同期でいたい 5
「えっ本当ですか?企画が通った?」
町田課長の前で、私は手で口を覆った。
「よかったな、頑張ってたもんな」
「あ、あの!メンバー入れたい人たちに、伝えてきてもいいですか」
課長は「たち、ね」と笑った。
「まぁいいけど。ほら、行ってこい」
ばさっと「承認」のスタンプが押された企画書を渡され、私は急いでフロアを出た。
階段を下りていると、本当にタイミングよく、高木が階段を上って来ていた。
「高木!見て、これ、企画通ったよ」
「おーやったじゃん」
高木はふわりと笑って言ってくれた。階段を駆け下りて横に並ぶと、ぽんと頭に手を置かれて、髪がくしゃりと乱れる。
「がんばったなー」
そう言って階段を上り、すれ違っていく高木の背中を見て、
「そういうことするから…」
と、髪を直しながらつぶやいた。
「ん?」
高木が振り返ったから、「そういうことをするから、いつまでも期待してしまう」その続きの言葉を飲み込んだ。
「あのさ、高木。プロジェクト、よろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げると、高木はふっと笑った。
「…ん。任せとけ」
私が一番好きな、高木の笑顔だった。
やったー…、一人になった階段の踊り場で私はガッツポーズした。
プロジェクトが始まれば、これで堂々と仕事中も、高木と話せる。
こうやって、偶然、階段や廊下で会えるのをじりじりと待ちわびたり、いちいち飲みに行く口実を探す必要もない。
自分が浮かれるばかりで、そのとき、高木の方は大変なことになっていることに、私は気付いてあげられなかった。
つづく
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脳内キャストは決まっていますが一人だけ言わせてもらえば、
町田課長…佐々木蔵之介
(それだけで週7勤務できそう)
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