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芥川龍之介論2.0

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2022年5月の記事一覧

白のズボンに白靴

白のズボンに白靴

 この『爲介の話』は大正十五年一月『婦女界』に発表された作品である。「支那問題」が論じられているのは、

 ……と云った情勢を背景にしており、というわけでもない。いやこれは、震災の後、有馬に避暑に行くというだけの話だ。

 前年一月に発表されている芥川龍之介の『馬の脚』にも偶然こんな記述がみられる。

 これだけ比べると芥川龍之介が「筋のある話」を書いていて、谷崎潤一郎が「筋のない話」を書いている

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帝国ホテルの壁を蹴る人

帝国ホテルの壁を蹴る人

 谷崎と芥川と佐藤春夫が文芸談をしていて、それを壁を蹴って止めさせたのは一体誰なのか? これが奈良から上京していた志賀直哉だったとしたらなんとなく面白いが、それにしても、小田原事件による谷崎潤一郎と佐藤春夫の「絶交」ってなんだったの?

 なかよさそうじゃん。

読み誤る漱石論者たち ダミアン・フラナガン② 谷崎は芥川の弟子ではない。

読み誤る漱石論者たち ダミアン・フラナガン② 谷崎は芥川の弟子ではない。

 ダミアン・フラナガンが毎日新聞にまたいい加減なことを書いている。これを読むのは主に外国の人なのだろう。間違った情報が海外に発信されているとしたら、いや、実際にされているのだが、これは彼個人の問題ではなく、そのプロフィールで公にされている出身大学やこの記事を掲載している新聞社の問題でもある。
 まず基本的な誤りを指摘すれば、谷崎潤一郎は芥川龍之介の弟子ではない。敢えて言えば、永井荷風の引きで世に出

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