見出し画像

Jones骨折の対応

臨床+ライターの佐藤康です。
臨床+では臨床場面でのつまづきやすいポイントや捉えにくい現象の考え方について発信していきたいと思います。

今回のテーマは「Jones骨折の対応」について

先々週にマガジン内で配信しました「Jones骨折」の記事にて競技復帰まで段階的な対応がまとめられています。

ぜひ併せてご参照ください。

私は上記記事と少し視点を変えて、
足部をみることに主眼を置いた内容をまとめていきます。

私は整形クリニックで理学療法士として勤務する傍ら、スポーツ障害や慢性疼痛疾患の方にインソールを作製する活動を行っております。

そのため、今回はインソールを処方する際に行う評価やパッドを用いたアプローチも併せてご紹介していきます。

画像1



■Jones骨折!なにをみる?

Jones骨折はサッカーをはじめバスケットボールやラグビーなどの競技で発症することが多いです。

それは、カッティングやステップを切るような急激な方向転換やストップ動作の多いポジションで多発しているため、上記のような動作の特性の多い競技で発症する傾向があります。

画像2

サッカー選手やバスケット選手をみていないと難しい

と思われがちですが、障害の発生メカニズムと病態を把握することで、そのような難しく囚われがちなイメージを払拭することができるのではないかと思います。


実際に、私は投球障害をはじめ、「野球選手」をみることが多いです。そのため、サッカー選手を特に多く見ているわけではありません。

そんな自分のようなサッカー選手を多く見ていない方でも捉えられるポイントや対応をご紹介していけたらと思います。

画像3


■病態を整理する

画像4

はじめに、
Jones骨折の病態について整理していきます。

|Jones骨折
第5中足骨骨幹部に頻回に加わる外力により発症する疲労骨折・横断的な骨折

画像5

|発生原因
・人工芝の導入による足部への負担増大
・足外側荷重での体重移動
・足趾把持力低下
・股関節内旋制限
・後足部内反アライメント

上記に挙げられているように、硬い路面での環境や足部機能の低下が発症の要因となります。

また、股関節の内旋制限のある選手は、下行運動連鎖により、Calf raise時に外側に重心が移動することで、第5中足骨に負担がかかりやすくなるため、リスクファクターとなります。

|受傷機転

サッカーやラグビーでの
・キック
・サイドステップ
・ストップ
などでは足部外側部に過大な負荷がかかりやすくなります。

キック動作の特徴
ボールを蹴って振り抜いた際ときに軸脚の前足部外側に荷重が移動する

キック動作において、踵挙上時における「前足部荷重」「足部内反」による第5中足骨基部へのストレスの増大が原因であると考えられています。

前方への重心移動に対してスムースな足部内反動作が阻害されることがJones骨折の発生に影響しているといえます。

画像6


第5中足骨の長軸方向に対し30-60°の角度で荷重した場合、骨幹部近位に最大負荷が加わることを示した(Arangioら)

上記の報告にもあるように、Jones骨折の発生機序は、前足部荷重での力学的特性が関与しています。


|骨折のメカニズム

第5中足骨の疲労骨折は、
短腓骨筋付着部である粗面部から1.5~3cm遠位部に好発します。

足関節底屈位(+内反)により、
第5中足骨への大きな内転外力と
中足骨基部に付着する靱帯・筋の固定作用により
骨に弯曲される負荷がかかり、横骨折をきたします。

画像7

つまり、
Jones骨折は直接的な第5中足骨基部への荷重が問題ではなく、前足部外側荷重時に第5中足骨遠位端を支点とする弯曲された負荷が発生要因であることをおさえておかなければなりません。


|重症度評価

画像8

Type1では6~12週の免荷で骨癒合がみられたが、Type2以降だと骨癒合が得られないか、得られた場合でも非常に長期間を要したとしている。(Torg)


|治療方針

画像9

重症度別の対応として、typeⅡ以上の骨折ではopeを検討していく必要があります。また、骨折の治癒、競技復帰の期間より、typeⅠの骨折でもopeをするケースもあるようです。

画像10


|治癒過程における注意点

Jones骨折は偽関節を生じやすく、難治性であることが特徴です。

解剖学的な特性より、骨折の受傷領域である部位は血液供給の境界領域であり、血流が乏しい部位となります。
そのため、自己再生能力が乏しく、癒合不全・偽関節が生じやすいことが挙げられています。

第5中足骨の結節部と骨幹部には豊富な血液供給がある のに対し、近位骨幹部では血液供給が少なく血行障害を起こしやすい。(Smithら)

それに対し、結節部や骨幹部には豊富な血液供給があるため、骨折の程度によっては保存療法での治癒が可能で予後も良好であるといわれています。

画像11

病期分類や選手の置かれている状況などから治療方針を立て、経過に応じて画像診断を行いながらリハビリテーションを進めていく必要があります。

また治療目標として、
スポーツ復帰後の再骨折を防止することが重要であり、リハビリテーションでは、第5中足骨遠位端への過荷重を回避するための対応が求められることになります。


◼️ストレスの理解を深める

発症要因として多いステップ動作から考えていきます。
横方向のサイドステッブと前斜め方向へのクロスステップでは第5中足骨に加わる荷重は異なります。

|サイドステップ
特徴:第5中足骨基部への直接的な荷重は大きい。

画像12

|クロスステップ
特徴:第5中足骨遠位端への荷重(前足部外側荷重)が大きい。

画像13

このため、第5中足骨遠位端を支点とする弯曲負荷は、クロスステップの方が大きいことがわかります。

そのため、
クロスステップ動作における動きの特性から
「足関節外反・背屈 」の可動性もポイントとなります。

ここから先は

4,029字 / 13画像
毎月1回のオンラインセミナーの開催とアーカイブ配信 隔週で運動器疾患に対する理学療法評価・徒手・運動療法をテーマに動画を中心とした記事を配信していきます!

臨床+

¥500 / 月

運動器疾患を担当するセラピスト向けマガジン! 経験豊富な6人のセラピストがオンラインセミナーを中心に教科書だけでは解決できない臨床の悩みに…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?