2024.04.01選んでいないパン

あー、もう今日はいいや。

半ば自暴自棄に近い心で、冷凍庫の引き出しを開ける。ラップに包んだイングリッシュマフィンが入ったジップロックの大袋から、半切れを2つ取り出すと、ラップの包みを開き、冷蔵庫でカピカピになりかけていた使いかけのハムとチェダーチーズととろけるチーズを上に乗せ、ラップで包み直して電子レンジに放り込む。

本当は冷凍のパンは半解凍してトースターで焼いた方がおいしいんだけど、今日はおいしく食べるひと手間なんかかけたくない。レンチンしすぎてしなしなになって、チーズがこびりついたイングリッシュマフィンでいい。温まったイングリッシュマフィンのラップを外して皿に乗せると、ケーキシロップをこれでもかとかける。普段は怯んでしまう悪いことを思いっきりしてやるんだ。黄金のシロップがパンに浸っていくのをうっとりと眺める。

火傷しない温度まで冷めただろうか。いざ、実食。一口食べて「これだよ、これ」と誰の心の中にもいる孤高のグルメっぽいオヤジが舌鼓を打つ。

イングリッシュマフィン、チーズ、ハム、ケーキシロップ。甘じょっぱ党からしたら、こんなん旨いに決まってんのよ。パンケーキ、カリカリのベーコン、バター、シロップがベスト甘じょっぱだと思ってたけど、今日の組み合わせもなかなか上出来だ。

今日食べたイングリッシュマフィン、実は買いたくて買ったものではない。先日、買い物に行くのがダルすぎた日に、ウーバーイーツを配送料なしで使えるサブスクの1ヶ月無料体験に登録しスーパーの食材を届けてもらった。そのとき甘いパンが食べたくてスーパーの店内ベーカリーで「低糖質チョコマフィン」なるものを注文した。が、在庫切れだったようでチョコマフィンは値段の近いイングリッシュマフィン（6個入り）に代えられていた。

正直ものすごくショックだった。甘いもの欲からチョコマフィンを頼んだのにイングリッシュマフィン？マフィンの代用だからマフィンにしとけって思ったのか？名前こそ同じマフィンだけどアメリカ式のケーキみたいなマフィンとイングリッシュマフィンってあまりにも違うんでねぇの！？菓子パンだろ。代わりに選ぶなら。

代用品のチョイスに納得がいかない。だが、せっかく選んで届けてもらったのだ。人に買ってきてもらっておいて文句ばかり言うもんじゃない。とりあえずトーストして家にあったシロップをかけて甘くして食べたが、やっぱりコレジャナイ感は否めなかった。結局その日は、コンビニにお菓子を買いに行ってしまった。

残ったイングリッシュマフィンはひとつひとつを半分に切り、ラップで包み、ジップロックに入れて冷凍した。その選んでいないのにうちに来たイングリッシュマフィンは、結果的には「これだよ、これ」がマイインサイド孤高のグルメから繰り出されるほどの活躍をしたわけだ。

「ま、なんだってプラスに変えられるもんだな」とわかったようなことを口にして、やる気がないのもそれなりにご機嫌にやり過ごした今日だった。