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あそどっぐインタビュー8日目 その3 「ネタのお話 〜ラッコとアスリートとキリギリスと〜」

あそさんは、コントになると途端に「チンコチンコ」言う。
なぜだろう?
今回は、あそどっぐと「チンコ」の来し方ゆく所を追う。

(2020年5月13日収録分)

■ ラッコのお話

あかほし(以下「ほし」): 今ね、あそさんに聞こうとしてた質問の、上から順番にきいてく。
あそどっぐ(以下「あそ」): うんうん。
ほし: あの、写真集のラッコ?(編注:『寝た集』には、ラッコに扮したあそどっぐが川の水面でほほえむショットがある)
あそ: はいはいはい。
ほし: あれ、死なないんですか?
あそ: あれは、危なかったけど大丈夫よ(笑)
ほし: 「危なかったけど」(笑)あれ、どうやって撮ったの?
あそ: あれ、車イスのまま入っていってるのよ。
ほし: うんうんうん。
あそ: だから、まあ・・・流れがゆるやかだから。
ほし: あ〜。
あそ: まあ、うん。流されはしないんだよね。

あそ: あ、ちょっとまってね、1回吸引させて。
ほし: は〜い。
(編注:あそさんは「しゅしゅしゅこ」でヘルパーさんの手を借り、定期的に痰をとる)

あそ: あの、ぼくのからだって、あのなんていうかな・・・足がしたにおりて。
ほし: うん。
あそ: L字型になってるでしょ?
ほし: うんうん。
あそ: だから、まああの〜、足の方を、川上にむけると。
ほし: ほおほお。
あそ: こう、流れがゆるやかなら、車イスさえ固定してれば・・・からだは足がひっかかって流れていかないんだわ(笑)
ほし: へえ〜・・・え〜っと。
あそ: たぶん。
ほし: あしを、どっかにひっかけたってこと?
あそ: あし、あしが・・・車イスにひっかかってるから。
ほし: あ、ああ!ああ!
あそ: そうそうそう。
ほし: へえ〜。
あそ: だから車イスさえ流れなければ・・・
ほし: 車イス流れたら死ぬじゃん(笑)
あそ: うん、車イス流れたら死ぬよ。
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: マジか。
あそ: うん。
ほし: じゃ浮き輪はなかったんか?
あそ: ん?
ほし: 浮き輪とかはなかったんだ?
あそ: 浮き輪とかはとくに・・・用意してないね、うん。
ほし: (笑)
あそ: まあ行ってから「(川に)入ろう、入ろう」っていう気になったからね。
ほし: ああ〜その場でね。
あそ: うん。
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: あれ見たとき、「死ぬじゃんこれ」っておもって。
あそ: (笑)
ほし: めっちゃでっかい地震とかきたら「ちゃぽん」つって死んじゃうじゃんとおもって(笑)
あそ: ま、地震がきたらアウトだろうね。
ほし: (笑)
あそ: うん、それはそうだよ。
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: おそろしい(笑)命がけのショットだったんすねあれ。
あそ: う〜んそうだね。そんでまだ寒いからね。2月か3月ぐらいの時だったから。
ほし: え〜・・・冷えとかって大敵・・・なのでは?
あそ: うんうん、冷えはね、キツいけど、でも・・・ねえやっぱ浸かってたほうがおもしろい・・・
ほし: あ、まあね。
あそ: ね。確実におもしろいのが撮れるもんね。
ほし: へえ〜すげえな。・・・岸にもどってきたときにどうやってあっためたの?
あそ: ・・・はもうなんか、タオル(笑)とくになんももってきてないから・・・
ほし: マジか、やばいじゃん(笑)
あそ: でもまあ車で、でかい車で、暖房つよめにつけてもらって。
ほし: ああ、ああ。
あそ: ・・・しかないね。
ほし: ええ〜(笑)でもあれ車イス、みず・・・のなか大丈夫なんだね?
あそ: あ、いちおうねぼくあの〜、メインでつかってる車イスと、その前に使ってた車イスと、2台もってるんよ。
ほし: へえ〜。
あそ: だからなんかあの〜、なんかおかしな撮影をするときは、古いヤツでいくので、まあ。
ほし: なるほど。
あそ: そうそう。
ほし: スペアがあるのか。
あそ: ただね、古いヤツはブレーキがこわれてるから・・・
ほし: あぶねえじゃん(笑)
あそ: うん(笑)なおいっそう危険度は増すんだけど・・・
ほし: うお〜い(笑)へえ〜そうなんや。
あそ: うん。
ほし: (笑)

■ アスリートのお話

ほし: あとなんか『寝た集』のアスリ-トのネタで。
あそ: うん。
ほし: なんか「『生きる勇気です!』みたいのダッさ!!」みたいのあるじゃないですか。あれって、じっさい言ってる人をみて、「ケッ」て思ったことがあるってこと?(編注:トップアスリートに扮するあそどっぐが、インタビューを受けるネタ。ステレオタイプな障害者像を演じる狡猾さのかげに、自虐とツッコミが光る)
あそ: わ、まあそういうかんじはあるよね?
ほし: ああ~・・・
あそ: うんうん。やっぱそういうのはあるよねなんかね。
ほし: あ~。
あそ: なに話してもなんか・・・
ほし: うん。
あそ: なにを話しても「がんばってるね」って言って感動・・・してくるおばちゃんとかは。
ほし: うんうん。
あそ: いるもんね。
ほし: あ~あ~。そうか・・・じゃああの「生きる感動を伝えたいです」っていうセリフは・・・
あそ: うん。
ほし: そこのおばちゃんたちに迎合したセリフってことですよね?
あそ: そうだね、うん。こうなんか、頭ごなしに感動してくるおばちゃんとかが。
ほし: うん。
あそ: やっぱいるのよ。
ほし: うん。
あそ: なにを話してもこう・・・「いや、話聞いてた?」っていうぐらい。
ほし: (笑)
あそ: (笑)うん。あたまから「いや~感動した!」って言ってるおばちゃんとかいるから。そういうおばちゃん・・・へのあれだよね。
ほし: ああ~・・・そこに対するその~なに、反動でもあるんでしょ、そのきっとあの~あそさんが「チンコチンコ」言うのって。
あそ: あ、そうそうそう、そうだよね。
ほし: うんうん。
あそ: うん、それはもう完全にそう。
ほし: (笑)
あそ: うん。で、あのホ-キング青山さんって。(注1:文末参照)
ほし: うん。
あそ: あの、障害もった大先輩の芸人さん。
ほし: うんうん。
あそ: もやっぱね、そう・・・らしいね。
ほし: あ~。
あそ: うん。だからやっぱし感動されちゃうから。
ほし: ふんふん。
あそ: やっぱり下ネタを・・・「言うしかなくなっちゃうんだよな」とは言ってた。
ほし: 下ネタ以外の武器ないんすかね?なにがあるんだろうなあ・・・なかなか。
あそ: う~ん、なかなかねえ。
ほし: 手強いっすよね。
あそ: あれはなかなか手強いんだよ。だって、聞いてないからね。
ほし: (笑)
あそ: そういう人たちは。話をとにかく。
ほし: うん。そうやなあ、むずかしいなあ。・・・そうなのよ。だからあそさんと関わってて。
あそ: うん。
ほし: 本領発揮のあそさんを見てないから知らないけど。
あそ: うん。
ほし: その~・・・性欲の塊かっていったら。
あそ: うん。
ほし: そんなかんじしない。
あそ: うん、ぼくそんなことないよ。
ほし: (笑)
あそ: 日頃はね、かなりおとなしいヤツだよ。
ほし: かなりおとなしい(笑)そうそう・・・でその、ふだんかなりおとなしいヤツが。
あそ: うん。
ほし: その~、ネタになると「チンコチンコ」言いまくってるその心は?とは、思ってたのよ。
あそ: やっぱりそこだよね、そのね。感動してくる人・・・を、突きとばすための下ネタだよね。
ほし: あああ~、なるほどね。
あそ: うん。
ほし: どうしたらいいんだろうね?カンニングの竹山みたいに「感動してんじゃね-よ」って怒ればいいのかな?
あそ: うん、だからやっぱし、まあ手立てとしてはその~下ネタに逃げるか。
ほし: うん。
あそ: いやなキャラクタ-になるか。
ほし: あ~。
あそ: だよね、うん。でまあ乙武さんとかは、あの~~、イヤなキャラのほうを選んだみたい。
ほし: あ~なるほどね。
あそ: うん。だからなに言っても感動されるから・・・「おれはそういう聖人君子じゃない」って。
ほし: うん。
あそ: 言うために「つよい、イヤなセリフを言うしかなかった」みたいなことは、言ってたね。
ほし: そうかそうか。
あそ: うん。
ほし: たいへんだなあ。
あそ: けっこうそこはねみんなね・・・あのつっかかる、つまづくところっぽいね。
ほし: そうだよね。でも、そこの押し返しにエネルギ-ぜんぶ使ってもしょうがないしね。

■ キリギリスのお話

ほし: 寝たキリギリスを見せてやりたいよね、その・・・(編注:寝たキリギリスのでてくるコントはとても下品です。ローターとか出てきます。詳しくは注2)
あそ: ホントだよね(笑)
ほし: 感動してる人たちに。
あそ: (笑)
ほし: あれ、あれでもう黙ると思う。
あそ: あれは感動できないね(笑)
ほし: (笑)うん、そうなんだよなあ。あそさんがあの、なんだっけ・・・そうかあ、むずかしいなあ。Youtubeに「寝たキリギリス」あげたら削除されるのかなあ?
あそ: あれはダメだろうね。
ほし: (笑)
あそ: あれはダメだよ。
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: ええ~。わたしあのへんが真骨頂だと思ってるんだけど。
あそ: (笑)うん。
ほし: (笑)そうかあ~~なんかメディアとの相性わるいんすかねえ、あそどっぐ。
あそ: うん。あれはダメだよね。
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: でもなんかああいう・・・その~過激なことをしたいのでは?
あそ: う~んそうだねえ・・・。最近はね、ホントね・・・だからそのリハビリのあれを見せる・・・ようにもなった。
ほし: うん。
あそ: のと、まあ相まってると思うんだけど。
ほし: うんうん。
あそ: そんなにさいきん過激なことを、したい欲求はなくなってきてるね。
ほし: あ、そうなんや。
あそ: うん。
ほし: へえ~!
あそ: うん。だからなんかすごいラクになってきてる。
ほし: おお、へええ~。
あそ: だからなんか「そのまんま自分がただおもしろいって思ったものをだせばいい」みたいな。
ほし: うんうん。
あそ: かんじになってるからね。だから「イヤなヤツを見返そう」とか、なんか~・・・
ほし: うん。
あそ: こう、「おれの話を聞け」みたいな。
ほし: うんうん。
あそ: かんじ・・・じゃなくなってきてるね、なんかね。
ほし: あ、そうなんや!そっかそっか。へえ~・・・おもしろいなあ。
あそ: うん。やっぱりちょっとずつね、なんか変わってくるね。
ほし: それはなんか、こう、「丸くなる」ってヤツなんすかね?
あそ: 丸くなってったのかもしれんねえ。
ほし: そっかあ。
あそ: うん。丸くなってきたのか、世の中が変わってきてるのか。
ほし: うんうん。
あそ: うん、わかんないけど。
あそ: だんだん変化はあるね。
ほし: うんうんうん。そっか。この前その~、「お笑い芸人として、ある程度、その~世の中とつながりができてきてる」・・・から。(「あそどっぐにとっての、自分の身体とことば」)
あそ: うんうん。
ほし: そういう~、その~、世の中に対するカウンターとしてわざわざなにかをするっていうことを・・・
あそ: うん。
ほし: しなくていいみたいになってきたってことかな?
あそ: そうだね、うん。そういう感じだと思うね。
ほし: あ〜そうか、それで生まれたのか「タケノコ」は。(編注:コントの日voL4の、超脱力系コントです)
あそ: うん、そうそう(笑)
ほし: (笑)
あそ: そうだよ、まさにそうだよね。
ほし: (笑)へええ~、そっかそっか。おもしろいなあ。
あそ: うん。
ほし: 聞かんと絶対わかんないもんなこんなん。
あそ: (笑)うん。だから「タケノコ」を5年前にやってたらね、たぶんだれも笑ってくんないじゃないかなあと思うんだよね、あれはね。
ほし: あ~。
あそ: うんうんうん。
ほし: へ~、そっかおもしろいなあ。そっかお笑いってそういうとこあんのかあ。
あそ: うん。そうだね、「だれがやるか」っていうのでかなりちがってくるもんね、たぶんね。
ほし: あ、そうか。そうだねたしかに。
あそ: だから今のぼくが「タケノコ」をやるから見てくれる人が・・・いて、うん。ホント、だから・・・5年後にまた・・・ね、ちがう状況になってるかもしんないし。
ほし: うんうんうん。へええ~。そっかあ。いやあ~・・・うれしいなあそっかあ。
あそ: うふふ。
ほし: あの~、「タケノコ」を見たときに。
あそ: うん。
ほし: なんかコロナでめちゃめちゃ世の中が殺気立ってるじゃないですか。自分も含め。(編注:2020年4〜5月、はじめての緊急事態宣言が発出された。このインタビューは5月25日に収録した)
あそ: うんうん。
ほし: 「そのなかで、こんなくだらないことしてる人がいるんだ」と思うと・・・
あそ: (笑)
ほし: (笑)すばらしいなあと思って(笑)
あそ: (笑)そうなのよ。
ほし: 元気がでるっていうか、その・・・
あそ: ああ、ありがとう。
ほし: (笑)そうそうそう。なんかこんなに大変なときに、こんなにくだらないことに力をそそいでる人がいるっていうのは・・・勇気ですよ。
あそ: (笑)ホントだよね。
ほし: (笑)うん、いやあ、よかったんだよなあれ。ちょっと・・・その~友人と一悶着あって沈んでて・・・で、その時にあそさんのYoutubeの「タケノコ」を。
あそ: (笑)うん、あれはホントにバカバカしいから・・・
ほし: う~ん、あそさん見てちょっと心をいやそうと・・・(笑)
あそ: (笑)
ほし: そっかあ、なるほどなあ。・・・なんかさあ、その~、インタビュ-の。
あそ: うん。
ほし: やめ時がホントにわかんないです。
あそ: ホントやねえ。
ほし: いくらでも聞きたいんだよなあ。つど発見があるから。
あそ: (笑)
ほし: だから今みたいに、あそさんが変わったり・・・すること?
あそ: うん。
ほし: とかも、なんか~たぶんこの先だって起こるんだろうし。
あそ: そうだよね、何年後かにまたね、おんなじことを言ってるかっていうと、ちがってくる~・・・だろうね、またね。

注1: 毒舌とスッキリしたパッションがチャームポイント。芸名は理論物理学者で青山と同じく、両手両足が不自由なスティーヴン・ホーキングに由来しており、ビートたけしとも関わりがふかい。オフィシャルHPはこちら。wiki「ホーキング青山
注2:寝たキリギリスが出てくるのは、コント「観察日記」。全身を緑色に塗ったあそどっぐが小学生に飼育され、観察日記をつけられるなか静かにド下ネタをかます。数年前、鞆の津ミュージアムの展覧会で展示された作品のひとつ。

次回、 「神さまと性欲と

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「あそどっぐ、学会でコントする


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