マイナンバーカードの利用者は国民ではなく日本国住民です。外国籍の方、特定居住者の方も含まれます。
マイナンバーカード1枚で受診という表現は他の証明書の携行が必要ないという誤解を与えます。病院側が確認するまでマイナンバーカードに紐づいている本人の資格情報等は不明ですので、従来通り特定疾病療養受療証、高齢受給者証、高額療養費限度額認定証、高齢受給者証などの各種証明書の携行は必要です。
全ての医療機関が保険医療機関ではなく、すべての薬局が処方箋に対応する訳ではありません。またこの表現では2023年4月以降、マイナンバーカード保険証の利用に対応できない保険医療機関は認可が取り消されるかの如く解釈さされかねません。
これは「分かりやすさ」を「単純化・省略」とはき違えた不正確な表現です。労働災害や公災での受診に関しても誤解を与えかねません。
これだけではいかにも正しいように読めます。しかし、では何故紛失した際、再発行だけではなく何故利用停止の手続きが必要なのでしょうか? どのようなリスクが想定されているのか解らないという漠然とした不安が現れている制度設計になっていないでしょうか。
この「マイナンバーを使う手続きでは、顔写真で本人確認することが義務化されています。」という規定が見つかりません。またそのような事務が見つかりません。
また「マイナンバーは使われません。」とありますが、e-Taxによる確定申告ではマイナンバーの入力が要求されます。これはマイナンバーそのものを通信の為のキーにしていないという説明と思われますが、「オンラインで利用する時にも、マイナンバーは使われません。」と理解した場合混乱が生じる可能性があります。
またマイナンバーを他人に見られても大丈夫ならば、何故紛失再発行時にマイナンバーが変更されるのかと疑問が深まるところです。
役所言葉が排除できていない公報の見本です。本人を特定する「氏名・住所・生年月日・性別の四情報」これを基本四情報と呼ぶのは行政用語で、このくくりは一般人には意味はありません。
またこれまで住民票コードは行政内のみで使用されていたものであり、何の説明もなく唐突に持ち出せる言葉ではない筈です。さらにここで各種証明書と有効期間等、照会番号等という細かいところが単に省かれています。
またICチップに税や年金、医療などのすべての情報が格納されている訳ではないという説明は一般人を馬鹿にしています。ICチップが税や年金、医療など情報にアクセスするキーだろうということはなんとなく理解している人が大半ではないでしょうか。銀行のキャッシュカードに取引履歴が格納されていると考えている人は少数でしょう。
さらに「ご本人以外は、税や年金、医療などの個人情報を引き出すことはできません」というのは完全な間違いです。パスワードが解れば他人も利用できます。良い意味では介助者や保護者、悪い意味では犯罪者が利用することが出来ます。
ここでいう「行政職員」すなわち公務員と誤解されてしまいそうですが、マイナンバー取扱事務は公務員のみではなく、109種類の組織に拡大されており、多くの民間人が含まれ、その組織のセキュリティレベルやオペレーター自身のプライバシーに関する知識、法令順守に関する意識には大きな差があります。
また「見ることができない仕組みとなっています」とありますが、これはシステム的に制御されている訳ではなく、監視カメラや罰則があるのみです。しかるべき手続きで権限付与されたオペレーターなら、閲覧記録が残る前提で自分の業務に関係しない情報を取得することができます。
総じてリーガルにもテックにも通じていない人が書いた公報のように思われます。
公報とは国民を騙すものではないと心得ていただきたいと思います。