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あそどっぐインタビュー6日目 その2 「怒りと家族と(前編)」

あそどっぐはどんな人なんだろう。
たとえば怒ったとき、どんなふうに感じ、考える人なのか。
そもそも、怒るのか・・・?
窮地に立たされたとき彼は、どんな行動をとるのだろうか。

あそどっぐはあんまり怒らない
あかほし(以下「ほし」): あそさんが「コイツこの野郎!」って思った時ってどうしてます?
あそどっぐ(以下「あそ」): どうしてるか・・・最近あんまないもんなあ。う〜ん、もうちょっと若いころは、よっぽどそう思ったらまあ戦う・・・かなあ。
ほし: たたかう。
あそ: (笑)うん、たたかうね。
ほし: 「こりゃアカン!」ってなったら戦う?
あそ: そうだね、うん。
ほし: 「こりゃアカン!」になるまでの・・・ちょっとイラァみたいなのってどういう風に処理してます?
あそ: わ、、けっこうなんとなく忘れるから。得な・・・得な性格なんだろうね。そんなに引きずらない。
ほし: つよいなあ。そうなんだ・・・私は忘れるまで時間かかっちゃうなあ。幼い頃なんかは、ず〜っと嫌なこと思い出して「あの人なんであんなことしたんだろう」「あの時ああ言えたらよかったのに」とか、いっぱい考えてくるしくなってた。
あそ: ああ。ああ言ったらよかったな的な後悔は、ずっとするね。
ほし: あ、するんだ。
あそ: うんうん。ただ「あいつヤだな」とか「ああ言われてヤだったな」とかは、あんまり覚えてないかんじだね。うん。だから都合がいいんだろうな。
ほし: そうかあ。前に、あそさんが高校の時の自分のポジション説明に「輪の外側から冷めた目で見てた」って言ってたじゃないですか?(「あそどっぐの相方はモテた」)それは、いつからなんですか?
あそ: あ〜いつからだろうなあ。高校ぐらいからな気がするね。中学ぐらいまではもうちょっとアホいかんじで「わ〜たのしいたのしい!」っていうか。そんなかんじやったね(笑)
ほし: (笑)
あそ: そう、5レンジャーでも黄レンジャーがいちばん好きだったし。だから、大概アホよね。
ほし: (笑)なんか「ああ言えばよかったな〜」って思ってるときに、ついでに思い出しません?嫌なヤツの顔もセットで。
あそ: あ〜、それはないかなあ。
ほし: ん〜そうかあ。すごいなあ。それはなんか「罪を憎んで人を憎まず」という話・・・でもなく?
あそ: あ〜どうなんだろうなあ。ほんと都合がいいんだろうね。記憶をね、都合が良いように変えれる能力があるんじゃないかなあ(笑)
ほし: へええ〜。
あそ: うん。だから「ああ言えばよかったな」っていうのも、ああ言えばよかったの続きのストーリーを考えるかな。結果的に「ああ言って、こう言われて、ああ言って・・・あ〜こうなったらイイ感じになったなあ」って、いい物語をつくって着地すると、なんか満足するみたいな。
ほし: マジか。すげえな。やろう。
あそ: (笑)うん。
ほし: そのやり方も・・・高校ぐらいでみつけた?
あそ: かなあ?うん・・・かもしんない。
ほし: すげえなあ。まじかあ。かてない。すごい。そうなんだあ。そっかあ・・・もしかしてあそさんのコントって、こういうところに端を発してるのかしら。

あかほしの夫とのケンカ
ほし: この前、娘が体調くずしてる最中に夫とケンカして、二重苦だったんですけど・・・
あそ: (笑)
ほし: なかなか言葉では伝えにくいんだけど、夫が怒ったり嫌な感じになってるときって、ものすご〜いキューって閉じてカタくなっていくかんじがあって。
あそ: うんうん。
ほし: たとえば、私が何の気なしに「あ〜つかれた〜」って言うと「俺だって疲れてるよ」みたいな刺し方をしてくるわけですよ。
あそ: うんうん。
ほし: もはや何をしてもカツンと当たっちゃうみたいな・・・そういう時があるんですよね。私は母と兄に甘やかされて育ったので、そういう風に閉じてる人が身近に居るっていうことに不慣れでして。べつに言葉とかなくってもふ〜んと動くと「ああ、それね」みたいな感じでだいたいが通じ合うというか。
あそ: うんうんうん。
ほし: 生まれ育った家族とはわりと風通しがよく、お互いの意志が通じやすい状態だったわけですよ、関係性が。
あそ: うん。
ほし: だから夫に身近でそのかたさを発揮されると、があ苦しい!ってなる(笑)夫の態度が苦しいっていうのもあるし、夫自身もきっと苦しいんだろうなっていうので、二重で苦しくて。
あそ: うんうん。
ほし: それで私は怒っちゃってたわけですよ。「そんな風に閉じこもったってなんも良いことねーぞ」と。
あそ: (笑)ああ、そうしててもいいことはねーぞと。

夫の生い立ち
ほし: 「アンタ、そうなってっからな」っていうのを言ってたんですけど・・・。ただ、なぜ夫がそうなったかっていうと、彼の両親は、彼の言うこととか感じてることに気を留めないんですよね。たとえばわたしが義母に「これ、大事だなあ」と、デリケートな話をしてみても「・・・で、たくあんがな」みたいな返事がくるっていう(笑)
あそ: (笑)
ほし: 常時そんなかんじ。「ああそうだったんだね」とか、「ああ〜これはこうなんだね」とか、そういう落ち着いたやり取りがほぼない家庭で。だから、夫は自己保身のために自分の殻に閉じこもるほかなかったっぽいな・・・と。
あそ: うんうん。
ほし: もともと、彼は長年引きこもりだったんですよね。小学校4年のときに円形脱毛症でハゲちゃって、それからいろいろあったから。
あそ: え〜小学校の時に?
ほし: そうそう。で、中2からずっとスキンヘッド。
あそ: ふ〜ん。
ほし: まあ・・・見るからに傷ついてるんですよね。で、だから夫が殻にギューッとこもった状態になっている姿を目の当たりにしすぎて、しんどい。いちおう好きになって一緒になった相手なので、極力憎みたくないんですよね。今、彼を憎む代わりに、わたしは彼の両親のことを憎みはじめてるんですよ。でも夫と嫌な感じになっちゃってるとき、彼の両親を憎んでもその場は解決しないじゃないですか。
あそ: うん、そらそうやなあ、うん。
ほし: そこでドン詰まりになってしまって、ピークを超えると無気力になるようになってしまった。ああこれはヤバいなと思って。その危機感から、はやくどうにかしなきゃと「私、凶暴化する→ 夫、殻に籠もる→ どっちかがパンクする」という地獄ループ。夫婦で仲良くパニックです(笑)
あそ: (笑)
ほし: 最近ふと気がついたのは・・・夫の両親は、放置か命令しかなくって、彼のペースをじっくり見守ってはくれなかったんですよね。「この子は、今はゆっくり待って欲しいんだな」とか、そういう風には。でも・・・私が怒り狂うっていうことも、彼のペースを見ていないっていうことになるんですよね。結局私は、彼の両親とおなじことをやってしまってるんだなって気がついたんですよ。
あそ: うんうんうんうん。
ほし:菩薩モードに入らなきゃいけないなと思って、さっきからあそさんにいろいろ聞いてるんですけど(笑)
あそ: うん、そうだね。うん、見守る・・・のがいいんだろうね。そういうときはね。うん。
ほし: 大人にならんといかんなあと思って。母にも「コバちゃん(夫)はお母さんに甘えるのが足りなかったから、たぶんアンタにお母さんやってほしいんだよ」って言われて・・・
あそ: うん、そうだね。
ほし: そうか〜、子供が2人かあと思って。
あそ: たいへんやなあ(笑)
ほし: 現在そんなかんじでしてね。きっとあそさんも「これはたまらん!」っていうピンチをいくつも超えてきてるんだろうなって思うんですよ。なぜなら、人間がデカいから。
あそ: そう、かな(笑)
ほし: で、いまヒントをくれ〜っていうかんじ(笑)

あそどっくの親からの影響
あそ: ウチの父親がねえ、けっこうねえ、たいへんなかんじの人だったから、ウチの家族はなんかあれかなあ。辛抱強いというか・・・うん。
ほし: あ〜そうなんだ。
あそ: うん。かなあ。すごく難しい人やったもんね、ウチの父親がね、うん。もう今はね、おじいちゃんになってなんか別人みたいにやわらかいかんじになったけど。
ほし: へえ〜。そうなんだ。言ってましたもんね、キビシイ人だったって。(「阿曽太一、誕生」)
あそ: うん、そうだね。きびしいし、うん・・・その〜自分の何か感情の持って行き方がよくわかんない人だったねえ。
ほし: 反抗期の時に「そういうのやめろよ!」とか言ったりしたんですか?
あそ: いや〜とくには。うん、なかったね。言ったりしたっていうのはなかったなあ。反抗期の時はなるべく距離を置いてた・・・かんじかなあ。
ほし: じゃあ、そんなにワーっと親にくってかかったりはしなかったんだ?
あそ: うん、しなかったね。距離を置く派だったね。
ほし: すごいなあ。あそさんと私では鍛え方がちがうんだな。私は甘々で育ったから・・・
あそ: (笑)
ほし: 今までのツケがまわってきたのかな(笑)
あそ: (笑)
ほし: まだ一人で生きていけないぐらいの年頃の子供にとっての親って、かなり圧倒的な存在じゃないですか。
あそ: そうだよね。うんうん。
ほし: 良きにつけ悪しきにつけ、その圧倒的な存在がゆがんでたりすると・・・
あそ: うん。やっぱ・・・のちのちのあれ、に影響をだいぶおよぼすよねえ。
ほし: ねえ。
あそ: うん。
ほし: 夫見てても、思う。この前、夫の親族で集まったんですけど、ワーッてそれぞれ好き勝手に話してるだけだったんですよね。その話を夫にしたら、彼が昔、大学の人類学の授業で、一斉にしゃべりはじめる文化があるアフリカの部族の映像資料を見て「俺の一族かよ」って思ったって言ってましたね。
あそ: (笑)とりあえず言いたいことを言ってワーッってなるんだ。
ほし: カルチャーショックでした。彼の親族に会うときの心境はかなり複雑なんですよね。「この環境が夫を育んだのか・・・」っていう思いをかみしめることになるから。
あそ: なるほどね。
ほし: し、私自身、そのカルチャーに巻き込まれてウッカリ傷ついたりしてきたんですけど、それも「夫、こんな思いをしてきたのか・・・」とより味わい深くなってしまうというか、そういうのがあって。なかなか・・・ああ菩薩にならなきゃ・・・なれるんかな・・・
あそ: う〜ん、そうだね。そう言うても親は親だしね、家族は家族だからね。夫さんにとってはだいじやろうからね。
ほし: そうなんだよなあ〜。

次回、「怒りと家族と(後編)

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。
あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「ハプニングと生きざま

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