海を見に
年末に自転車を買った。よく走ってくれて、とても気持ちがいい。ちょっとでも時間ができるとカメラをぶらさげて自転車に乗る習慣ができた。30代も終わろうとしてるなか、行動範囲が広くなって子供に戻った気分だ。
先日も少し時間ができたから自転車に乗った。ふと思いついたので、小学生の頃に友達とよく釣りに行った近場の海に向かうことに。そこは工業地帯の端にあるテトラポットだらけの汚い海。釣りにはまった僕らが「ここを抜けたら海に出るんちゃん」と言い合い自転車をひたすら漕いで見つけた秘密の場所。
そこには20代になってからもたまに来ていた。うまくいかないことがあれば車に乗り、そこで海を眺めてぼーっとしていた。秘密の場所って言うと大袈裟だけど、そんな場所があることに若い自分は救われた。海を見ても何か答えが見つかるわけじゃない。でもその時間があったおかげで、なんだかんだ今もやれてるような気がする。
しばらく実家を出てたけど、30代になり家族ができて地元に帰ってきた。何年か前、あの場所がちょっと気になって行ってみたことがある。事件でもあったのか、途中の道がフェンスで塞がれて海を見ることができなくなっていた。ひとけのない子供にとって危ない場所だから仕方ない。思い出の場所なんて、いつかなくなってしまうんだろう。
今回も海を見れないことはわかっていたけど、自転車とカメラを理由に行ってみることにした。もちろん海は見れなかったけど、ペダルを漕いでると思い出がたくさん蘇ってきた。
同じクラスの子と釣りをきっかけに友達になって、よく遊ぶようになったこと。その海には何回も行ったのに、小さなカサゴ1匹しか釣ることができなかったこと。糸が切れて飛んで行ったロケット錘を見ながらゲラゲラ笑ったこと。ただの根掛かりを釣れたように見せ合って虚しくなったこと。
でも中学になると彼とは違うグループになり、それからだんだん遊ぶこともなくなり疎遠になった。高校は別だったから、それ以降のことは何もわからない。子供の頃の友達なんてそんなもんだろう。あれから時間は経ったけど、素敵な思い出として残ってるから、それで良かったんだと思う。
ちなみに、今は釣りをやっていない。小6の頃にバス釣りブームがきて、3年くらいやってみたが、6匹しか釣ることができなかった。ほぼ毎週くらい行ってたのに、まったく釣れなかった。向いてないことがわかったので、中学3年の時に引退してしまった。
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