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あそどっぐインタビュー3日目 その5 「あそどっぐが「障害ネタ」を選んだワケ」

私は、あそさんを心底カッコいいと思った。
あそどっぐはどうやって今のあそどっぐになったのだろうか。
なぜ私はこんなにあそどっぐが気になるのだろう。
好きなんだろう。

ほし: あそさんのネタがいいのは、「障害のある人」と「障害のない人」の垣根を取っぱらうというか・・・「そんなもんくだらねえ」ってあそさんの懐をバーンって開けてくれてるからなんだよな。
あそ: (笑)
ほし: そのバーンの時、キレイ事じゃなくてちゃんとあそさんの毒々しさもセットで見せていくじゃないですか。あれ、すごく安心できる。あそさんが障害ネタでコント作ってるのは「当事者だから言える」っていう強さを使っている気がしますが、どうなんでしょう?
あそ: うん、そうだよね、まさにそれだと思うね。当事者じゃなくてあのネタやったら叩かれるもんなあ、たぶんね。
ほし: ねえ。相方とコンビだった時も障害ネタだったんですか?
あそ: いや、相方とやってた時は障害ネタやってなかったねぜんぜん。
ほし: そうなんだ!
あそ: 1コもやってないね。
ほし: へえ〜。
あそ: あの、若かったから、イキってたからね。
ほし: イキってた(笑)
あそ: なんかズルいような感じがしてたんだよね、障害ネタを使うのは。「そんなの使わなくて、正当なやり方でやってウケてやるぞ」みたいな、そういうのがカッコイイみたいに思ってたね。
ほし: へえ〜そうなんだ。あそさんの奥行きがぐい〜って出てきますね。ネタはどっちが書いてたの?
あそ: 僕が全部書いてた。
ほし: そうなんだ。じゃあ相方はバンド95%コント5%みたいな感じですか?
あそ: そうだね。バンドの方だね。
ほし: あそさんがボケ?
あそ: 僕ボケ。ジャンケンで決めたんよね。
ほし: ジャンケン(笑)?
あそ: そう(笑)最初めちゃめちゃテキトーだったんだわ。
ほし: 人格とかじゃねーんだ。ジャンケンなんだ。
あそ:先輩の卒業パーティーでコントをやらなきゃいけない、っていうのが決まっちゃってたんだよね、いちばん始めの時は。で、「もう間に合わないからとりあえずボケとツッコミを決めよう」ってことになって、ジャンケン。
ほし: (笑)それは、お互いヘルパーさんがジャンケンを?
あそ: いや自分でするよ。向こうは手が動いたし、ぼくは口で「パー」とか言って。
ほし: あ〜なるほど。
あそ: でもほんとね、よかったわジャンケンでボケになって。
ほし: ねえ。ボケの方が似合うね。
あそ: ボケだと思う。ボケの方が楽しいもんなあ。
ほし: ですよね、「生きるためのマゾ」だったワケだから・・・(注1:文末参照)。今は逆に障害ネタが多いですよね?普通のお笑いのネタって・・・
あそ: たまにやるけど、年々少なくなってるね。
ほし: それは何か意図が?
あそ: いや、特にないな。障害ネタの方がウケるからっていう感じかなあ。たぶん理由としてはそれだけ。
ほし: その、封印してた障害ネタを解禁したのはなんでなんですか?
あそ: 33歳くらいの時にもう一回お笑いやろうと決めて、その時はもう寝たきりになってたのよ。高校の時はかろうじて座ってたから・・・電動車イス運転して、手も多少は動いたし。
ほし: うん。
あそ: で、30歳すぎてやり初めたときはもう寝たきりになってたから、客観的に見て障害ネタが入ってないと不自然かなあと思って。
ほし: ああなるほど。
あそ: たとえば僕が寝たまんまで「警察官だ」みたいなコントをやっても、もう見てる人からしたら内容が頭に入ってこない思うんよね。だったら「寝たきり警察官だ」だとすんなりいくな、と。だからどうしても入れざるを得ない。ていうのと、あとはもう、年齢的に30歳超えてたんで。30歳って実は芸人辞めちゃうような年齢だから。「なりふり構ってられないな」っていうのと、「かっこわるくても笑いを取る方を選ぼう」と。うん、そういうかんじかな。
ほし: そうかあ。でもそっか、たしかに言われてみればそうだな。
あそ: 障害ネタ使わないとほんとね、逆に不自然だよね。
ほし: う〜ん、たしかにね。でもあれよ、私がはじめてフリーライブを見にいったとき友達も居たんですけど。その人は「ふつうのネタもすればいいのにねえ」って言ってましたよ。
あそ: 一応ね、普通のネタもあるにはあるよ。

〜〜〜

ほし: あっちゅーまに終わるなあ。今回も私がしゃべりすぎてしまった、どうしよう。今日しゃべって思ったのは・・・関わってナンボっていう話だったじゃないですか(注2)。その関わってナンボの “ ナンボ ” をしているんだなって思えて、うれしかったな。
あそ: やっぱりね、関わるってね、お互いのことだからね。一方的に聞かれたりっていうよりも、なにか自分のことを話してくれる人に、話せるようになれるところはあるよね。関わりっていうのはね。
ほし: ああ、よかった。やった。「 “ インタビュー ” って話だったのにお前しゃべってばっかりじゃねーかよ」って思われてるかもなあって、そこが心配だったので(笑)
あそ: (笑)
ほし: まああんまりインタビューという言葉に引きずられない方がいいかもしれないですね。
あそ: ああ、そうだね。
ほし: 私はね、あそさんのことを知りたいんですよ。
あそ: ああ、おう、ありがとう。
ほし: 知りたいと同時に知って欲しいっていうのもきっとあるんだろうな。要するに近づきたいってことですわ。
あそ: ありがとう。
ほし: いや〜、ありがとうございます。たのしかった。
あそ: あ、いえいえ。たのしかったです。
ほし: よかったよかった。それじゃあまた、よいお年をですね。
あそ: よいお年を〜。
ほし: ほいじゃあまた〜。
あそ: は〜い。

注1:詳しくはこちら 「生き延びるためのM」
注2:詳しくはこちら 「人と人のあいだにある "障害 "」

(インタビュー3日目:2019年12月18日収録)

次回からインタビュー4日目、「あそどっぐがリスペクトする、おっちゃん

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。
あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「病名がつくことのむずかしさ」

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