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サーキュラー・エコノミーとリサイクル

先月、経済産業省と環境省が共同で設置した「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環ファイナンス研究会」の第1回会合が開かれました。
こうした動きが生まれ始めることは、非常に良い傾向だと思います。
今回の会合は非公開で行われ、今のところ議事録も公開されていませんが、使用された資料だけは公開されているので、それを見ての私なりの所感を書きたいと思います。

サーキュラー・エコノミーの本質とは?

研究会のテーマは「サーキュラー・エコノミー」と「プラスチック資源循環」の二軸となりますが、サーキュラー・エコノミーにフォーカスして意見を書きたいと思います。

まず、公開されている資料を一読する限り、テーマはサーキュラー・エコノミーではありますが、「リサイクル」の部分に重きが置かれている印象を受けました。
確かにリサイクルはサーキュラー・エコノミー実現には欠かせない重要な要素ではありますが、それだけでは実現し得ないのです。
サーキュラー・エコノミーを実現するためには、リサイクルばかりに焦点を当てるのではなく、「製品のライフサイクル管理」をより重視すべきです。
つまり、

・アップグレード利用促進、修理促進、リユース促進などを通して製品自体の長寿命化を図る
・製品の機能・利便価値のサービス化などを通し、単なる売り切りから脱却する

などの方法も深く議論されるべきです。
むしろ、こちらの方が本質であり、リサイクルはあくまで最終的な手段の一つです。
研究会において、この点も考慮されることを望みます。

個別リサイクル法の課題

こちらは研究会会合でで使われた資料です。
この資料の6ページに自動車産業の事例があり、そこに、

3R推進のもと、我が国企業は、個別リサイクル法の整備等を通して、資源効率性に優れる取組を進めてきた。こうした取組が金融市場から適切に評価されることが重要。

という記述があります。
確かに個別リサイクル法が一定の成果を果たしてきた点は認めます。
しかし、世の中の流れも急速に変化し、リサイクルに関連する技術なども相当に進歩してきた今、手放しで自画自賛するのもどうかと思います。
これら個別リサイクル法にも課題があることを認識すべきです。
冒頭の記事の中でも、

従来の日本の循環経済へのアプローチにはいくつか特徴がある。まず、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建設リサイクル法、食品リサイクル法、自動車リサイクル法、小型家電リサイクル法などの個別リサイクル法により取り組みがけん引されてきた。

一方、法律の網がかからない分野の資源循環は必ずしも進んできたとはいえない。製品の耐久性を高め、必要に応じた更新や修繕を可能にし、そのまま何回でも使えることを目指す、経済全体のグランドデザインの書き換えが希薄だった。

とあります。
やはり、課題はあるのです。

以前、noteにこのような記事を書きました。

この中で、日本と欧州の違いに触れて以下のように書きました。

日本ではあくまで廃棄物処理という概念が中心にあり、リサイクルについては縦割り的な形でそれにくっついているという構図なのに対し、EUでは基本的には一つの法律でリサイクルをすべて回し、それを補う形でリサイクル関連法令が存在しているという点に大きな違いがあるのです。
日本の場合、それぞれの法律毎にセクションが分断しているため、それぞれにおいて個別最適化は図ろうとするが、全体最適化にはならず極めて非効率な体制であると言えます。

言ってしまえばここに尽きるのですが、リサイクル技術の進歩が加速している今、このような制度は時代に合っていないのです。
現在、日本は人口減少、そして経済縮小の時代に入っています。
必然的に製造業も縮小を余儀なくされ、メーカー頼みの力技リサイクルも規模の経済性を確保できなくなり、益々非効率となっていくことでしょう。
現状制度の枠組みを超えた、包括的なリサイクル管理政策への転換が望まれます。
日本では、とりわけ行政では、長らく伝統主義が跋扈しています。
伝統主義とは、「それが過去に行われてきたというだけの理由で、それを正しい」とする思想です。
かのマックス・ウェーバーはこれを「永遠の昨日(Das ewig Gestrige)」と呼びました。
これは日本社会の痼疾でもあるので、容易には変わらないと思いますが、奇しくもコロナ禍の今は、日本でも様々な面において変革の機運が生まれています。
これを機に、この分野においても抜本的改革が進むことを期待します。

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