見出し画像

梨花と私はどう違うか?「紙の月」を読んだ

タイトル画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。タイの街並みですが、冒頭に出てくるタイの街は多分もっと田舎なんだろうと思います。日本人はタイという土地が好きなのか?それとも逃亡にはちょうどいいからタイなの?

冒頭、梨花はすでにタイに逃亡中だ。日本人にあうが、自分のことを知っているのではないかと警戒する。
梨花は、大金を横領した。この時点で、そのニュースは日本全国で報じられ、梨花は日本では既に犯罪者として、有名人だ。
どうして梨花は、大金を横領する羽目になったのかが、このあと語られるわけだ。いったい、梨花とはどういう人間なのか。

まず語られるのは、梨花の夫のモラハラだ。
ほんと、嫌な奴なのだが、この嫌な奴の書きっぷりの上手さよ。こんな奴、あっちこっちにごろごろいるんだろうな。
しかし、梨花が罪を犯したのは、必ずしも夫だけのせいでもないだろう。
(そのあたりは実際に読んで想像してほしいと思います。)

怖いのは、お金がどんどん湧いてきて、使うことで得られる万能感みたいなものがかかれていること。
誰もが少しは体験したことのある感覚だろうからドキッとする。
そして、光太も、夫さえもそれに慣れ切って、対価なしでお金を引き出すATMがあるような思いに染まっていく。
梨花は自由になっていくようで、どんどん透明な檻に閉じ込められていくのだ。梨花を閉じ込めたのは、梨花、そう、自分自身。

紙でできた月は、紙幣でできた月なのかな。
ペラペラで嘘っぱちだったということなのか。
本当の自分とはどこにあるのか。それさえも幻に思える。そんな作品だった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?