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足関節内反捻挫の対応

臨床+の佐藤康です。
今月の臨床+は「足関節疾患」がテーマです。

今回、私は足関節疾患でも他関節疾患との関わりの深い
「内反捻挫」についてまとめていきます。

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内反捻挫の対応について、臨床ではリハビリオーダーのされない環境もあることを聞くことがあります。内反捻挫を経験したスポーツ選手や一般の方は数多くいらっしゃいますが、経験した多くの方が「ほっといたら治った」と話します。

自分がスポーツをしていた学生の時、捻挫を繰り返した経験がありますが、私もほっといたうちの一人です。

しかし、理学療法士として活動してからは、「放っといたら治った」という言葉が常に違和感を感じるようになりました。

放っといたら治った・・・

本当に治ったのか?
放っておいていいのか?
腫れが引いて歩けたから治ったのか?

この部分です。
この言葉からもわかるように急性期では安静という、なにもしない状態と痛みが治まったから治ったという誤った解釈になります。

そこで今回はその対応についてまとめていきたいと思います。



■捻挫のリハビリテーションでおさえておくべきこと

捻挫の対応をまとめる前に、
まず初めに「捻挫とは?」
について整理していきます。

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実際の対応方法を挙げる前に
病態を理解していきましょう。

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|病態

足関節捻挫
|内反捻挫
|外反捻挫

足関節捻挫の中でも圧倒的に多い割合を占めるのが内反捻挫であり、
足関節にみられる全外傷のうち「捻挫」は約75%を占めるといわれています。

捻挫は発生率や再発率の非常に高い疾患であり、そのまま放置しておくと
慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability:CAI)となり、
慢性的な疼痛やパフォーマンス低下をきたす一要因となります。

|受傷機転
内反捻挫は
足関節底屈+足部内反が強制されることで生じます。
多くは前距腓靭帯がまず損傷し、さらに外力が加わることで踵腓靭帯・後距腓靱帯の順に損傷されていきます。回外を制動する腓骨筋腱へのストレスを招く可能性もある外傷です。

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荷重時に足関節は背屈位にて骨性に安定しやすいことに比べて、底屈では骨性の安定性が低下するため、内反方向への外力により靱帯が伸張されるというメカニズムとなります。


|受傷部位

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高校生アスリートを対象とした報告では、前距腓靭帯単独損傷が約半数を占め、踵腓靭帯との合併損傷を合わせると70%を占めます。

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前距腓靭帯|底屈+内反
踵腓靭帯|背屈+内反

伸張する方向が異なる2つの靱帯がともに断裂や損傷してしまう要因としては、CFLとATFLの付着部の線維が関連していることだと考えられています。

子どもの捻挫
内反捻挫をしたときに骨端線が閉鎖していれば骨に対し靱帯の方が強度が弱いため、外側靱帯が損傷することがほとんどですが、成長期の子供では靱帯に対して軟骨(骨端線)の方が強度が弱いため、骨端線が開くことがあります。(骨端線離開)

足部の不安定性が残存したままスポーツ復帰をすることで、腓骨筋腱炎や離断性骨軟骨炎などを招く危険性があります。

|重症度

靱帯の損傷の程度に基づき、
重症度が分類されます。

Kannusらの分類

GradeⅠ:靭帯の損傷がなくストレッチされた状態でわずかな腫れと圧痛
GradeⅡ:中等度の疼痛と靭帯の部分断裂。軽度から中等度の関節不安定性
GradeⅢ:靭帯の完全断裂。強い腫脹,出血,圧痛,機能低下, 関節不安定性

Ottawa Ankle Rule
※骨折との鑑別

5つのテストにより骨折か捻挫かを判断する評価方法

①内果上方6cmまでの圧痛
②外果上方6cmまでの圧痛
③第5中足骨基底部の圧痛
④舟状骨の圧痛
⑤4歩以上の歩行不可(患側荷重下)

5つのポイントがすべて陰性であれば、骨折の可能性は低いと考えられますが、1つでも陽性であれば、骨折の危険性が疑われます。


|治癒過程・復帰期間

急性外傷における復帰時期について
考えるときは組織の治癒過程を考慮していきます。

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つまり、受傷直後から患部の治癒は始まっており、
外力に対する靱帯の張力は3週程度から強くなってきます。

そのため、リハビリテーションを進める上でも、病態診断・病態に応じた治癒過程・期間を十分に把握しておく必要があります。

一般的な復帰期間として以下の期間が挙げられています。

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そのため、復帰を考える上で、
重症度における損傷の程度も重要ですが、
損傷部位を特定して適切に対応することが重要となってきます。

|病態から考える治療方針

足関節の構造的な安定性を担う靭帯が伸張され損傷することにより、不安定な足部が形成されていきます。
そのため、捻挫の治療方針として靭帯組織の炎症抑制を早期から対応し、足関節の底背屈における関節運動軸を修正して、足関節周囲筋を中心に強化、運動連鎖を考慮した全身運動へと繋げることで運動復帰を進めていくことが求められます。


■評価

|問診
|炎症所見
|患部評価-足部・足関節-
|患部外評価

|問診

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X-p画像・エコー画像診断(場合によってMRI診断)による
医学的な所見については医師が行い診断をします。

それらの情報に加え、リハビリテーションでは、
初発であるのか?繰り返しているのか?も重要な情報として捉えていきます。

もし初発であった場合、受傷後早期より十分な対応がなされれば、損傷した靱帯の弾性の回復を望むことができます。しかし、繰り返しの受傷で靱帯が伸張されてしまった足部では靱帯の回復過程において初期のような弾性に回復できる可能性は低くなります。

そのため、複数回受傷のケースでは、エコー画像所見と内反運動における靱帯の制動性を確認したうえで、靱帯での制動性の低い・”ゆるい足部”であった場合、固定期間が長くても靱帯による制動性が望みにくいため、初発のケースと比べ固定を要する期間は少なくなります。その分、内反の制動性を他の軟部組織で補えるようトレーニングをしていかなければなりません。

|炎症所見

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腫脹や熱感の著しい炎症期における患部への介入はさらに炎症を強めてしまうリスクへとつながるため、避けなければなりません。

炎症所見の強い時期では荷重時痛も伴なうため、歩行時には松葉杖を使用し免荷をするなどの対応が必要です。脚を引きづって歩行し、帰宅してしまうことで炎症はさらに強まります。

|足部機能

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足部評価では
捻挫の病態から足部の安定性を評価していきます。

|構造的安定性
|背屈評価-OKC・CKC-
|足部可動性

構造的安定性

|前方引き出しテスト
|内反ストレステスト

※腫脹・疼痛の強い時期に検査をすることで損傷部位への炎症を増大させてしまうため、診断をする以外は最小限に行う

前方引き出しテスト

目的|足関節の構造的不安定性・前距腓靭帯の損傷
評価|①靱帯部分の痛み②健患差(患側の移動量↑)③End feelの消失
※筋緊張の強い場合は動き幅が小さいが、構造的に安定しているとはとらえない。

内反ストレステスト

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目的|足関節の構造的不安定性(前距腓靭帯・踵腓靱帯)
評価|内反誘導時の制動性・痛みを評価


背屈機能評価

背屈運動は
距腿関節に距骨がはまること(適合性)で構造的な安定性をつくります。

|OKC-ROM・Mortise test-
|CKC-荷重位背屈テスト-

Mortise test
ROM評価は割愛し、背屈動作の質的な評価を解説していきます。
目標は完全背屈できているかを評価していきます。

方法|背屈最終域での内旋→骨性のend feel
評価|正常であれば、距腿関節完全背屈位では距骨の回旋が起こらないため、距骨における外旋方向への遊びは確認されません(=つま先と下肢が内側に同時に動く)

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