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あそどっぐインタビュー6日目 その3 「怒りと家族と(後編)」

あそどっぐはどんな人なんだろう。
たとえば怒ったとき、どんなふうに感じ、考える人なのか。
そもそも、怒るのか・・・?
窮地に立たされたとき彼は、どんな行動をとるのだろうか。

親の呪い
あそどっぐ(以下「あそ」): ウチの父親もねえ。どう考えてもね、子供の頃それは虐待やろうっていうのを受けてるんだけど・・・あの〜それで、僕がおばあちゃんとかの悪口を言うと、やっぱりね、すごくね怒るんだよね。自分が言うのはいいんだろうけど、うん。だからやっぱしそれはそれで、何をされても親とか家族は・・・家族なんやろうな。
あかほし(以下「ほし」): 私も娘にとっては「親」なので、親の呪いみたいなものを目の当たりにしていると恐くなるというか、身が引きしまるというか。
あそ: そうだよね。うん、それはあるよね。
ほし: わたしも母からの影響はかなり大きいからなぁ。
あそ: やっぱ親の影響は受けるよね。それはもう逃れられないよな。
ほし: 先日「プリズンサークル」っていう映画を観たんです。刑務所に入ってる人たちが、対話によって自身の過去を掘り下げていくプログラムがあって・・・それを取材した映画だったんですけど。
あそ: ああ、ドキュメンタリー?
ほし: そうそう。これ夫との関係をみるとき役に立つんじゃなかろうかと思って観に行ったんですけど、案の定ドンピシャでした。
あそ: (笑)
ほし: やっぱり詐欺とか暴行とかそれぞれなんですけど、やってることは。でも、子供時代の話とか聞くと、そうとうすごい環境に生きてた人たちなんですよ。自分が親に何をされてたとか、そういうことが・・・「おれは傷ついてたんだなあ」とかそういうのがあんまり分からない。
あそ: う〜ん、うんうん。
ほし: 「”傷つく”ということ」自体があまりよく分からないから、人にもそういうことができてしまう。だもんで、自分が壮絶な体験をしているとき、何を思い、感じたのか?みたいなところから出発していくんですけど・・・
あそ: うんうん。
ほし: もう義務教育にすりゃいいのにと思いましたよ、見てて。
あそ: (笑)

あかほしの親の場合
ほし: 親なんてどんなにいい人でも、偏りはかならずあるだろうから、どうやったって親からは呪いを受けるとおもうんですよ。だから、これ必須科目じゃないですかと思って観てた。たとえば、うちの両親は性的なことにすごく素っ頓狂な人たちで・・・父親は中学生の時点で、男女のからだの違いに気づいてなかったらしいんですよ(笑)
あそ: ほお〜。ええ〜!?
ほし: ええ〜!?でしょ(笑)ビックリしたんだけど。
あそ: すごいな。
ほし: それを聞いた母が「じゃあ、学校で男女が別れてるの、アレどうやって分けてると思ったの?」ってたずねたら、父は「う〜ん・・・なんとなく?」って。
あそ: すごいね。すごいな悟空みたいなやつだよね。
ほし: 悟空みたいなやつ(笑)ウソでしょと思って。で、うちの母も・・・大学時代にどういう人がタイプ?みたいな話を、男女グループでしゃべってたらしいんですよ。ただ、母は性的な知識がおくれてたんで・・・あそさん「未来少年コナン」ってわかる?
あそ:わかるわかる。
ほし: 母はコナンがすごく好きだったらしくて、元気いっぱいっていうイミで「絶倫なひとがタイプ」って言ったらしい。(編注:「絶倫」とは、暗に「性的に元気いっぱいな人」という意味でも使われる言葉です)
あそ: (笑)
ほし: で、たまたま母の兄が元気な人だったんで「ちなみに、わたしの兄も絶倫だ」と続けたんですって。地獄。
あそ: (笑)すげえな。
ほし: そんなかんじで両親が性的なところにかなりボンヤリしてたので、私はそこで相当苦労しました。それが私の呪いだと思う。外の世界へ出て行くまでは、私にとっては両親が人類のスタンダードだったわけですよ。だから、彼らみたいに性に対してふわぁ〜ってしてるのが通常の人間だと思ってた。それゆえ「ひょっとしたら自分は異常な欲望の持ち主なのかも・・・」と思って相当気に病んでたんですけど・・・まあ、今にして思えば両親の方がはるかにレアな部類だったすね(笑)
あそ: だんだんわかってくるよね。

社会からの呪い
ほし:それ以外はおおむねすくすく育ててもらった感じがするけど、親が私をフリーダムに・・・あまり社会適応を強いずに育てたもんだから、小学校はいってからは苦労しましたね。
あそ: う〜ん、そっか。
ほし: グループのなかでちょっと浮いたことしてると、やいのやいの言われたり。そういう時、子供だから理不尽でワイルドなこともするじゃないですか。そういうのとか・・・「なんで合唱コンクールだからって歌わなきゃいけないんだろうなあ」とか。だから・・・社会が親みたいになってる、わたしにとっての。ふつうの人が親から受けるような呪いを、わたしは社会から受けたんじゃないかなあ。そこに引っかかってるからこそ、こうやってインタビューみたいなことをしてる気がする。
あそ: うんうんうん。
ほし: そんな、かんじだなあ。だからまだなんかねえ、そのへんは解決しきっていないんですよね。
あそ: なるほどね、世の中にね。
ほし: 「なんでやねん」っていう気持ちが、おさまらないというか。友達が社会に使い倒されて、ボロボロになって新興宗教ハマったりとか。そういうの見てると・・・。もうまったく他人事じゃないんですよね。
あそ: うん。
ほし: パラレルな「わたし」の姿を見ているようで、胸騒ぎがする。信仰そのものは、そう悪いもんじゃないんだろうし、個人が好きにすればいいと思うんですが・・・だけど、私が見てきた友人に関して言えば「ほんとうに自ら望んで入信したんだろうか?」「入信せざるを得ないほど、追い詰められてしまっていただけなのでは?」という疑念はぬぐえません。けれどもう、それは確かめようがない。

あそどっくの「距離感」
ほし: あそさん親の呪い少なそうだけど、なんか・・・あったりします?
あそ: どうなんだろうなあ〜・・・う〜ん、どうなんだろうね。なかなか自分では分かりにくいところはあるよねえ。う〜ん、変わった親だとは思うけどね。
ほし: 変わった親。
あそ: そうだねえ。う〜〜ん。どうなんだろうなあ?何かしらはあると思うけどね。
ほし: そうか〜。ウチの親は性的なところがぼんやりしてるって言ったけど・・・あんまり禍々しくない人たちなんですよ。手前味噌だけど。
あそ: うん。
ほし: だれかに会うと「ああこの人ヤバいもの抱えてるな」とか「こういう場面になったらすごい感情の出し方するかもしれんなあ」っていうのを感じることがあるんですけど。
あそ: ああ、うん。
ほし: 両親、ないんですよね。
あそ: ふーん、うん。
ほし: ないからそういう、自分のおなかにあるぐつぐつしたモノを「これはひょっとするとヤバいものなのかもしれない。だれにも気取られてはいけない」ってかなり不安でした、性的なものに限らずね。ちっちゃいときは特に。とはいえ、小学校でストレス溜まってるから、もうどうしようもなく「うあー!」と突き上げてくるものがあったんだけど。
あそ: (笑)
ほし: そういうのもなかった、あそさん?
あそ: 小学校、めっちゃ楽しかったもんな。けっこう楽しくずーっとやってきたかんじがするねえ、うん。
ほし: へえ〜。
あそ: ただやっぱり・・・そうやってウチの父親がむちゃくちゃやったしコワい人だったから、だからすごい周りの顔色はずーっとうかがう・・・のは今でもあれだね。ずーっとあるね。
ほし: あ〜そうかあ。
あそ: うんうん。すごいまわりの顔色を伺って、無意識にバランスをとろうとするのは、あるね。
ほし: ほえ〜。
あそ: だからなかなかあの、なんて言うかなあ。当たりさわりなく付き合えるけど、なんかあんまり深く付き合えなかったり、するね。
ほし: そうかあ。それはなんかこう「近づきすぎたら何か起こってしまうのでは」っていうことで・・・?
あそ: そうやね。近づきすぎるとやっぱし、恐かったから、すごく。親とか近づくと恐い存在だったから。なるべく、近すぎず遠すぎずの距離感でだれとでも心地よくいる・・・・ってなってるかんじはするね。だからなんか、すぐ懐に入っていって仲良くなる人がいたら、いいなって思うね。
ほし: へえ〜・・・じゃ、私が初めて会ったときいきなり「握手しよう!」とか言ったけど、あれ大丈夫だったんですか?(「「あまねさんの握手は・・・アツいよね」」)
あそ: ああグイグイくるから、ああいいなあって思ったね。
ほし: (笑)恐くなかった?
あそ: うん。グイグイきてくんないと、仲良くなれない・・・んだよね。
ほし: へえ〜そうか・・・てことは、相方さんはグイグイいく派だったんだ?
あそ: 相方はね、すごいね。だれとでも仲良くなれる性格で、すぐ飛び込んでいくかんじやね。うん。
ほし: そうか。あそさんと相方さんで、陰と陽だったんですね。
あそ: そうだね。だからもう、はじめて会ったときからぼくのこと呼び捨てで「太一でいいか?」って。で、あの〜「スゲーなれなれしいやつだな」っていうのが第一印象だよね(笑)こいつスゲーなれなれしいやつだなって。
ほし: そうなんだ(笑)相方さんすごいな。誰にでもそれでいくんすね?きっとね。
あそ: うん、そうそうそうそう。
ほし: そらモテるわ。(「あそどっぐの相方はモテた」)
あそ: そうなんだわ。顔もシュッとして、誰とでもこう・・・フレンドリーにやって。で、歌がうまいからね。そらモテる。
ほし: リリーフランキーが言ってた。「歌うまければチ〇コ3㎝でも大丈夫」って。
あそ: そうなんだよ。歌はズルいよねえ。あれはズルいわあ。ギターひけて歌がうまいからねえ。
ほし: あそさんは、相方さんのことなんて呼んでたの?
あそ: ぼくは「奥田」。
ほし: 奥田。ああ〜。
あそ: ぼく名字で呼んでたんよ。
ほし: あ〜(笑)
あそ: そこはねやっぱね、距離があるよね(笑)
ほし: ね(笑)
あそ: 「おれはちょっと距離を置くぜ」っていうのは、くずさなかったね。
ほし: (笑)

次回、「怒りのホスピタル(修正版)

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。
あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「怒りと家族と(前編)

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