見出し画像

ふるさと納税はだれのため?総務省の市場介入は共産主義的でひどい

携帯電話事業への参入で大きなリスクを背負っている楽天Gに、またもや苦難が訪れています。しかも携帯電話事業参入をけしかけた総務省絡みだから、いよいよ厄年極まれりといった感じですね。

今回の事件に至る過程を簡単にまとめると以下のような感じかと。

  • ふるさと納税が成功しすぎて首都圏の税収を圧迫し、そのうえ販売プラットフォーム手数料も加味すると全体としては税収が減少してしまった。

  • 人気のふるさと納税を止めるわけにはいかないが、寄付金額をほどほどに抑えたい。

  • 2023年10月に微改悪を行い、自治体が返礼品にかけられる金額を減らしたのだが、(たぶん)対して効果が出ていない。

  • なんとかして、ふるさと納税の魅力を落とさなければ

『そうだ!!ポイントバックをやめさせればいいんだ!』

7月2日の松本総務大臣の会見

総務省の言い分

総務省曰く、ポイント還元の原資は自治体からの手数料であり、ポイント還元競争が起こることで自治体の収益減少を招いているという指摘である。

あとは、経済的メリットを前面に押し出したプロモーションは制度の趣旨(寄付をする目的)に反しているというコメントも出てきた。

上記2点についてはいずれも、結論ありきで無理やり考えた論法と言わざるを得ないでしょう。

ポイント還元競争で収益減少説

これに関しては楽天の三木谷社長が、「ポイントは自社原資」と言っているが、この反論はやや的外れだと思う。そもそもお金に色はないので、原資がどこかというのは大した問題ではありません
また、ポイントを配らなくなったからといって、自治体の取り分が増えるというロジックはどこにもない。

長野県の須坂市のふるさと納税担当者のnoteでも、以下のようにポイント規制に伴って自治体の原資が増えることはなさそうだといわれています。

本当に「ポイント原資」は自治体が負担していると言い切れるのか?
全くないとは言えませんが、ほぼしてないです。ほとんどはサイト側が負担しています。
(中略)
「ポイント原資」は、ほぼポータルサイトが負担している実態であり、国が想定するロジックは必ずしも成り立ちません。
改正により「ポイントの過熱競争」はなくなっても、元々手数料に含んでいないというポータルサイトの考えですので、契約変更はなされず、自治体がポータルサイトに支払う手数料はこれまでと変わらないということがお分かりいただけると思います。

【最新】ふるさと納税制度改正 今後どう変わる?!担当者主観ですが、リアルな視点を一早く!|長野県須坂市ふるさと納税(公式) (note.jp)

では、この問題の本質はどこにあるのでしょうか。総務省の規制を単なる「ふるさと納税利用を減らしたい」「楽天への嫌がらせ」ではなく、ふるさと納税市場の健全な発展に資する意義のある規制だと信じたうえで考えてみると、1つ思いつく問題があります。
それは、ポイント還元を行える事業者が圧倒的なシェアを握ってしまったことで、自治体側の手数料交渉が実質不可能になっている状態ではないでしょうか。(同様の理由で、自治体が独自でふるさと納税の販売サイトを広げることも、ほぼ不可能な状態になっている可能性があります。)

この、資本の力で殴れる大手事業者の寡占状態を解消し、より自治体側に主導権を握らせようという文脈であれば、この施策は一定理にかなっているように思えます。

ですが、その事業者も自治体への開拓、マスプロモーション、システム開発といった事業リスクをとって現在のシェアを獲得しているわけなので、せっかくこれから収益化を進めていこうという段階で築き上げたアセットをぶち壊されてはビジネスなんてやってられません。

アメリカなら訴訟レベルの問題だと思うので、三木谷さんも署名とかではなく、訴訟を起こしてぜひ勝訴してもらいたいと思います。(総務省は楽天モバイルの首根っこをつかめるので報復が怖そうですが。)

寄付の理念に反する説

もうこれは終わってますよね。そもそもふるさと納税がここまで国民に支持されているのは、自分もふるさともwin-winになれる仕組みだったからにほかありません。

それに、できることを規制して短期的な帳尻を合わせようという観点は、共産主義的なマインドだと思っています。

重要なのは、経済的なメリットの後押しもあって寄付の入口に立った人(=関係人口)を、どのように持続的な寄付者に巻き込んでいくのかを考え、実行することでしょう。

例えば、寄付した際に自治体から送られてくる寄付証明書には、知事の挨拶くらいしか自治体からのアプローチがありません。これではもったいなさすぎます。

今仕事で地方自治体の人と働くことが多いのですが、ふるさと納税で持てた関係を次に生かす取り組み・工夫が圧倒的に不足しています。その努力を行わず何かを禁止することでリバランスさせようということだと、創意工夫する事業者・人が報われません。

総務省がこのような動きに出た背景にどの程度自治体側のニーズがあったのは図りかねますが、自由主義経済の中で行うべき行政の施策としては下の下で、実に官僚的な管理主義の所作と言わざるを得ません。残念です。

最後に

インボイスのときの署名が無視されたという過去を考えれば、この署名もほぼ意味がないとは思いますが、「総務省おかしいぞ」と思った人は署名してもいいかなと思います。もやもやした気持ちに一区切りつく気がしますよ。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?