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蛙化現象⑫

前回までのあらすじ
僕は大学を休学し、千葉のある場所で働いていた。2018年9月、その職場で明日香という女性客に出会う。接客中、徐々に僕の心は明日香に惹かれていった。そして出会ってから1年後、自分の気持ちを電話で伝えた。結果、2019年12月22日、福岡ー東京の遠距離恋愛が始まった。僕たちは月1のデートを重ねていき季節は3月。ホワイトデーのプレゼント達と一緒に、僕は張り切って明日香の住む東京を訪れた。

第四章 蛙化

亀裂

時は3月の中旬、東京では所々に桜が咲いていた。僕は羽田空港から三田駅で下車し、近くの花屋さんに向かった。

「キャリーバック持って大変ですね。どこかへ行かれるんですか?」

花屋の老夫婦のお婆さんが、僕に話しかけてきた。

「あっ東京に用事があって来ました。」

そう答えると、次はお爺さんが疑わしい表情で口調強めに言った。

「どこから来たんですか!?」

そうやって不安に思うのも無理はない。この時期は感染症が世界で流行し、日本でもその病気が蔓延し始めた時期だった。

「九州から来ました。福岡です。」

この時期の福岡は、他県に比べ感染者数が少なかった。そう答えると、お爺さんは安心した表情で花を包み始めた。そして会計の際、少しだけ値段をまけてくれた。お爺さんなりの気遣いだったのだろう。

これで最後の準備が完了した。後はプレゼントを渡すだけだ。僕はキャリーバックと、リュック、花を持って明日香のマンションへ向かった。この日は平日だったため、沢山のサラリーマンとすれ違った。

まずはフロントでオートロックを解除し、エレベーターで9階へ。部屋の前に到着し、ここではインターホンを押した。扉の向こうで、鍵を開ける音が聞こえる。

「はい。ホワイトデーのプレゼント。」

玄関が開いた瞬間、僕は花を差し出した。明日香は、その一輪の薔薇を非常に喜んでくれた。その満面の笑みで喜ぶ姿を見るのが幸せだった。そして部屋に入り、キャリーバックを開く。そしてプレゼントの2つ目に、毎回恒例の福岡土産を渡した。明日香は博多通りもん大好きだ。今回は12個入りを買った。次にプレゼント3つ目の、エプロンを渡した。元々花柄のエプロンを持っていたので、今回は2色で無地のシンプルなものをプレゼントした。明日香は早速着て、僕に見せびらかせてきた。掃除の最中だったことをも忘れ感情を表に出してしまう所も、僕は好きだったはず。

しかし今回の3泊4日の滞在で、少しずつ見えなかったものが見え始めた。

それは3日目の朝。ほぼ同じタイミングに起床し、この日は近くの公園にピクニックに行く予定だった。この公園はいつも人影がなく、当時の状況であれば打ってつけの場所であった。今の感染状況では、その公園さえも行ける状況ではないが。

ピクニックのために、明日香はお弁当を作ってくれた。そのお弁当作りの際、明日香の態度が急変していった。

作業工程で常にぶつぶつ何かを言っている。上手くできなきいことがあれば、人は愚痴の1つや2つ吐く生きもの。それ自体には何の違和感もなかった。それに加え、明日香は僕にイライラをぶつけだしたのだ。「まあ作ってもらっとるし」そう考え、その態度までは無視できた。女性が皆、イライラするものではないが、男性諸君なら分かってもらえるはずだ。この無視の雰囲気を。

そしてそのイライラした態度は、公園への出発間際や、次の日の至る所で垣間見えた。寝不足、女性の日、自分の出来なさ、僕の些細な言動、その日の気圧による体調の変化など、様々なイライラの原因が考えられた。

そんな初めて見るイライラした姿に違和感を覚えつつ、4日目の夜、僕は北九州空港行きの機内に乗り込んだ。

当然、日常生活は嬉しいことや楽しいことばかりではない。そりゃ嫌なことがあって、それを表に出してしまうこともある。感情を表に出すことが、全て悪いということでもない。寧ろ感情の豊さを表現する明日香の姿が、僕は好きだったはずだ。

「人間そんなもんやろ」

この結論に達し安心した僕は、機内の座席を倒し眠りについた。

福岡に帰り、3月下旬。何気ない明日香の返信に違和感を察した僕は、初めて自分から電話をかけた。

初めて自分からかけた電話によって、こんな感情になるとは。まさに全世界で流行している感染症と同様、この感情は不測の事態であった。


今後も、恋愛経験を綴っていこうと思います。現在の時点では、彼女とは別れていません。「今後どんな関係になろうと、この過去は大切にしたい」と実家の風呂場でビビっと感じました。そこで投稿すること決めました。もし僕の友達がこの投稿を見たら、以下はご理解ください。病んでません(笑)

今後しばらくは、このタイトルでnoteを作成していきます。
それでは続きはまた明日。

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