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「グリーン成長戦略」が策定された。思うことを徒然なるままに。

25日、「グリーン成長戦略」が策定されました。
菅総理が宣言した「2050年カーボンニュートラル」に向けてという位置付けなので、電力部門や輸送部門の脱炭素化についての具体的目標が大半を占めています。
ざっと読みましたが、全体的に新技術開発、例えば水素発電などの技術革新に重きが置かれているといった印象です。
それはそれで大いに結構なことだと思いますが、例え新技術であったとしても、あらゆる課題に対して万能な解決策などはなく、何事もトレードオフが存在することは留意しなければなりません。
例えば、再生可能エネルギー筆頭の太陽光発電について言えば、CO2削減という観点から見れば理想的なエネルギー技術ですが、そのために山を削って長きに渡り麓の人間に恩恵をもたらしてきた自然環境を根こそぎ奪ってしまうようでは話にならないのと同じです。
洋上風力発電や水素発電が与えるネガティブな影響がいか程なのか、私にはわかりませんが、言いたいことはそこではなく、一つの技術やプロダクトが全てを解決する万能薬ではないということを、エネルギー政策を考える上では留意する必要があるということです。
(偏重し過ぎては「彼方立てれば此方が立たぬ」ことに成りかねない、ということが言いたかっただけで、決して洋上風力発電や水素発電を批判している訳ではありませんので悪しからず。)

恐らく今回の戦略のメインではなかったのかも知れませんが、私が最も注目したのが本戦略の57ページからの「(13)資源循環関連産業」の部分です。

リユース・リサイクルを推進するとしつつも、リサイクルについて、

リサイクルについては、更なる再生利用拡大に向け、リサイクル性の高い高機能素材やリサイクル技術の開発・高度化、回収ルートの最適化、設備容量の拡大に加え、再生利用の市場拡大を図る。

とあるのみで、リユースに対しては一切言及がないのです!
サーキュラーエコノミーに関しては、言わずもがなです。
今年の5月に「循環経済ビジョン2020」が策定されたにも関わらずです。
こういった施策は個々に存在するというよりは、一体としてあるべきだと思います。
これに対しては激しく落胆すると共に、我々リユース業界のプレゼンスの弱さを改めて実感しました。
循環型社会形成に関する根幹的な法律である「循環型社会形成推進基本法」でも優先順位が法定化されていますが、その順番は、

①発生抑制(リデュース)
②再使用(リユース)
③再生利用(リサイクル)
④熱回収(サーマルリサイクル)
⑤適正処理

となっています。
当然ですが、リサイクルよりもリユースの方が環境負荷の軽減及び資源循環性という意味では優先順位が高いのです。
まだ使えるものにわざわざエネルギーを加えて別のものに変えるよりは、そのまま再使用した方がCO2排出の観点からもより優れた方法ということです。
また、製品のライフサイクル上で、その製品の重量の約6倍のCO2を排出すると言われていますが、その半分が実際に製品を使われている間ではなくサプライチェーンの過程で発生しています。
リユースであれば、サプライチェーン上の過程の多くを省略できるので、この点でもリユースの推進は優れた解決策と言えます。

しかし、何度も言いますがリユースについての言及は一切なかったのです。。。
(ちなみに余談ですが、環境省には「リサイクル推進室」はあっても「リユース推進室」はありません。)

世界は今、サーキュラーエコノミーに向かっています。
〈リユースの推進=サーキュラーエコノミー〉ではありませんが、そこに向けて布石を打つという点において、リユースの推進は重要な戦略的位置づけとなります。
その意味で経済効果のポテンシャルは非常に大きなものであり、成長戦略の趣旨にも合致しています。
リユースの推進にはこれといった新技術は必要ありません。
もちろん、情報技術などの組み合わせは必要ですが、ちょっとした知恵や工夫で大きく広げることも可能です。
ある課題を解決するために一番重要なことは、知恵を絞ることだと思います。
技術開発も立派な知恵ですが、それ以外の知恵や工夫も十分に考慮されるべきです。
確かに、新しい技術は人々に豊かさをもたらします。
しかしそこに偏重し過ぎては、現代のような高度に複雑化した社会においては、歪みが生まれる原因となります。
知恵を絞るとは、新しい技術が生まれることに頼り切ることではなく、私たち一人ひとりが社会のあり方を真剣に考えることだと思います。

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