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日本のEC市場は17年で10倍【未来を生きる文章術008】

 2002年2月27日の原稿です。ネットバブルが崩壊したとされるのは2000年のこと、その翌年の2001年(平成13年度)のEC市場規模についての報道を取り上げています。

 当時BtoBで34兆円、BtoCで1兆4840億円ですか。今確認できる最新、2017年(平成29年)度の電子商取引規模調査結果が経済産業省のサイトにありますが、BtoBで317兆2,110億円、BtoCで16兆5,054億円。つまりどちらも10倍になっています。

 この連載、最新の公開情報をもとに独自の目線で料理するっていうのが自分に課した制約だったという話は前にしました。
 本稿の場合は、(1)ネットバブル崩壊と言っても株価という「期待値」がはがれただけで実体は伸びていると指摘し、(2)「顧客の創造」という本質で世の中を見るべきと締めたものです。

 顧客の創造は経営学のドラッカーが唱えたことで有名ですが、この原稿ではあえてそちらにいかず、京都の老舗での具体的シーンで結んでいます。
 ネットの話から入ったので、老舗の話で締める。工夫としては分かるのですが、実はなんとなく恥ずかしい。その理由は何だろうと考えていたんですが、「とってつけてしまっている」からですね。

 二つのシーンをつなぐなら、どこかに共通点を探したいところです。この原稿だと、単に自分の意見を裏打ちするために無理やり話題を転換しているにすぎません。
 それでは説得力がない。できれば書き出しで何か老舗にまつわるエピソードを出して、途中でECの話、そして最後に老舗で締める、そんなサンドイッチ構造が工夫できなかったかと思ったりします。

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ネットバブル崩壊後もeコマースは成長、ネットビジネスをどう評価するか

 経済産業省、電子商取引推進協議会(ECOM)、NTTデータ経営研究所が共同で発表した「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査」をご覧になって、どんな感想を抱かれたでしょうか。2001年の電子商取引は、BtoB(企業間電子商取引)が約34兆円、BtoC(消費者向け電子商取引)が1兆4840億円とする内容です。
 それぞれの数字を前年比でみると、BtoBが60%、BtoCが80%の伸びとなっています。ネットバブルの崩壊という言葉に慣れた方の中には、インターネットってまだそんなに成長しているんだ、と驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。

 そうです、インターネットは今も元気です。たとえばインターネット広告。昨年は個々の企業にとって厳しい状況ではありましたが、「平成13年(2001年)日本の広告費」によれば、全体では前年比24.6%の成長です。ビジネスの基盤となるインターネット人口も、ビデオリサーチネットコムの調査によると、世帯普及率にして前年比14ポイント増の44.7%と伸びています。国土交通省の発表している「ソフト系IT産業の実態調査」によれば、インターネット企業も増加を続けていますし、JPドメイン名登録数も増加しています。
 確かに、インターネット企業の株価は下落し、ベンチャーも投資を集めにくくなっています。パソコンの出荷が前年より縮小したと電子情報技術産業協会の発表にあります。しかし、インターネット上で行われている電子商取引をはじめとする活動そのものが「崩壊」したわけではないのです。

 では何が崩壊したのか、というと、「期待値」ではないでしょうか。電子商取引でもインターネット広告でも、あるいは個々の企業の収益にしても、1年前は倍増が期待されていた。それが実際には届かない。現在の状況そのものではなく、期待値との落差に愕然とする。それが現状です。
 バブルが崩壊して、インターネット企業も実力で評価されるようになったといわれます。でも、じつは評価基準は現在もネットバブル当時と変わっていないのかもしれない。ある「期待値」を基準にして、それを上回ると高く評価し、下回ると低くなる。期待値尺度ではなく、企業と顧客の関係というビジネスの基本を評価できているでしょうか。

 京都でのコピーライター時代、和菓子や漬物といった業種の企業とおつきあいをさせていただきました。創業明治35年というある企業で「老舗ですね」と言ったぼくに、担当の方が答えられた言葉が忘れられません。
「いやあ、まだまだです」
 京都には、100年以上続いている企業が多くある。そんな中では、明治創業といってもまだ若造だ、さらに100年続くため、お客様としっかり手をつながなくてはならない。そんな言葉が続きました。
 お客さまあってこその100年。企業のほんとうの力はそこにある。あの日の担当者の言葉に、ぼくはたいせつなことを教えられました。

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ゼロ年代に『日経ビジネス』系のウェブメディアに連載していた文章を、15年後に振り返りつつ、現代へのヒントを探ります。歴史が未来を作る。過去の文章に突っ込むという異色の文章指南としてもお楽しみください。

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雑文を書いたり、地域づくりに取り組んだり、そんな日々です。noteでは、ゼロ年代に『日経ビジネス』関連のウェブメディアに連載したコラムを現代の眼で振り返ります。時代の変遷に未来への目線を養う。あわせて、15年以上前の自分の文章に突っ込むという異色の文章指南・文章論でもあります。
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