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自分の価値は他人が決める

語弊があるかもしれませんが、今日創業関連のセミナーにも登壇するので、思っていることを書きます。

昨日、長岡京でのハンドメイド系セミナーのことを書きながら、ある印象深い受講生のことを思い出しました。

自分だと自分の価値がわからない

そのセミナーは、最後、選ばれた5名ほどが地元でやっているイベントで販売できる権利があることが「売り」でした。

実際、上記の文中にも書いたように、きちんと「売れる」ほどのモノ(在庫量も含む)を持っている人はわずかで、選考というよりは、ほぼ消去法で、この人たちだよね、と選ばれました。5人のうち4名はほぼ副業、セミプロ。

たった一人、私がどうしても推したい人がいました。Aさんとします。

Aさんは主婦で、幼稚園の娘のためにフェルトでマスコットを作っているとのこと。
私が初日、話を聞いた時に感じた感想はこうでした。

「フェルトのマスコットかあ。微妙だなあ」

正直、ハンドメイド系でも置物とかマスコットなど、実用性がないものは売れにくい傾向にあります。可愛くて、使える(お皿、財布、ポーチ)ものならいいのですが。私も、Aさんのことは“ありきたりな人”という認識で初日を終えました。

次にディスプレイ授業で作品を持ってきてもらい、Aさんの作品を見て驚愕しました。それは「主婦のハンドメイド」の域を超えて、繊細な「作品」。

マトリョーシカがモチーフとしてすき、という彼女。細かくビーズがあしらわれていたり、目や表情は刺繍。全体も全部手縫いです。

「すごいじゃないですか、これ。売れますよ」
「はい・・・実は幼稚園のバザーでは売ったことがあって」
「そうなんですね!いくらで売ってるんですか」
「ご・・・50円・・・」
「は?」
「た、高いもので、300円とか」
「はあ?」
「高すぎますかね」
「安すぎるやろおおおおおおお」

私は吠えました。

Aさんの商品の価値はいくらなのか?

そしてイベントの販売枠にAさんを入れよう、とセミナー主催の商工会の方にお伝えしました。

本人は「私でいいんですか?!他にもふさわしい人が」とごにょごにょ言っていましたが、イベント販売に参加してもらうことにしました。もちろん商工会の方も絶賛でしたので、問題ありません。

そして、出品商品の選定について、個人面談の日。

いくつか、作品を持ってこられました。

「値段、付けられました?」

「はあ、一応」

前回、安すぎる、と私が怒った(?)ので、彼女が作品を並べながら、値段を言っていきます。

「これが、300円で、これが1000円で」

前回より高くなっていますが、全然だめです。

「えっと。売れなかったら私が買いますから(→ほんとはだめ)、もっと上げましょう」

私は商品をじっくり見て、言いました。

「まず300円のキーホルダーですが、1000円ですね。1000円にしてください」

「え、ムリです。売れるわけないです」

「このペンケース、1000円って言ってますが、5000円にしましょう」

「何言ってるんですか?!」

今度はAさんが激怒する番でした。

でも私は売れる確信がありました。
そのイベントは地元でも有名なハンドメイドのイベントで、主催されている方が、関西では知らない人がいないくらいの、フラワーアレンジの名手。
そのイベントは通常、1日で8万円売上無いと、次回のイベント参加は不可、という厳しいノルマも課せられており、出品者も来られる方も、目が肥えた人で、お金も沢山持ってきている方が定着しているのです。

そこで数百円で売るなんて、もったいないし、逆に価値を感じてもらえず、売れないかも知れない。

「売れない、と思ったら昼にはAさんの思う値段に下げましょう。タイムセールはアリです」

わたしはそう言って説得しました。

「わかりました・・・」

Aさんは絶対納得していない、という状態で帰宅。

私だって伊達に雑貨・小売業界に長くいません。Aさんの商品はこの値付けでもぜったいいける、という確信がありました。

Aさんの商品が売れた日

そして当日。私は他の仕事の都合で、セッティング+開始1時間しかいれないというリミット付きでディスプレイなどをアドバイスしていきます。

Aさんは幼稚園のバザー以外の出店が初めてなので、おずおずと商品を並べていきます。きちんと新作もつくり、低単価のものはボリュームを出しながら。

そして開始5分前。私たちは、並べ終わったあと、受講生とディスプレイのチェックをしていました。

他の出店者も、今回はどんな人がきているのかな、とか、常にイベントを回っているお客様は早々に集まって、下見をしています。

そして、ある女性が立ち止まりました。

「わあ、このペンケースかわいい!」

Aさんの作った、フェルトの猫のペンケースです。

「いくら?」

軽いノリでお客様が聞きます。その場に緊張が走りました。

受講生たちも、私がAさんの値付けに駄目出しをして、めちゃくちゃ高くした、という話を知っていたからです。

「ご・・・せん、円です」

多分Aさんは

“何いってんだコイツって思われる”><

と思っていたことでしょう。でも私が横でガン見していたので、勇気を出して、そう言いました(多分。笑)

「あ、そうなの!じゃあ始まったら買いに来るから置いといて~」

どうやら出店者さんだったようで、そう言い残すと颯爽と去っていきました。

「え・・・嘘・・・」

呆然とするAさん。他の4名と私、商工会の担当者は狂喜乱舞です!

「やったー!」「ほらー!売れるやんー!」「すごい!一番ですね!」

「い、いや、でもそう言って、来られないかもしれないですし」

Aさんは半信半疑。たしかに高いと思われて、断り文句の可能性もあります。

しかし、お客様は本当に開始早々来てくれました。

震える手で商品を袋に入れ、お金を受けとるAさん。

彼女の夢が一歩、進んだ瞬間でした。

私はその後、受講生の商品が数点売れていくのを見届け、会場を離れました。そしてあとから、ほとんど売れてしまったことを報告を受けました。それもほんとうに値付けた通りで。

自分の価値は他人が決める、とは

人格などの価値は自分で決めればそれでいいです。他人にとやかく言われる筋合いはありません。

ただ、起業して他人にお金を出してもらい、事業をする上で大切なのは、

その価値は他人が決める

ということです。

お金を出しても良い、と思ったら売れるし、そうでなければ売れない。

シンプルにそれだけ。

いっとき、キラキラ起業女子がホテルのラウンジでお茶会をしながら、代わる代わるお互いを紹介しつつ、月収*百万円、とか、私のコンサルティングは1回100万円です、とか言っていた時期がありましたが、めっきり廃れましたよね。一部の(生き残っている)カリスマ的な女性以外は、1時間100万円の価値を見出してもらえなかっただけのことです。

私は、ディスプレイでも商品の仕入れでも

「売れたら正解」

と言っています。

値付けに関しては、ハンドメイド商品でも、私のような言い値で出来るコンサルでも、恐らくお客様が「適正」と感じる部分があると思います。

仕入れ品だとメーカー小売希望価格などがあるので、難しいかもしれませんが、結局は

「他人がお金を出してもほしいかどうか」

なので、そういう意味で「他人が決める」と書きました。

結局、いくらでつけたらいいのよ

起業セミナーでもよく聞かれること。答えはこれです。

「ターゲットに聞く」

例えば、今からタピオカ屋になりたいと思ったとします。

廃れつつありますが、巷で500円で売られていると仮定。

タピオカ自体好きだし、280円なら毎日飲むよーという人がいるかもしれません。

もしくは、めちゃくちゃ美味しいレシピを持っている人であれば

「この美味しさなら1500円出しても良い!!!」

という人がいるかも知れません。それは分からないので、顧客になりそうな人に味見をしてもらったり、リサーチしてみましょう。

そして自分がどちらのお客様に買ってほしいかを考えつつ、決めていきます。

上記の2択にしたら、高単価にしたくなりがちですが、相対的にお客様の「数」は減ります。定期的にリピートしてもらえるのか、なども考えながら付けないとだめ。280円ならバンバン飲むよ!という人がめちゃくちゃ多いなら、そっちで勝負したほうがいいのかもしれません。

これは例ですが、事業を続けていくなら、このバランスが大事なので、一番いいのは他人に聞く。ということ。

私自身、ラッピング専門店を始めた当初、一律500円でやっていました。

それじゃあ、安すぎる、ということをお客さまから指摘され、今では客単価2000円のラッピングサービスを販売しています。

もし値付けに迷っていたら、周りの人に聞いてみてくださいね。沢山聞いてみると、義理やおだてていってるのか、そうじゃないのかが分かってきますよ!

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▲私も購入したAさんのマスコット。もう5年くらい私のカバンについてます

小売店のブランディングから一歩踏み込んだ、理念や想いを形にするお手伝いをするコンサルティングをしています。店舗ディスプレイ、POP、ラッピング、ライティングで見せる発信のコツをお伝えしています。