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【#11】『ルックバック』レビュー

どうも、コバーニャです。

先日、映画『ルックバック』を観てきました。
感想書くのも粋じゃない気がする作品ですが、
せっかくなので。


レビュー

人は、ご多分に漏れず誰しもが、
大なり小なりの悩みや苦しみを抱え、
孤独感に苛まれる夜があるってもんです。

ベルナール・アルノーだってイーロン・マスクだって、
BLAKPINKのLISAだってそうでしょう。

そんなときに役に立つモノはなんでしょうか?
甘いもの?アルコール?抗うつ剤?
いいえ、それは“ルックバック”です。

漫画家、藤本タツキ先生の短編作品『ルックバック』を映画化した今作は、
58分という短さながら、
原作の独特の空気感を見事に「エンタメ」に昇華した、
宝石のような作品です。

ストーリー

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。
ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。

しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる…。

作品ホームページより抜粋

映像

カケアミで作れた影や、手書きのラフさを残した仕上げなど、
表現の細部に漫画へのリスペクトが描かれ、
原作への敬意がひしひしと伝わる素晴らしい映像でした。

今思えば、漫画でありながら映画的だったこの作品が、
映像作品になることは自然な成り行きだったのかもしれません。

クソど田舎の澄んだ空気感や、クソど田舎の季節の移り変わり。
その風景の1ノスタルジー1ノスタルジーが藤野と京本を彩ります。

この風景だけで涙。
なぜなら、僕もクソど田舎育ちだから!
自分の小学生時代を“思い返します”。

音楽

原作で衝撃を受けた身としては、
映像化すると聞いたときは
「ふーん、そうなんだ。ヒットするといいね」
と藤野ばりに斜に構えていましたが、
音楽を「haruka nakamura」が担当すると聞いて、
これは映画館で観なければ!と思った次第です。

結果、凄かったです。すごいシナジーでした。
汚れた心の僕でも目頭が熱くなるものがありました。

とくにエンディングの「Light song」は、
それでも漫画を描き続ける藤野への賛美歌のようであり、
現実世界で起き続ける凄惨な出来事への鎮魂歌のようでもあり、
全てを優しく包み込む、とても素晴らしいエンディング曲でした。

これはサントラ買いです。買い買い!


キャスト

主演の河合優実さんと吉田美月喜さん、
失礼ながら存じ上げなかったですが、
素晴らしかったです。

二人とも声優初挑戦なんですね。
初々しさというか、生っぽさと言うか、
プロの声優さんにはできない新人感(良い意味での)が
見事にハマってました。

調べたら河合優実さん鈍牛倶楽部所属なんですね。
僕が万が一4コマ的なアレで過去に戻ってやり直せるとしたら、
鈍牛倶楽部に入ってオダギリジョーと肩を並べたいです。へへへ。

吉田美月喜さん、名前に好印象です。
疲れた体で家路を急ぐ帰り道、
夜空に美しい月がでていたら喜んでしまいますよね。へへへ。

総評

自分は今作の舞台のようなクソど田舎育ちです。
周りには何もない田んぼみちを、
退屈しのぎでいろんなことを空想しながら学校から帰っていました。

そしてそして、小学校6年生まで漫画を描いていました。
どこかの誰かさんのように中学に入る前に漫画をやめてしまいましたが、
今はクリエーター業界の末端で働いています。

当時書いていた漫画の主人公たち

そんな自分にとって、
この作品はものすごくシンパシーを感じる作品でした。

それと同時に、
クリエーターの孤独感や嫉妬・焦燥感がぎゅうぎゅうに詰まっていて、
とても心が苦しい作品でもあります。

一歩間違えれば、
自分だって藤野に飛び蹴りされる側になっていたかもしれない。
彼の“背景”を考えれば考えるほど胸が苦しくなります。

とにもかくにも、
変えることのできない辛い過去や、無力感に苛まれる孤独な夜も、
4コマ漫画のオチのようなユーモアと虚構で
ポシティブに描き変えることができる、
『物語の力』をドスンと感じた素晴らしい作品でした。

タイトルの「ルックバック」には
いろんな意味が込められていると思うのですが、
漫画が出た時点で色々と言われていると思うので、
映画版を見ていてふと思い出したことを最後にまとめます。

昔、実家で買っていた犬(名前は英作。オス。雑種。)は、
躾がなっていないので、
散歩となるといつも飼い主を引っ張るくらい全力で
田んぼみちを駆け出すのですが、
ちょいちょい不安そうに後を振り返っていました。
そしてまた元気いっぱい走り出します。

当時は「なんでかなー、怖いなー」と思っていたのですが、
今はなんとなくわかった気がします。

“振り返れば”、
自分の後には大切な人がいつも見守っていてくれる、
そう思うだけで、なんだか前に走れる気がするんだなぁ。
みつを


というわけで、
映画って、そして漫画って、本当に素晴らしいものですね。

それではみなさん、また会う日まで。

© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

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