自分用のメモとして

15年後の日本はどんな国であり、世界はどのようになっていて、どのような立ち位置になるか予想。

世界の歴史は繰り返しています。圧倒的な生産性に基づく経済的供給力、及びそれに裏打ちされる軍事力によって覇権国が世界を実質的に支配する時代。その支配によって世界は覇権国のルールが強要され、そのことにより実質的に国境が低くなるグローバリズム(パクス・○○)が成立します。その時代の後半、技術イノベーションないし覇権国からの巧妙な技術簒奪と、覇権国の市場を使って挑戦国が経済供給力を高めます。そして挑戦国が覇権国と比肩するようになると、覇権国によるルール強要ができなくなることによってグローバリズムが崩壊し、国境が高くなる混乱と揺籃の時代へと入ります。そして戦争を経て経済供給力に差がつき、新たな覇権国が誕生していく。そういうサイクルです。

ソ連崩壊後、1990年代からの30年は超大国アメリカによるグローバリズム、パクス・アメリカーナの時代でした。それ以前は軍事的には米ソが対立していましたが、経済的には西ドイツと日本が挑戦国となってアメリカと対抗していました。パクス・アメリカーナの時代は9.11テロを経て徐々に終わりに近づきます。EUはこの時代に拡大しましたが、拡大すること自体が自壊への道でした。ギリシア危機や移民問題を抱え、グローバル化疲れと呼ばれる状況に陥ります。ブレグジットはパクス・アメリカーナの一部であったEUというグローバリズムの終わりの始まりの象徴でしょう。この間、覇権国から技術を収奪し、経済的供給力を高めることで挑戦国となったのは中国です。中国の経済的供給力は世界においてアメリカの地位を圧倒的存在から比較的存在に引きずり下ろしました。

パクス・アメリカーナにおけるパラダイムは、まさにアメリカのパラダイムである、自由・民主制・法治主義でした。世界は否応なくこれを強要され、それに盲従することで表層的な平和を得ました。しかし、イランやイラク、アフガンなど、このパラダイムに従えない人々はずっと存在し続けました。そうした人々は冷や飯を食わされ続けていますが、経済供給力を伸ばせなかったが故に軍事力もアメリカに対抗できるほどにはならず、結果は必然です。しかし中国だけが50年100年計画で挽回を期しています。鄧小平の改革開放路線が中華帝国復興の端緒です。その中国のパラダイムはモンゴルなどランドパワーの帝国の流れをくみ、統制・寡頭制・人治主義です。中国はこれによってパクス・チャイナを実現するでしょう。アメリカやアメリカ陣営を駆逐することまではできないにしても、世界の半分を中国によるグローバリズムで覆うはずです。現在の中国はホールディングス・カンパニーのように国を包含しうる共産党という存在が本体であり、その下に国としての中国が位置しています。共産党は中国以外の周辺国も一帯一路に組み入れてその範囲をチャイナ・グローバリズムの帝国とするはずです。その範囲はアジア大陸の範囲を越えて、一部南・東南アジアからアフリカ・太平洋地域にも及ぶものと考えておくべきでしょう。

現在の世界はロシアが国際法や国連を振り切ってウクライナに侵攻したことで、アメリカ主導のグローバリズム、つまり覇権国アメリカの時代が完全に終焉した状態にあります。今後の15年はこれまでの15や30年とは完全に不連続となります。自由・民主政・法治主義は今後は世界の常識ではなくなります。かと言って、自由・民主政・法治主義が地球上から死に絶える訳ではありません。両陣営が地球上に境界を作り、しのぎを削るようになるということです。そのような中での15年後をイメージすることは難しいのかもしれませんが、パクス・アメリカーナが始まる前、国境がまだ高かった米ソ冷戦期(自由主義経済圏と共産主義経済圏の対立期)は今後の世界をイメージする際の参考になるのではないでしょうか。但し、対立軸はかつてとは異なります。

日本は歴史的にアメリカと同系列(地政学的にシーパワー)の経済強国であり、中華帝国とはパラダイムが相容れません。そのため日本は、日清日露戦争、対中戦争、そして終戦直前のソ連との戦争を経ており、これらとは戦う宿命にあったことが分かります。(対米戦争は、アメリカの帝国主義が東アジアにも及んだことによる、歴史の綾でしょう。日本は本来アメリカとは戦う宿命には無いのです。)遡れば元寇や白村江の戦いもその流れの中にあります。そのため、朝鮮戦争や米ソ冷戦期には日本は最前線となっていました。共産政が自由政に敗北してパクス・アメリカーナが始まったことで日本は前線で無くなりましたが、今あらためて日本は地球を二分する勢力のせめぎ合う最前線に位置しなおすことになっています。アメリカは超大国ではなくなっているため、日本に二人羽織して中華帝国と向き合うことは最早できません。しかし、かといってアメリカは同系列の日本が中華帝国に蹂躙されて橋頭堡を失うことを全く容認できません。もし日本が中華帝国に組み入れられてしまうことになればアメリカは太平洋を挟んで中華帝国と直接向き合わねばならないことになり、太平洋を内海とすることができなくなります。そのことはアメリカにとって国家存亡の大問題となります。そのため、日本はアメリカの傘の下ではなく、民主政の独立国としてアメリカと対等に手を携えて中華帝国に対峙する道を選ぶ以外にないのです。

日本は今後15年は軍事力の増強を余儀なくされます。究極的には、在日米軍は居なくなるので、その分を全部自衛隊(その頃には名称や機能性が変わっているでしょう)で置き換え、加えて現代戦に必要な機能や装備も追加整備しないといけません。(サイバー戦、対テロ戦、経済戦、そして核戦力)そのため、経済全体の供給力を高めなければいけません。昭和の高度成長に匹敵するような令和の高度成長がなされなければ、日本に待っている未来は中華帝国に組み入れられての倭族自治区です。

振り返って見るに、この話は日本にとって全く悪い話ではありません。日本は飛鳥・奈良の時代から世界がグローバリズムになるとその影響を受けて成長が停滞し、グローバリズムが弱まって保護主義となる時代にその国民性や風土を活かして成長し、世界有数の技術・経済強国となってきた歴史があります。例えば江戸時代、幕府は保護主義(鎖国。実際には国を閉ざしてはおらず、制限をかけていただけ。)をとっていましたが、この間に日本の生産性は格段に進歩しており、幕末期には同時代の諸外国に比べても人口(食料生産)、技術力、文化思想のどれをとっても引けを取らないレベルに達しています。日本が黒船の襲来によって開国を迫られつつも列強の植民地にならずに済んだのは民主政の大国であったからこそです。それが故に明治維新という形がとれたのです。その後、日露戦争で日本がロシアを破ったのは、奇跡ではなく必然だったと言えます。

そこにはメカニズムが存在しています。経済供給力を拡大し成長するには本当の意味での投資が必要です。日本はこれまで、保護主義の期間に投資がされる政策を歴代政権がうまくとってきました。というのも日本は島国で、基本的に内需と国内供給力こそが経済の全体であった訳です。この状況で経済成長を果たそうと思った場合に、外国は頼れませんので、土地・労働・資本に加えて技術・市場の経済の5要素を国内投資によって拡張するより他なかったのです。そして日本にはこの投資を成立させるような、国内環境の安定・言語と文化の統一・高い思考力を持つ人口が存在していました。これらが必然的化学反応を起こした結果として経済成長が達成されるのです。

このことは直近の高度成長期にもまさに当てはまります。日本の高度成長期は、米ソの対立が激化して朝鮮戦争が起こり、世界が緊迫して国境が高くなった時代の出来事です。その頃日本の周囲はソ連・北朝鮮・韓国・中国、とどこも軍事政権の国に囲まれており、一番近くにあった民主政の国はオーストラリアといった状況でした。また日本語や通貨はまさに国際的な壁として存在しており、日本は成長するのにおいそれと外国を頼れない状況だったのです。ですので投資は全て安定した国内に向かいました。

こうしたことからも今後15年、日本がせねばならないことが見えてきます。日本の我々は、もうパクス・アメリカーナが終焉したと認識し、ここからは日本は自活して中華帝国の脅威に立ち向かわねばなりません。そのため、自らにグローバリズムの枷をはめるをやめにし、自分たちの本心・心の声に耳を傾けてそれに素直になるべきです。国境を高くし、保護主義に向かうのです。その保護主義によって国内を安定させて、投資が投資を生む高圧経済の状況を作り出す必要があります。そしてその経済力で軍備を拡張して武装し、それを背景として国際社会において自らの主張を展開する必要があります。

世界は新しい秩序を求めだしています。先だってウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でリモート演説し、日本にはその新しい世界秩序の構築をリードして欲しいと要求されました。世界は日本にそれを本当に期待しているのです。なぜなら超大国でなくなり、世界の警察でなくなったアメリカに世界が幻滅しているからです。アメリカのパラダイムやその具現である国連にも幻滅しているからです。世界は日本にアメリカを超えてリーダーとなる可能性を見ていると言ってもいいでしょう。アメリカの属国で51番目の州であるというような自虐的な認識は脱ぎ捨て、むしろアメリカやヨーロッパをも牽引する、旧西側勢力(シーパワーの国)の雄として立つべき時が来るのだと言えるでしょう。

恐らく15年ではこれらのことは完成しないでしょう。これからの30年や50年をかけて完成形を目指していくようなことだと思います。しかし15年かけた時点で第一宇宙速度を超えられていなければ、先の30年や50年はありえないでしょう。ですので、この15年の日本はそのミッションを自覚し直し、頭のスイッチを入れ替え、たるみきったお腹と訣別し、落ちた筋力を取り戻すフィットネスの期間になるのではないかと思います。

幸い、私には日本にはこのような15年を成功裏に過ごせるような根拠となりうる、多くの人が無自覚な隠れた資源があると思っています。それは、日本人の遺伝子と日本語による日本文化です。

私はQuoraで人の認知特性の話を幾つも書いてきています。その私が見るに、世界の中での日本人の認知傾向はかなり特殊です。(高度に)考えてしまう傾向の人が人口に占める割合が異様に高いのです。これは遺伝的な特性であり、他民族との混血が進まない限りは保持される傾向だと考えられます。現在、この傾向はグローバリズムの影響を受けて蓋をされてしまっているきらいがあり、この影響を取り外してポテンシャルを開放すれば、十分ものすごいことになるであろうと私はある意味で楽観視しています。

また、多神教のアニミズム的宗教観や日本の風土が育んだ組織や協働の文化、複雑系の記述に向いた日本語といった文化的資源がこの遺伝的資源の上に乗って、投資に対して好影響を及ぼしうると確信しています。むしろこれまでの西洋文明では今の世に本当に必要となる技術や、その背景となる科学的法則が十分見えなかったので、必然的に投資対象の選定や投資手法について間違え続けてきていたのだと、私としては感じています。その西洋文明のくびきを脱すれば、我々が拓ける未来は広大で膨大でしょう。

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