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ダンサーになりたかった

休職して3週間が経った。復帰するとしたら来週の今日から。
でも職場に戻るつもりは、無い。

そもそも、なぜ今の会社に就職し(てしまっ)たのか。
ダンサーになりたかったが、なれなかったからである。

ダンサーは幼い頃からの夢で、一度は諦めたものの、大学時代に「またこの夢を追いかけたい!」という思いが芽生え、“人生の夏休み期間”は夢を叶えるために捧げてきた。
しかし、新型コロナにより挫折。
就活が始まる頃、私が目指した世界はコロナ禍で大ダメージを受けた。
夢を叶えるチャンスがぐっと減った。
同じ夢を目指していた人の中には、そのときにできる努力を続けて数少ないチャンスを得ようとしている人もたくさんいた。
しかし、私は大学卒業後に夢追いフリーターという不安定な立場になることはできなかった。
友達が大学卒業後に正社員になる一方、自分は空白期間で叶う確信のない夢を追いかける。
“社会のレール”を外れることが怖かった。
もともと、学生のうちに夢が叶わなかったら諦めるべきかも、とか思っていた。
でも、叶う確信をもっていたときもあった。

コロナ前の学生時代に受けたあるテーマパークのオーデションで、かなり合格に近づいた瞬間があった。結局そのときは最終面接時に、学生であることが理由で辞退を勧められ、「また来年、大学の卒業が決まったら受けにきてください。パークは無くなりませんから」と言われて泣く泣く辞退した。
しかし、ダンス審査を通過して、「来年また来て」と言ってもらえた経験は私に、大学を卒業する頃には(このテーマパークでなくても)夢が叶うだろうなぁという自信をつけさせた。

その1年後、このテーマパークは、(きっとコロナ禍を理由に)オーディションを行わなかった。
たしかにパークは無くならなかったけど、チャンスは無くなってしまった。
コロナが流行して世の中がガラッと変わり、開催されるオーディションの数がぐっと減り、
とりあえず夢は一旦置いておこう、安定した道に進もう、と真面目で堅実な判断をし、普通の就職活動をして今に至る。

就職活動は苦労した。
大手ばかり目指したわけでも、高望みばかりしたわけでもないのに落ちまくった。
それは、「夢への未練」があったことが一因だ。
ガクチカを聞かれたら夢に捧げてきたことしか話せなかった。
夢への未練はありません!という態度のつもりでも、面接官たちからは「もうその夢は諦めたんですか?」とか、「そっちの道に進もうとは思わなかったんですか?」と言われ。
「夢を目指せるなら目指したいわ!」という思いを必死に隠しながらリモート面接を受け続けて落ち続けた。
(落ちた理由は「夢追ってすぐ会社辞めそう」だけじゃないだろう。知らんけど。)

コロナ禍で(&思ったよりも落ちて)なかなかスケジュール通りにいかず、ガタガタになった就職活動、とても苦しかったが、奇跡的に今の会社から内定をもらい、正社員になった。(最終的には他にも3社から内定をもらえたが、1番ブラックじゃなさそうだったのが今の会社だった。でも実際は…⁇)

就職した頃は、コロナ禍が落ち着いて、またオーディションが再開する未来に向けての、不安な空白期間を作らないためであり、オーディションのための準備期間にするつもりだった。
興味のあるオーディションが開催されるときはすぐにダンスに注力しようと思っていた。

しかし、実際は、就職という決断により、私はダンスから離れてしまった。
正社員をしながらダンスも全力で、ということは私にはできなかった。
慣れない社会人生活に、慣れない仕事。
毎日ヘトヘトで、仕事後にレッスンを受けるなんてとても無理だった。
学生時代は、朝にバイトして、日中は大学で、夜にレッスン行く、という生活をしていて、体力に自信がないわけではなかったが、
学生時代と、労働時間が長く責任もある社会人になってからの疲労感は全く違った。

「私は踊るために生まれてきたんだ」くらいのことを思っていた学生時代の私は何だったんだ、こんなにも気持ちが変わってしまうのか、と思いながら、
レッスンを受けたいとか、ダンサーになりたいとかいう思いがだんだんと薄くなっていくのを感じていた。
ただ、コロナ禍が思ったよりも長引いて、エンタメ業界もダメージを受け続けているのを傍目に見て、とりあえず正社員になって普通の道を歩んでいるのは正解だったな、と思った。これは今でも思っている小心者(良く言えば堅実)な私だ。


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