2024.04.16コロッケ

昨日気持ち悪いと言っていたわりに、今朝はコロッケが猛烈に食べたくなってコンビニで買ってきた。

家でコロッケを揚げている人ってわりといるんだろうか?コロッケって1 つ2つ食べればかなりお腹が満たされてしまうから、家族が多くないとわざわざ作らないってイメージがある。

家で食べるご飯のラインナップにコロッケが入っていたのは、ある一時期だけ。私はあの頃、小学校低学年くらいだったろうか。母がお弁当屋さんの工場で働いていたときだ。業務用の冷凍コロッケが常に家にあった。俵型の小さなコロッケで、揚げたてをバクバクといくらでも食べられた。偏食でガリガリだった私ががっつりとカロリーを取れるおかずとして母は重宝していたようだ。油の処理だけ面倒だが、時間がかからず簡単に作れたのもシングルマザーには嬉しいポイントだったろう。社割で購入できていたのかもしれない。

揚げ物はあまり好んで食べないが、あのコロッケだけは猛烈に恋しくなる。いや、コロッケというより、あの頃の母との暮らしが恋しい。お弁当工場で働きながらひとりで子どもを育てるのは、母からしたら大変だったろう。経済的な苦労や不安も大きかったはずだ。ただ、思い出す記憶の中で、あの時代の母はいつも楽しそうに笑っている。

母の働いていたお弁当工場では同じシングルマザーで学生時代からの友人のタエさん(仮名)も働いていた。私と母は毎週のようにタエさんとその娘が2人で暮らす団地へ泊まりに行った。偶然にも近い境遇となった旧友の前で楽しそうに気兼ねなく話す母が好きだった。母もタエさんも辛い離婚を経験し、多くのものを背負っていただろう。でも私の目には、2人の友情が30代の青春のように映った。

そのうち母とタエさんは工場の仕事を辞めたが、友情は長く続いた。私が高校に入学するくらいまではときどきタエさんの家に遊びに行っていた気がする。

今年のお正月、地元に帰省して10年以上ぶりにタエさんに会った。娘さんとタエさんが2人で暮らす家を訪ねると、彼女は帽子をかぶって床に横になっていた。病気の治療中でとても調子が悪いようだった。チラリと一瞬だけ顔を上げて私を見てくれた。書いていて涙が出てくる。子どもの頃によく目にした、換気扇の下でタバコを吸うかっこいいタエさん。大好きな人。なんで今まで帰省しても会いに行かなかったんだろう。私またすぐに地元に帰らなくちゃ。

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