ゆきだるまとけたら 9
先生へのトリュフ、どうやって渡そう。私の頭にはそれしかなかった。紙袋を持ってうろうろする。
車にかけておく? 靴箱に入れておく?
職員玄関の方に回って靴箱を確かめようとしていると、先生がやってきた。
「何してんの? 誰かのストーカー?」
冗談を言いながら先生はおどけてみせた。何このチャンス。周りには誰もいない。
「これ、先生に」
紙袋ごとトリュフを渡した。
「わ、サンキュー」
「いちおー手作り」
「ふぅん。なんかラッピングも気合い入ってんな」
紙袋をのぞいて先生は言った。
「帰って食うわ。ありがとう」
もう先生は私を置いて歩き出す。もうちょっと、何か……。インパクトを残したい。話したい。気づいてほしい。私の中で、何かはじけてしまう。
「それ! 本命なんで」
先生の背中に向かって言った。先生は振り返って、一瞬たじろいだような顔をした。でもまたすぐにいつもの先生に戻る。
「ほー。ありがとう。とか言って他の男子にも渡してんじゃないの」
にやりと笑う。
「そんなわけないじゃん」
友達とは別にわざわざ作ったのに。
ちょうだいって言われたって、あげなかったのに。
どうしてこうも伝わらないんだろう。
「ばかやろー」
なんか先生には結局、ばかって言ってばっかりだ。そのまま私は走って逃げた。
もしも「いいな」と思われたら、ぜひサポートお願いします♩ZINE作成の資金にさせていただきます。