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三島由紀夫論2.0

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2023年5月の記事一覧

芥川龍之介の『開化の殺人』をどう読むか② 漱石と鴎外の間で

芥川龍之介の『開化の殺人』をどう読むか② 漱石と鴎外の間で

 例えば夏目漱石の文學は谷崎潤一郎には一切継承されなかったといって良いと思う。

 谷崎は観劇体験や巖谷漣の影響下で創作を始め、漱石とは一切交わることなく独自の文学作品を書き続けた。その作品には微かに泉鏡花的なものはあるが、永井荷風的なところは精々私生活に留まるように思える。谷崎文学は誰かの継承ではなく、日本文学のこの一筋に連なりて、なお孤立したものだ。敢えて言えば観劇体験や古典の素養も含めて考え

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芥川龍之介の『開化の良人』をどう読むか① コキュ旦那と神風連

芥川龍之介の『開化の良人』をどう読むか① コキュ旦那と神風連

 何故『南瓜』の題名は『開化の殺人』ではなく『南瓜』なのか。それは『南瓜』がおそらく維新以降の出来事、殺人事件を描いていながら、書かれていること、つまり殺人に至る経緯や殺し方そのものは旧弊なのか新時代なのか解らない話だからである。ハムレットと脇差の衝突が『南瓜』の魅力なのだろう。その緞帳芝居のような一幕劇は「開化もの」とは呼ばれることがなかった。
 しかしおそらく「開化もの」のキーになるのは『南瓜

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