私のアパートはものの配置がよく変わる。 はじめのうちは気のせいだと思っていた。 しかし、私が帰宅する度に変えられているのだ、流石に気が付く。 今日は特にひどい。 部屋を見渡す。 食器や洗濯物は店頭商品のようにきちんと収納されている。そして、机、椅子、本棚、本棚、本棚、本棚全ての位置がものの見事に整然と並べられている。 綺麗に。 なんだかもの凄く、部屋らしい、部屋だ。 自分の部屋とは思えない程に。 何がそうしているのかわからない。霊か、それとも小さなおじ
人間は日々の生活の何気ない場面で、突然、究極の選択を迫られる。 僕はまさに今、その状況にある。 端から見たらその様な状況には見えないのであろうが、僕の頭の中では、全僕が総動員され、国会なんて比にならないくらいの激しい議論がなされている。 「何を躊躇っているんだ、選択肢などあってないようなものだろ。今すぐ、行動するべきだ。」 「いいや!いくら緊急事態だからといっても今行動することは僕のポリシーに反する!」 「ポリシーがなんだとか言って本当は動くのが怖いだけなんじゃな
「そういえば、皐月達って何で一緒に帰らないの?仲悪いの?」 友香にそう尋ねられて、返事に困ってしまった。 別にたいした理由はない。 それに仲が良ければいつでも隣にいるって考えも変じゃない?そういう、いわゆるニコイチ的な考え方、私は好きじゃないし。 「別に悪くないよ」 ちゃんとした理由もないし、ちょっとイラっとしたから、早く話を終わらせたくて、適当に答えた。 「えーでもさ、小さい頃は手とか繋いで歩いてたんでしょ?」 話を終えられたかと思ったのに、友香は続けて聞いてくる。正直
時刻は午前零時四分。 本日最後から二本目の電車が、寂れたホームから発車した。 私はそれを目の前で見送った。 残すところは二十分後の終電の一本のみ。 日本の公共交通機関の時間に対する異常なほどの神経質さは、実に素晴らしい。先刻の電車だってホームの時刻表示が三から四に変わった瞬間に出発していった。 私には難しいことは分からないけれど人々が相当の工夫と努力と計算を重ね作り上げ維持しているのだと思う。 しかし、正直なところ二、三分の遅れくらい良いのではないかと思ってし