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BLUE GIANT
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この物語は後に世界一のサックスプレイヤーになる日本人、宮本大の物語。
といっても現実の話ではないし、現在原作漫画は連載中のため、そうなるかは誰も知らない。
だが、この映画を見た人は、きっと彼の将来はそうなるのだろうと予感する。
伝説になる
3.11東日本大震災。
地震の中、制作すれば伝説になる、気概を見せろ。
というようなことを宮崎駿はスタッフに向かって話していた。
言ってる事は無茶苦茶だが、尋常でないものが伝説になる。きっとそれは間違いない。
主人公の宮本大は高校生からサックスを始めた。
始めた途端にjazzの魅力に取り憑かれ、寝る間を惜しんで雪の中でも河原で練習を続けた。
自分の中に目覚めた何かに突き動かされるように。
それは4歳から実家の教室でピアノを始めた、作中のピアニスト沢辺雪祈が大がサックスと知り合ってからの3年間に戦慄するほど、大の練習量は異常だった。
大のサックスは楽器を初めて3年の人間が出せる音では無かった。
彼はjazzと出会ってから尋常では無くなった。
この映画は、主人公、宮本大が生まれ育った仙台から東京に出て、jazzを通して仲間と友情を深め、人生を賭けた目標を明確にする旅のはじまりを描いている。
jazzとは
大いわくjazzは激しく、熱い音楽。
特にソロの自由さが他の音楽とは違い、熱い。
jazzは自由を重んじる音楽である。自由でなければjazzではない。
楽譜はあるし1曲という概念もあるが、即興がjazzであり、その場の空気がグルーブを生みjazzという音楽を高めていく。
抑圧された魂の解放を求めたブルースから派生した音楽であるjazzも自由を求めて発展した。
その日、その時にしか現れない表現がある。
それがjazzの特徴だ。
瀕死の音楽
だが現代ではjazzを聴く人間は多くはない。
一部の音楽ファンのものになり、多くの若者は手に取ろうとせず小難しい音楽で、喫茶店で流れているBGMと思っているのではないだろうか。
劇中のピアニスト雪祈はそんなjazzの状況を憂い、他の音楽に勝つためにピアノを弾いている。
一方、大はjazzの力を信じてまっすぐに、どこまでも強く音を鳴らす。そうすればjazzを初めて聴く人にも届くと信じて疑わない。
そのために大はサックスを強く吹く。
誰のためでもない、それを信じる自分のために。
何を信じて生きるか
大は自分のjazzだけを信じている。
その信念を胸に、孤独であることすらもかたわらに置いて、jazzと向き合った。
尋常ではない青い炎のように高温で燃える大は、周りの人間も巻き込んでいく。時に破壊的に。
信じるものが強固であれば、力は強くなる。
反面、それを受け入れられる者は同じレイヤーにいるものだけだ。
ラストシーン
大に感化されて、JASS(バンド名)の二人も尋常ではなくなる。
そう、伝説となるために尋常でなくなるのだ。
この日、この時、三人で伝説を作るために彼らは生まれた。そう思えるほど、SO BLUEでの演奏は熱く、激しく、命を糧に生み出した演奏だった。
映画はこの物語の始まりを描いている。
大のjazzとの旅は始まったばかり。彼の人生に興味があれば、ぜひ原作を読んでほしい。
心に火をつけたい人は見るべき映画。
きっと見て良かったと思える作品です。
劇中の音楽について
原作を読んでいる人なら、大が鳴らす音はどんだけすごいのって思ってたと思う。
この作品は若者の成長が軸だが、主人公は音楽、jazzそのものだ。
だから音の迫力や、演奏は作品の質と直結する。
かつ、雪祈が作曲したFirstnoteなどがどんな曲であるのかも同じく作品の質と繋がっている。
その点で、上原ひろみをアサインできたのはこの作品にとって素晴らしい選択で、最高の出会だったと思う。
彼女の演奏が素晴らしいのは当たり前として、この物語に合わせて作られた楽曲が素晴らしく、本当に感動した。素晴らしかった。
大のサックスを担当した馬場智章さんの演奏も素晴らしかった。熱い大の演奏そのものだ。
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