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あそどっぐインタビュー6日目 番外編 「ネタの話」

ほし: 全然はなしかわるけど、「サラリーマン寝夫」3,4回みたんですけど・・・(注1:文末参照)
あそ: お〜んありがとう、うん。
ほし: 生意気かも知れないけど、あそさんのお笑いの話をしたいと思ってて。
あそ: はいはい。あ、ちょっとまって吸引する(注2)。

ほし: あそさん「寝たきり」の回数が少なければ、とか言われてたじゃないですか?(「あそどっぐ、はじめてのバリバラ」)
あそ: ああ、うんうん。
ほし: 私もそう思った。
あそ: うん。
ほし: あそさんのすごいところはその〜なんつったらいいかなあ。俯瞰が、めちゃくちゃ俯瞰なんですよ。
あそ: あ〜なるほど。
ほし: そっちをメインにした方がいいんじゃないかって「寝夫」見てて思った。鞆の津のネタとか、他のネタとか、「寝夫」も・・・めちゃくちゃ俯瞰なんだけど、でもぜんぜん冷たくないんですよ。ふしぎと。
あそ: うんうん。
ほし: たいてい俯瞰になると冷たい印象がでちゃうもんだけど・・・
あそ: なるほどね、うん。
ほし: あそさんは冷たくないんですよね。
あそ: うんうん。
ほし: あんなに俯瞰しまくってるのに、「そばに居るなあ」みたいな(笑)そここそあそさんのいちばんのところなんじゃないかと思って。
あそ: なるほどねえ。
ほし: だから、なんだろう。まあ見るからに寝たきりだから、おれは寝たきりだぜって宣言するのは手続きとして必要だと思うんだけど(「あそどっぐが「障害ネタ」を選んだワケ」)。
あそ: うんうん。
ほし: でもそこはあくまで手続きであって、あそさんが頼りにすべきはそっちの・・・めちゃ俯瞰しまくってるけどなんかあったかいみたいなところ。そっちなんじゃないかなあって思ったんですよね、わたしは。
あそ: うん。そうなんだよね。あのネタはね、けっこう安直なんだよねえホントにねえ。
ほし: わたしは好きだけど。あそこの「寝たきりなのに?」っていうまぜっかえしを寝たきりじゃない切り口でいけば・・・かなりいいんじゃないかなあと思ったけど。たとえば「乳首に毛が生えてるのに?」とかそっち方面でバリエーション出したり・・・
あそ: なるほどね(笑)うんそうなんだよね。あれはね、もうちょっと深みがたりないんだよねえ、うん。
ほし: ・・・「観察日記」の寝たキリギリスくんがけっこう印象的なんですよ、鞆の津の(注3)。
あそ: あ〜、うんうんうん。
ほし: この〜あの禍々しさというか(笑)
あそ: うん。
ほし: めちゃくちゃ挑発的なかんじが好きで。
あそ: うん。
ほし: かなり本音に近い部分なのかなって見てて勝手に思ったんですけど。
あそ: うんうん。まああれはやりたいようにやったね、うん。
ほし: そういう・・・なんかチンコのネタ(編注:「宇宙人と僕」)も好きだったんだけど、宇宙人のね。
あそ: うんうん。
ほし: なんかあの辺とミックスしねえかな・・・「アソアソマン」シリーズとか、「」とか・・・
あそ: うん。
ほし: ちょっとこう・・・なんだろうなあ。障害者っていう立場すら揶揄するみたいな・・・
あそ: うんうんうん。
ほし: ところと、寝たキリギリスの挑発的なかんじとかがこう・・・ぐーとまとまるとエネルギーに満ちるんじゃないかなあなんて妄想することがあって。
あそ: そうなんだよねえ。ホントねえ、なかなかむずかしいんだよねえ。
ほし: そうかあ。
あそ: でもとにかくあの〜・・・「サラリーマン寝夫」はねえ、自分のなかではすごく・・・もっと深くできたなあっていうのはあるね。あれはかなり安直な・・・ああいうのばっかりつくっていっちゃったらダメだなあっていうのはあるねえ。
ほし: そうかあ。
あそ: そうなんだよねえ〜なかなかねえ。これっていうのが1年に1コぐらいしかできないんだよねえ。
ほし: (笑)
あそ: (笑)ホントに。ホントにねえ。次の年もっかいやってもいいかなあって思えるようなの1年に1コぐらいしかないんだよねえ。
ほし: あ〜そうなんや。
あそ: たぶんいっぱいつくっていかなきゃいけないんだろうなあ。
ほし: そうかあ・・・うちの母はねえ、なんかバリバラで出ちゃってたけど、その、健常者?とのコンビとかがおもしろんじゃないかなあとか言ってた。
あそ: うん。そうよね、うん。コンビもありかなあっていうのは最近思うねえ。
ほし: ね。
あそ: ものすごく。
ほし: コンビのが活きる気がする、わたしも。
あそ: うん、相方いた方がいいと思うんだよねえ。
ほし: そうか、そうかあ〜。でもあんまり場所が遠いとダメだもんなあ。
あそ: うんなかなかねえ。これっていう相手・・・もう41だしねえ。なかなかこれからコンビを探すっていうのはむずかしい年代にもなってんだよねえ。
ほし: ああ・・・そうなんだ。
あそ: コンビはねえ、なんかダメなキャラの人とコンビ組んでみたらちょっとおもしろくなりそうだなっていうのはあるんだけど。
ほし: ダメなキャラ(笑)
あそ: だいたいあの〜、パッと思うに、僕が障害ネタとかでボケをやって、健常者の相方が修正する・・・ようなのはふつうに、スタンダードに出来ると思うんだけど。そうじゃなくてなんか、ダブルボケみたいなのはやってみたいねえ。
ほし: ああ〜なるほど。新しい(笑)
あそ: ホント使えない健常者とかは芸人のなかにクズみたいなのはいっぱいいるから(笑)
ほし: (笑)
あそ: ようお前生きて来れたなっていうのがいるんよ、やっぱり芸人のなかには。
ほし: うん。
あそ: そんな人とコンビ組むとなんかいろいろ出来そうな気がする。
ほし: へえ〜、見たいなあ。そうかあ・・・。ダメなんすかねえ、あそさんのヘルパーするために熊本移住した方とかは?
あそ: あ〜そうね、なかなかね(笑)
ほし: あそさんへの思い入れは十分だけど。
あそ: ホントね、そう思うわ。
ほし: だからその〜あれっすよね相方の代わりに、あそさんは自分で吹き込んだ音声とかをつかってネタつくってるんですよね?
あそ: そうそううん。そういうのはよくやるね、うん。

ほし: そうか〜。その〜なんだろう。お笑いっていう場所だからこそ、なんつったらいいかなあ。さっきあそさんが「人と距離取っちゃう」って言ってたけど(「怒りと家族と(後編)」)。
あそ: うん。
ほし: 無礼講になるかんじあるじゃないですか、お笑いの場だと。さっきも芸人仲間に「クズ」とか言ってたし(笑)お笑いでは、ふだんよりも人と接近できるから、たのしいのかなって。あそさん。
あそ: うんうん。そうねえ。お笑いってツールは接近するねえ、人に。そうだねえ。
ほし: ・・・ってことはあれだなあ。そこまで奥手で内気なあそさんのプライベートを、あんな風に撮れた島田監督はそれだけ見事だったってことですよね。
あそ: うん。島田監督のはホントね、好きだったなあ〜。うん。
ほし: そうかあ、すげえなあ。なんかチアキさんが島田監督カッコい〜って思ったのは、撮影現場で小道具の人が、何かを用意できてなくて撮影が進まなくなった時・・・
あそ: うんうん。
ほし: その時、監督はエキストラの方へ行って、おもしろい話とかをして場を持たせてたんですって。
あそ: おー!
ほし: エキストラの人はノーギャラで気持ち1つで来てる人たち・・で、その時間使ってもらってるわけだから「こんなことあっちゃいけない」って。そこで自分のいろんな話とかしていて、それがおもしろかったらしいんですよ(笑)
あそ: うんうん。
ほし: で、その時に小道具の人をぜんぜんしからなかったんですって。
あそ: うんうん。
ほし: あとでチアキさんが「なんでなの?」ってきいたら、「あん時俺が怒ってもなんにもいいことはない」って言ったらしくて。そういう時の判断の早さみたいなのが、カッコイイ!って思ったらしいです。
あそ: そうだね、ホントねあの〜・・・現場はすごい監督のおかげでずっとたのしいんだよねえ。
ほし: お〜、そうなんだ。
あそ: うん。ホントそれはもう、島田監督の気遣いだと思うなあ。
ほし: あ〜・・・島田さんとコンビ組めばいいじゃん!(笑)
あそ: うんなるほどね、うん(笑)それはそうなったでおもしろいわ。
ほし: (笑)島田さんってわりあいよく泥酔してるみたいだし、けっこう・・・
あそ: うんうん。まあね、人としてはあれよね、かなり・・・かなりダメな方だよね。うん、人類としてはね(笑)
ほし: (笑)え〜、期間限定でよいからコンビ組んでほしいなあ。
あそ: (笑)
ほし: なんかあの〜、「寝たきり疾走ラモーンズ」の舞台挨拶の時に「助成金みたいなのが組めさえすればすぐにでも続編を撮りたい」みたいなことを言ってた。
あそ: お〜そうなんだ。
ほし: 続編でコンビを組めばいいよ・・・
あそ: そんな・・・なるほど〜(笑)
ほし: ・・・と、いま勝手に思った(笑)
あそ: (笑)またね、なんかいっしょにやれるといいけどね。
ほし: うんうん、そうっすね。舞台挨拶の時、監督は赤ら顔で、見るからに泥酔してたんだけど・・・開口一番「おれは障害者だからあそどっぐを撮ったわけではない。あいつがかっこよかったから撮ったんだ」っていう話を・・・その時はキリッとしてた。
あそ: (笑)
ほし: で、そのあと「あいつもそんなに長くは生きないと思うから、すぐにでも続編を撮りたい」みたいなことも言ってた。
あそ: うんうん。そうだねえ・・・またやれるといいけどなあ。うん。
ほし: 助成金まだかなあ。
あそ: (笑)
ほし: まああれ、「元町ロックンロールスウィンドル」やれたからよかったけどね(注4)。
あそ: うん。そうだねうん、あれはねホントうれしかった〜。またなんか呼んでもらえるようにがんばらんといかんね。そうなんだよね、そこをね・・・監督に「なんやあいつ」って思わせないようなのを作らないといけないなっていうのは、ずっとあるよね。
ほし: それは、なんだか、いい緊張感ですね。
あそ: うん。それはいい緊張感あるね、うん。かといって、いいのがつくれるかっていうとまた別問題・・・
ほし: (笑)
あそ: (笑)
ほし: その〜なんだろう。あそさんのホカホカ温度感でいけばもっともっとつくれる気がするなあ。なんか寝たきりに足をしばられているような気がする。
あそ: うん、あーそうね。うん、それはある。あんねえ「サラリーマン寝夫」にはねえ、実はちょっと原型があって。
ほし: へ〜。
あそ: うん、「蒸しパン」っていうネタがあるんだけど、2年前かな・・・はじめてやった単独ライブでいっちゃんウケたのよ。
ほし: そうなんだ。
あそ: 本番でやったなかで。一番受けたんじゃないかってぐらいウケて・・・それがね、すごくここちよかったのよね。
ほし: ほえ〜。
あそ: でそれが、同じワードを繰り返すネタで。うん、その感じでつくりたかったんだけど、バリバラって言うのもあってちょっと寄せすぎた・・・。だからさじ加減がね、むずかしかったんだろうね。
ほし: なるほどなあ。
あそ: う〜ん、とにかくあれは安直だったね。
ほし: 私はそんな悪いとは思わなかったけど、好きだけど。『ウケる技術』はまだ買ってない?
あそ: 『ウケる技術』まだ買ってない。ああちょっとまって、今ポチッとな、するわ。本のタイトル何だったっけなと思ってたんだよ。
ほし: まだ買ってないんだったら今「送ろうか?」って言おうかと。
あそ: 『ウケる技術』・・・
ほし: そんなかに「天丼」っていうワザ説明がでてくるんですけど、同じワードを繰り返すっていう。
あそ: そうそう、これがねハマるとね、すごくね、ここちいいんだよね。
ほし: そうかあ。
あそ: さっそくポチっとした。
ほし: (笑)私も買い直そうかな。
ほし: 前回まではインタビュー1時間でしたけど、次から1時間半とかでもだいじょうぶですか?
あそ: あ、今日くらいかな?大丈夫よ。
ほし: ああ、じゃあそれでおねがいします。

注1:日本一おもしろい障害者パフォーマーを決める「SHOW-1グランプリ」で披露したあそどっぐのネタ。舞台は近未来。世のバリアフリー化も進み、サラリーマン寝夫は北極への転勤を決意するが・・・?
注2:あそどっぐは嚥下が難しいので、よだれを専用のスポイトで吸う。ペースは30分に1回くらい。
注3:寝たキリギリスが出てくるのは、コント「観察日記」。全身を緑色に塗ったあそどっぐが小学生に飼育され、観察日記をつけられるなか静かにド下ネタをかます・・・という映像が広島の美術館「鞆の津ミュージアム」で展示されていた。
注4:島田角栄監督のドラマ作品。第8話「寝たきり恋愛街道」であそどっぐがメインキャラとして出演している。まるで島田監督からあそどっぐへの、恋文を読んでいるかのようなラブリーな脚本です。

(インタビュー6日目:2020年3月11日収録)

次回、「コロナからはじまった 『コントの日』

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「怒りのホスピタル(修正版)


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