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廃プラの処理が進まないワケ

国内で滞留する廃プラ、今後益々増えていくことが予想されます。
深刻な問題です。
かと言って、今まで中国に輸出していた廃プラを、そのまま全量中国以外の国に輸出するという訳にもいきません。
日本では油化装置やその他進んだプラスチックリサイクル技術を持つ企業は多くあります。
では、なぜ国内におけるリサイクルが進んでいないのでしょうか。
それは廃棄物処理法という法律の壁があるからだと考えます。

廃棄物処理法においては、逆有償、つまりリサイクルをするのに排出者が1円でも負担することになると、リサイクル処理したものがその後有効活用され、例え売れるものになったとしても、そのものは廃棄物と判断され、リサイクルを行う業者は中間処理の許可を得なければならないのです。
逆に、排出者が1円でももらえるのであれば、許可を得る必要はありません。
図にするとこのような感じでしょうか。

逆有償

有償


このことで有名なのが、いわゆる「おから裁判」での判決です。

この事件の処理業者は、おからを排出する人からお金をもらっておからをリサイクル処理を行い、処理をしたおからを飼料や肥料としてまた別の業者に販売していました。
一見すると、しっかりおからを有効活用していて何の問題もないように思えますが、これが違法と判断されたのです。
ポイントは、

・この業者は中間処理の許可を持っていない
・おからを排出する人からお金をもらっていた(これが逆有償です。)

簡単に言うとの2点です。
つまり、お金をもらっていた(逆有償)時点でおからは廃棄物(!)ということになり、廃棄物の処理を行うのであれば中間処理の許可を持っていなければいけない、ということです。
おからが資源として有効活用されるかどうかはあまり関係ない、ということになります。
それであれば、中間処理の許可を取れば良いじゃあないか?という話になるかと思いますが、これが簡単に取ることができないから問題なのです。
廃棄物処理法の規制は非常に厳しいのです。

廃プラの話に戻りますが、廃プラを有効活用する優れた技術はあるものの、現時点ではお金をもらってでないとリサイクルできません。
いくら優れた技術が存在したとしても、この「逆有償」の壁があることによって、プラスチックリサイクルを行おうとする業者がなかなか現れないのです。
例えば、

「よし、日本から廃プラを根絶するために日本中にリサイクル施設を作ろう!」

と、誠に高尚な志を持った方がいるとしましょう。
色々と調べているうちに、

・効率的なリサイクルは技術的には可能である。
・しかし、お客様からkg当たり10円頂かないと採算が取れない。
・そうなると中間処理の許可が必要になるとわかった。
・中間処理の許可を取ることは現実的には非常に困難なこともわかった。

といった具合で結局挫折してしまうのです。
日本において中間処理の許可が必要なく処理できるケースとは、自ら排出する廃プラを自らのリサイクル施設でリサイクル処理するなど、ごく限られたケースのみとなります。

一方、欧州ではこのような規制はなく、無害な廃棄物であればリサイクルを行うのに公的許可は不要であり、経済原理の中で自由な競争が行われます。
つまり、有償であろうが逆有償であろうが関係なく、無害なものであれば積極的にリサイクルを進めていける環境にあるということです。
日本の場合には、逆有償の壁があるため欧州のようなより積極的なリサイクル推進が起こりにくい状況にあるのです。
現に日本のリサイクル率(サーマルを含まない)は欧州に比べると低い傾向にあります。

多くはサーマルリサイクル(焼却して熱エネルギーを回収すること)として燃やされてしまっているのです。
なぜこのような違いが起こってしまうのでしょうか。
これについてはまた次回に書きたいと思います。

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