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就職協定を骨抜きにする昨今の半日や一日のインターンシップの問題点

(はじめに)


 
 インターンシップでは、就職協定上就職とは関係ないということになっています。就職協定を骨抜きにするような、昨今のインターシップを、大学で就職委員を長年務めた私は、大いに憂います。日本の企業はいつから、このように破廉恥になったのか。それも日本を代表する大企業までが、半日や1日のインターシップを今盛んに募集しているのは、嘆かわしい限りです。この問題点について、多くの日本国民の皆さんに、認識してもらいたいと思い、これを書きました。
 

1. 就職協定がないと大学生は長い就活で、勉強に身が入らない


 
 私は今(2015年)大学の就職委員長をしております。安部政権が大学生や大学院生にじっくりと勉学に励めるように、今回40年前の就職協定に引き戻したのは、私は大いに賛成しております。
 なぜなら、「昨年までは、3年生には入ったらすぐ就職活動(就活)を始めなければ出遅れてしまうので、3年生はみんな就職活動で勉学に身が入りませんでした。また、なかなか内定が出ない人は1年半もの間就職活動をしていました。就活ばかりしていたら、学生は勉強に全く身が入らない。」からです。4年生の秋まで決まらない人はもうほとんどノイローゼ状態です。1社に対し5回も呼びだされるのですから、50社平均受けたとしたら250日、毎日行けるわけないし、各社応募の為にエント リーシートや履歴書は直筆で書けというのですから、学生はその書類作成にもものすごい時間をかけています。学生が気の毒なくらいです。50社 も受けるのかと、昨今の就活状況を知らない方々は、びっくりされると思いますが、今は学生一人当たり40社から50社と云われています。
 ところが、多くの皆さんは、就職が決まらないのは本人のせい、本人の問題だと、思うかもしれませんが、今は世間の制度の問題の方が、非常に大きいです
 しかしながら、そのような勉強できないような就職制度に世間がしているのに、昨今の企業は、入社した学生が勉強していない、質が悪い、ちゃんと製品(学生)の品質保証ができていない、今の大学はけしからんと、言いたい放題です。私は就職委員長として、勉強させていないのはこの長すぎる就職活動のせいだという認識をもっと、企業の皆さんや世間一般の方々に持ってもらい たいです。それはどうしてかを、就職協定の歴史から、以下見てみます。
 

2.  今の社長さんや部長さんは、大学は遊んでいても卒業できたが・・・


 
 思い返してみると、私が、大学に入学した昭和47年(1972年)には、就職協定がなく、その時の先輩の4年生はみんな3年生の時に就職活動して内定していました。あの頃1、2年生は一般教養 課程で勉強せず、3年生の専門課程に上がっても3年生のときは就職活動で1年間勉強せず、4年生になったら、もう就職決まっているので、勉強していませんでした。語弊を恐れずに言うと、私のすぐ上の人たち、つまり昭和15年から25年生まれ位までの、いま65歳(73歳)から75歳(83歳)くらいまでの人たちは、このような青田買いと学生運動が激しかったため、ほとんど大学できちんと勉強しておらず学力がほかの世代に比べて一般に低い世代です。この世代は団塊の世代を中心にしていて、全共闘世代とわれています。学生運動が盛んな頃は、大学では講義がなく、出席がないのに、大学も大量留年されても困るので、目をつぶって、単位を出して卒業させていました。民主党の時の首相達もその世代の人たちです。彼らの実力を思い浮かべて貰えば、皆さんわかるでしょう。今このような人達が、会社では社長や部長をしているので、今の社長さんや部長さんは、大学は遊んでいても卒業できると信じているようです。
 
 

3. 折角復活した就職協定が、経団連会長の鶴の一声で、就職協定がつぶされた


 
学生の学力と就職協定の関係を、以下に歴史的に見てみます。
 
昭和49年~平成7年(1974~1995)
 
 昭和49年(1974年)ころ、最近の日本人の学生のあまりにも学力がないことに危機感を抱いた当時の学識経験者たちが、経団連に話を通して、(4年生の)6月解禁10月内定という就職協定を作りました。それから20年ほどこの就職協定が守られ、学生も勉強するようになりました。
 
平成8年~平成17年(1996-2015)
 
 平成8年(1996年)に、それまでの就職協定が廃止され、就活時期がフリーになり、無秩序にまたなりました。それで平成8年~平成17年(1996-2015)の20年間もまた、学生が勉学に集中できない時代に逆戻りしました。
 
平成17年(2015)~
 
 安部政権が、日本人の学生の学力が諸外国に比べて低くなっていることを心配して、2015年に1974当時の立派な就職協定に戻しました。ところが、またも、三菱マテリアルの会長をしていた当時(2015年)の経団連会長の鶴の一声で、就職協定が骨抜きにされてしまいました。「俺は、大学で勉強しているより、直島の精錬所で工場実習(インターンシップ)していた方がよっぽど勉強になった!就職協定なんぞ要らない。」という主張でした。みんな過去を忘れてしまうのです。それで、半日や一日のインターンシップがはびこる事になってしまい、実質1972年以前の無秩序な就職状況に後戻りしてしまいました。なぜ、三菱マテリアルの会長の一人の意見でこのような状況に後戻りするのか、当時(2015年)私はいきどおりを覚えていました。
 

3. 就職協定を骨抜きにする昨今の半日や一日のインターンシップ


 
 安部政権(2015年)が、せっかく1974当時の立派な就職協定に戻したにもかかわらず、その2015年の就職協定は、早くも、1日や半日のインターンシップなどという、インターシップ(企業実習)とは名ばかりの制度を隠れ蓑にして、早期に学生と接触し、実質就職協定で禁止されている面接選考を行えるようにされました。、
 インターンシップとは本来、工場実習や企業実習を意味し、就職とは関係のないというのが、表向きです。私が東芝の総合研究所にいたときに、長岡技術大学からの大学院生を3カ月、研究所で預かって実習させていました。これは本当に実習(インターンシップ)でした。学生の単位にもなり、工場実習や企業実習することが卒業要件と成って居ました。したがって、単位認定科目の工場実習や企業実習を半日や1日でできるわけないだろうと思います。
 ところが、今もインターンシップは、表向き就職とは関係ないということになっていますので、この盲点を企業も就職支援会社もついているわけです。しかし、これは、インターンシップを隠れ蓑にして、実質就職のための企業説明会や採用選考を行っているのは、全く就職協定違反でしょう。
 

(おわりに)


 
 就職協定を骨抜きにするような、昨今のインターシップを、私は大いに憂います。日本の企業はいつから、このように破廉恥になったのか。それも日本を代表する大企業までが、半日や1日のインターシップを今盛んに募集しているのは、嘆かわしい限りです。日本の企業は、ここまで倫理観がないのか。猛省を求めます。日本人よ、もっと立派な侍になれ。
 
 

 
平成27年(2015年)1月4日 随筆
令和5年(2023年)9月30日 加筆
 
 
 

*なお冒頭の就活生のイラストは、下記のURLのフリー画像を使用させて頂きました。
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=23612256&word=%E3%82%AC%E3%83%83%E3%83%84%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E5%B0%B1%E6%B4%BB%E4%B8%AD%E3%81%AE%E8%8B%A5%E3%81%84%E7%94%B7%E5%A5%B3

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