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読書記録(2019年4月)「不便益のススメー新しいデザインを求めて」川上浩司

「不便益」というワードはインフォバーンの井登さんのUXデザイン講義で何度も聞いていたワードで、その概念をもうちょっと知りたいなと思ってこの本を読むことにしました。

「不便益」とは簡単に説明すると「不便」の「益」で、不便だからこそ、
得られる益があるんだという前向きな考え

書籍の中でも例が色々出ているが、例えば
保育園や幼稚園の「園庭」で、通常は平坦なので、わざわざデコボコにして園児の動きを不便にさせている。平坦な方が子供の面倒も見やすいし、園児の移動も便利だし、色んな遊びもできるし、デコボコだと転んで怪我をする恐れがある。

でもデコボコしている方が子供達が活き活きとしたり、子供達の足腰が鍛えられるかもしれない。

そんな「不便」なことによる「益」の効果やデザインについて書いてある本です。

効率化・自動化は工学の最優先課題

読みながら「便利」っていったいなんだろう?と思いながら読んでました。
一般的には効率が良かったりとか手間がかからないこと(エピローグでも一般論ではそう使われることが多いと書かれています)

筆者の川上さんは工学部出身で
人様のお役に立つこと、社会を豊かにすること=自動化・効率化・高機能化という構図が出来ていて、工学の世界でもそれが一般的のようです。
自分も工学系の出身でそういう考えを持つ人が多いのは肌感では感じています。

でも本当に手間がかからないことが、人間にとっていいのか、一概に便利なことがいいとは限らないです。

何かの課題を解決するアイデアを考えているときも、自分もそういうことが多いですが、すぐに効率的なことばかり頭に浮かんでしまう。
 遅ければ、早くすればいい
 面倒なら、その手間をなくせばいい

それらも素晴らしいことですが、それだけが必ずしもいいとは限りません。

名古屋ー東京間の移動で早く行くなら新幹線ののぞみがいいが
あえてこだまでゆっくり行く人もいます。約2時間半座って居られる場所があるという価値にもなり、グリーン車ならゆったりした席で作業しながら移動出来る。いつかやってみたいと思っていますw

楽ではないが楽しい

不便益は懐古主義のような「昔は良かった」というものでも、「不便だけど、我慢すれば良いことがある」と言った妥協でもなく、「不便だからこそ、良いことがある」という前向きな考えです。

「楽ではないが楽しい」というワードで思い浮かんだのがクイズです。

うちの家族は昔からクイズ好きなので、今でもついクイズ番組をつい見てしまいます。Qさまとか。国語や歴史は苦手ですが、クイズで覚えた人名もちらほらありますw

そんなクイズ番組を見る時は我が家には暗黙のルールがあります。
それはそのクイズの答えが分かっても言わないこと
答えが分かったらつい言いたくなりますが、それでも言ってはいけません。

早押し問題なら「これは分かったら言っていい?」とルールが解禁されれば言ってもOKなのだが、書き問題はもってのほか
それを破られるとつまらなくなる…そのルールを母親が破ると弟はよく怒りますw

なんでかというとクイズというのは考えること自体が楽しく、難しい問題ほど、答えが出た時に楽しく達成感があるのである。逆に簡単な問題はつまらない。

つまり考えたいんです。あえて苦労して不便を味わった先に楽しさがあります

なのに、そこで答えを言われるとその楽しみを奪われたことになる。
自分はいつも家族でクイズ番組を見る時は、答えが分かっても言わないようにしています。

苦労は一般的に手間と考えられ、取り除こうとしますが、クイズで苦労を取り除いたら、何も面白くないですね。
ちょうどいい難しさ、苦労加減が面白いですね。

これは教育の場面でも適用できると思います。
例えばUXデザインのワークショップでは、答えを教えすぎるとつまらなくて、ハードすぎると何をやっているのかちんぷんかんぷん。

参加者のレベルに合わせてプログラムを考える必要があります。
つい苦労しているとちゃんと教えてあげなきゃいけないかなとも思いますが、必要な苦労もあるので、そこが難しいところ。
ワークショップの中でその苦労が上手く設計できると不便益の8つの益のいくつかは発揮させると思います。

・主体性が持てる
・工夫出来る
・発見できる
・対象が理解できる
・安心・信頼できる
・上達できる(飽和しない習熟)
・私だけ感
・能力低下を防ぐ

無駄な無駄と無駄でない無駄

良くわからない言葉だが、不便益のことを考えていると、手間をかけるからことその益がたくさん見つかる。その手間は一見、端から見ると無駄に見えるが、無駄ではないということ

個人的にそれを感じるのがショッピングをする場面
女性は色々探しまわるのが好きで、男性はすぐ目的のものを決めたがると思ってます。
思考の特性を男女という乱暴に区別するのは良くないと思うが一般的にそういう傾向が強いと感じています。
この状況で男性から見ると女性の行動は無駄に見えるが無駄ではない

例えば何か特定のモノが欲しくて探しているとする。例えばソファとか。

女性は色んな物を見たいといい、その最中も楽しそうです。
結婚式のドレスを決める時もせっかくだからと色々なドレスを着たりします。

一方、男性は色々な物を見るのを嫌がりすぐに決めようとします。
(あくまでも自分の経験上そういう人が多いと感じていて、もちろんそうでない人もいるとは思います)

なぜそうなるかというと買い物に対する目的が違うんだと思います。
女性はもちろん物を買うことが目的なのだが、色々見て楽しむことを優先していると思う。つまり色々見ることが楽しくて、もちろん買わなくなって大丈夫な場合もある。

それに対して男性は、買うことが第1の目的なので買う、選ぶために見に行く。なので無駄に見ること、つまり候補にない物を見ることを嫌います。

ですので、女性が色々見ていることを男性からすると一見無駄に見えるのですが、女性にとっては無駄じゃないんですね

これが理解出来ないと喧嘩になっちゃいますねw
そもそもアプローチが違うことを意識しないといけませんね。
この男性脳でサービスを考えると全く女性にウケないサービスになってしまいます。(何度もいいますが、個人的に感じている傾向なので悪しからず)


まとめ

この本を読んで、一昔前は苦労、手間を効率化・自動化することが価値に直結していましたが、今は実はそうでもない場面が多くなってきてるんだなと感じました。

人が何を求めてその行動をしているのか、一見手間をかけていることをしているのかを考えて行こうと思いました。


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