縄出身である金城さんと上原さんを、実際に沖縄出身の2人の俳優が演じている点です。

満島真之介さん(金城哲夫役)と佐久本宝さん(上原正三役)は、いずれも沖縄県出身。
2人の会話には、沖縄の言葉が多用されており、日本語字幕が入ります。

沖縄県出身(ウチナーンチュ)としてのアイデンティティに誇りを持っていたおふたりの脚本家を、沖縄出身のおふたりが演じる。
このキャスティングの徹底ぶりが素晴らしいですし、彼らの話す言葉が、作品にリアリティを与えています。

満島真之介さんは、陽気で繊細な金城哲夫さんを好演していました。
もう10年以上前、まだ彼が俳優デビューする前、一度だけ彼にお会いしたことがあります。
『ウルトラマンマックス』放送後、お姉さんの満島ひかりさん(『ウルトラマンマックス』にエリー役で出演)と、監督の梶研吾さんも一緒でした。
当時の彼はまだ実績が何もなく、「満島ひかりの弟」でしかなかったのですが、あっという間に素晴らしい俳優になりましたね。

エンドクレジットで初めてスタッフを知りました。
ドラマの作・演出は、中江裕司さん。
スタッフ情報が公式に発表されていないので未確認ですが、同姓同名でなければ、映画『ナビィの恋』中江裕司監督でしょう。

『ナビィの恋』は沖縄が舞台の楽しい作品でした。
今回のドラマも、沖縄の心と金城さんの想いに寄り添った内容になっていたと感じます。

欲を言うと、70分尺は短く感じ、ダイジェスト的な作品となっているところ。
もっと長い尺で観たかったです。連ドラにしても良かったでしょう。
BSプレミアムや地上波での再放送が待たれます。

「俺は1000本以上の脚本を書いたけど、いまだにお前の生み出したウルトラマンを越えるヒーローを生み出すことはできない」
というラストの上原正三さんの語りが、胸に迫りました。

上原さんも他界され、おふたりとも光の国へ旅立たれました。

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