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置くだけでは売れない。消費者と生産者を繋いだ「新しい催事」 #ふくしまクリームボックス プロジェクトの全貌とは?

農家さんの作った数々のジャム、地方メーカーの調味料、加工品の数々。ただ置くだけでは売れない時代に、どうすれば売れるのだろうか。生産者の想いと、消費者の購買欲を繋げる「新しい催事」が10/12〜10/18まで小田急町田店で開催中です。このnoteでは、プロジェクトの全貌と商品開発の極意を紹介いたします。

1.地方の加工品の課題とは?

社会派料理コンサルタントの小鉢ひろかです。料理を通じて課題解決をすることを得意とし、商品開発から販売戦略までコンサルティング業をしています。
このnoteでは、福島県の加工品の魅力を伝える催事を作るというプロジェクトの概要と私が商品開発で気をつけているポイントをお伝えします。

本プロジェクトは10/12(水)〜10/18(火)まで小田急町田店 B1食品催事場で開催しています。お近くの方はぜひ足を運んでいいただけたら幸いです。

食を扱うお仕事をされている方は必ず悩むでしょう「食品廃棄」。なるべく日持ちして、売り場に困らないよう最近ではロングライフ化と常温流通ができる加工品の製造が主流となってきています。それにより起こったのは「結局ジャム作っちゃう」問題。せっかく特産物には魅力があるのに、加工するとみな同じ変わり映えのない商品になり、魅力が伝わりきらず、売れない。という課題がありました。

同じジャムも、産地が変われば食材の味が違い、おいしさも違う。でも「ジャム」と言われただけでは一緒に感じてしまう。今回のプロジェクトでは、加工前ではなく、加工された商品の魅力をいかに消費者の皆さんに届けるか?を課題設定とし、新しい催事に挑戦させていただきました。

2.買い物を「体験の場」にする

2020年、小売が大きく変わりました。新型コロナウイルスにより人に会わずに商品だけ買う「ネットショッピング」が大きく伸びたことです。それでも2022年、百貨店の売り上げは右肩上がりになりました。ネットショッピングの方が楽なのに、何故人は買い物に出かけるのでしょうか。私は「体験」を買いたいのだと感じています。直接商品を見るだけではなく、人と話し、香りを嗅ぎ、質感を手で触って体験する。そういった積み重ねの中で心が動く瞬間に、人は購入を決断するのだと思います。

今回の催事では、加工品をただ並べるのではなく体験の場にするべく、加工品を食べて体験する「ティスティング」体験を届けることになりました。でも、ただジャムを食べてもらうだけではおもしろくありません。福島だからできる感動体験は何か模索した結果、福島県郡山のご当地グルメ・クリームボックスに生産者様の商品を組み合わせた進化系クリームボックスの体験を届けることで、福島の魅力を届けることになりました。

クリームボックスは、福島県郡山市発祥の菓子パンです。厚みのある食パンの上にミルク風味の白いクリームがのっているのが特徴です。パン屋さんによりクリームの味の種類は様々で、東京都内では新宿にあるパン屋1店舗のみが販売しているだけの、なかなか外に出ないご当地グルメです。

このクリームボックスを主体とし、福島のおいしい加工品を組み合わせ、かつ、旬のフルーツを組み合わせることで購買欲を刺激したのが今回の商品開発のポイントでした。伝統の料理をアレンジするのは勇気が入りました。でも、伝統は同じ技術や材料を使いつつも新しいことに挑戦し革新していくものだそうです。伝統のご当地パンを進化させ、地元の商品の販売促進につながればと想いを込めて商品化させていただきました。

郡山のご当地グルメ「クリームボックス」

3.商品開発の3つのポイント

さて、今回の商品開発では以下の3つのポイントに心がけ開発しています。商品の紹介を進めながら、解説していきます。

①五感で感じる売り場作り

買い物を「体験の場」に。では体験とは一体何か。それはネットショッピングではできない刺激をお届けすることだと思います。今回は生産者さんの加工品の艶、果実の瑞々しさを表す視覚(クリームのはみ出し方や果物の切り方、盛りつけ方など)に気を配りました。また、ふたを開けた時の刺激的な香り(福島県の焙煎ピーナッツ ぽんぴー、シナモン、タイムなど)、加工する音の聴覚、触覚、味覚などそれぞれ体験が感じられる場づくりを行なっています。例えば、福島の名産品えごまを使った石井農園産のえごま生キャラメル ココナッツコーヒー味を組み合わせた「大人のチョコバナナ」。コーヒーのほろ苦さに、タイ産オーガニックカカオニブ、大きく断面を見せたバナナをドーンとのせることでチョコバナナを五感でワクワクした刺激を感じられる設計にしています。

えごま生キャラメルを使った大人のチョコバナナ

今回の加工は全て催事場の調理場を使用し、売り場から1mの距離でガラス張りの調理室での加工を行なっています。リアルタイムなデモンストレーションも魅力の一つです。その場で作っている、その見える体験が商品に付加価値をつけてくれます。料理に慣れない福島のメンバーが一生懸命心を込めて調理している姿は、心が動くものを感じるでしょう。

②主役を間違えないこと

今回の主役はあくまで「生産者の加工品」です。その魅力が伝わるために、あえてフルーツのグレードを下げたり、甘みの低いクリームを使用するなど調整を行いました。商品としてのおいしさも重要ですが、今回の主役はあくまで「福島の加工品」。特におすすめしたいのが、障害者小規模作業所 たけの子の家さんが作っているぶどうのジャムと、桃のジャム。これは本当においしくて、無添加、ごろっとフルーツは丸ごと入り、甘さも絶妙で大好きになった商品です!ジャムが主役、だからこそ本家のクリームボックスよりクリームの甘さは控えめに。フルーツもあえて酸味のあるものを組み合わせ、全体を食べた時に「このジャムがおいしいね」と思っていただけるように設計しています。

完熟ももふると桃ジャムのクリームボックス

その料理を通じて、何を伝えたいか?目的をハッキリさせておくことが、伝わる商品になるポイントです。

③ストーリーを紡ぐ

東日本大震災そして原発事故を受け、"子供でも母親でもないふくしまの女子”が暮らしについて考え、所属する研究員がさまざまなアプローチで情報の発信をしている『女子の暮らしの研究所』。今回のプロジェクトを主導した皆さんは平均年齢18歳の、女の子たちです。

プロジェクトを主導するメンバーが、どんな思いで、何を目的に、どんなゴールを描いているのか。私は商品開発をする前に、丁寧に観察とヒアリングを行います。百貨店催事は日々の売り上げ目標があったり、コストもかかるので綺麗事だけでは実施できません。リアルと理想を天秤に掛けながら、しかし、誰でもなく彼女たちにしかできないストーリーのある商品を作ろうと努力しました。

新しい世代が、伝統的なご当地グルメと共に、東京で新たな一歩を歩み出す。

上に展示している商品が使われています

本来は、このnoteなく売り場だけでこの想いが伝わる店舗が作りたかったのですが、裏話まで伝えきれず「女子が作っているかわいい」お店にみえてしまっている気がして、催事中ではありますが記事の公開を進めさせていただきました。

いつもと同じ材料を使いつつも新しいことに挑戦し革新していく「伝統」作りをする福島女子のみなさんの挑戦は10/18(火)まで小田急町田店で行なっています。ぜひ、新しい催事体験と、彼女たちの想いを体験しに、足を運んでいただけたら幸いです。ぜひ、よろしくお願いします!!

新しい催事の挑戦は、始まったばかりです。簡単に成功して終わりではなく、これからも伝統を紡ぐ糸の一つになれるよう仕事をしたいと誓う仕事になりました。

今回のクリームボックスを通じて、ふくしまのおいしいを食べて、知るきっかけになりますように。

#ご当地グルメ

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