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コンポストのUXリサーチを振り返って

この記事はUXリサーチ/デザインリサーチ Advent Calendar 2022の参加記事です。

はじめまして、たい焼き好きなUXリサーチャーのかとうこういち(
@ko1katoU)です🐟

このnoteではコンポスペットというデジタルコンポストのプロジェクトに参加してUXリサーチを実施したことやそのとき得た気づきをまとめていこうと思います。
実施したことベースの振り返りになりますが、皆さんに少しでも気づきや何かのヒントがあれば幸いです。

コンポスペットに参加した経緯としては
昨年の2021年にコンポスペットという新しいプロジェクトを始めるということで、はまやさん(@HamayaMasahito)に声をかけられて、調査に力をいれたいということで、UXリサーチ担当として参加しています。

コンポストとは

まず「コンポスト」というのをご存知ない方もいると思うので簡単に説明します。

コンポストは英語では「compost(堆肥)」や「composter(堆肥をつくる容器)」と言われており、生ごみを微生物の力を借りて堆肥にするものです。基材と言われるものの中に生ごみを入れてかき混ぜる、これを繰り返すことで微生物の力によって生ごみが分解され、堆肥になっていきます。
今は捨ててしまっている生ごみを循環することができる、とても環境に良いものです。近年、環境意識の高まりからコンポストに興味を持つ人が増えています。

https://camp-fire.jp/projects/view/632608

実は自分はこのプロジェクトに参加するまでコンポストというものを認識すらしておらず、このプロジェクトで初めて知りました。

コンポストには色んな種類があり、
一般的な物は設置型コンポストというのがあり、もしかしたらみなさんも畑や庭の片隅に緑色の設置型コンポストを見たことある人も多いのではないでしょうか。

設置型コンポスト
引用:https://www.oakvillehomes.jp/info/2018/03/29/1886/

(コンポストを初めて知ったといいつつ、そういえば実家にこの設置型コンポストがあったことを思い出しました。今は全く使われてないですが。。)

その他にも手軽にできるダンボールコンポストというのもあり、多くの自治体がこのダンボールコンポストの初め方講座というのを実施しており、
名古屋市や豊田市でも実施しています。

ダンボールコンポスト
引用:https://www.city.nagoya.jp/kankyo/page/0000060262.html


コンポスペットとは

そんなコンポストですが、やり方がよくわからない(自治体の講座はありますが、あまり知られている訳ではないようです)、においや虫が心配、場所がない、などの心配ごとがあり、なかなか普及していないのが現状です。

その課題の解消を目指して開発しているのが、
新しい室内用コンポスト「コンポスペット」です。

コンポスペットには以下の5つの特徴があります

  1. IoTセンサ付きのコンポスト

  2. 光触媒による消臭機能

  3. デジタルペットとのコミュニケーション

  4. できた堆肥でキッチン菜園を育てる

  5. 室内におけるかわいいデザイン

詳細はこちらのページを参照してください。
(現在クラファン中なので良かったら支援よろしくお願いします🙇)

1/8追記:無事目標金額達成してサクセスしました!ご支援ありがとうございました!!🙇


前置きが長くなりましたが、
そんなコンポスペットのプロジェクトの中で自分はUXリサーチャーとして支援しているのですが、今までで主に実施してきたことを紹介します。

実施したこと

競合体験
定性調査
定量調査

競合体験

まずはコンポスト自体を体験したことがなかったので、
自分自身で体験しながらコンポストというものを理解しつつ、
コンポストを実施するユーザーの気持ちを理解していきました。

試したのはLFCコンポストさんのバック型コンポストです。

このLFCコンポストを2021年7月から開始してしばらく自身で体験して色々な気づきがありました。

LFCコンポスト

<良かったこと>

  • まず単純ですが、可燃ゴミの量が減りました。我が家では火金の2回10リットルのゴミ袋の可燃ゴミがでるのですが、明らかにその10リットルのゴミ袋がパンパンじゃなくなりました。
    (人によっては週2回が週1回にゴミ出しが減ったという人もいるようです)

  • また、ゴミの日まで生ごみを放置することがなくなり、特に夏場などキッチンが生ごみ特有の匂いで臭くなることがなくなりました。
    基本的にコンポストへは生ごみが出たらその都度入れるか、細かく刻んだあとにタッパーに入れ冷蔵庫に入れて、翌朝コンポストに入れるので、キッチンに生ごみを放置することがなくなりました。

  • 一度野菜を多く傷めてしまってダメにしてしまったのですが、それを単純にゴミに捨ててしまうのと、もったいないな〜申し訳ないな〜という罪悪感の気持ちが出てきますが、ダメにしてしまった野菜もコンポストに入れるとその罪悪感が軽減されます。
    もちろん野菜は食べることが一番だとは思いますが、堆肥化するという有効利用をしているので、罪悪感は減ります。

<迷った点>

  • コンポストの中には基本的には生ごみを入れるのですが、どれを入れていいか迷うことが多いです。
    お肉はいれていいのか?卵の殻はOK?玉ねぎの皮を入れてみたけどなかなか分解しないなど迷うことが多かったです。
    (自分はこれはコンポスト上級者のはまやさんに聞いていました)


うまくコンポスト実施するには色々コツが必要で入れたらあまり良くないもの、入れるといいものなどあります。
動物系の肉や魚も入れて分解はされますが、匂いが出やすいので自分はあまり入れないようにしています。
そのように運用していたらコンポストからはほとんど生ごみ臭い匂いもしませんでした。

しばらく続けながら迷ったりする部分もありましたが、メリットも多かったので、2〜3ヶ月生ごみを入れ続けると入れるのをやめて熟成させる必要があり今のバッグを使えないので、次に入れるようの新しいバッグを購入し2個体制で続けることにしました。
(すっかりコンポストユーザーになってましたw🥦)

LFCコンポスト2つ体制

このように自分で体験しながら、こういうところは面倒だなとか、迷うな〜とか、こういうところは楽しいなというのを感じながらコンポスト体験をしていました。


定性調査

このコンポスペットのプロジェクトでは多くのヒアリングを行なってきました。プロジェクトの初期でははまやさんが60人近くの人にヒアリングを実施していました。

そして今年2022年の5〜6月にかけて以下の課題を明確にするために定性調査をすることにしました。

どういった人がコンポストをやっているのか
コンポストが普及しなくて、続けることができない要因は何か


定性調査のインフォーマントを探すのにはuniiリサーチさんを使いました。


  • 目的からリクルート条件の検討

コンポストを始める、続けることに対するハードルを明確にするということで、単純に考えるとリクルート条件は
「コンポストを始めようと思っているけど始められていない人(開始前)」
「コンポストを始めたけど、続けるのが難しくてやめてしまった人(断念者)」
となりますが、

ここで課題になるのは、そんな人見つかるのか問題です。

自分がコンポストを知らなかったということもあり、正直コンポストを知っている人や始めたいと思っている人が十分の人数集まるのかという懸念があったので、
まずは「コンポストを実施している人(実践者)」にインタビューすることにしました。

そこから始めるときのハードルや続けることのハードルを抽出することにしました。
実施している人の中にも少なからず始める前の不安や続けている中での苦労というのがあるので、十分情報は集まると思ったからです。

  • リクルート結果

どれぐらい集まるのか心配していましたが、蓋をあけると多くの応募があり、結局20人ものコンポスト実践者人にインタビューすることができました。

uniiリサーチさんのいいところはすぐにリクルートが出せるところなので
結局「コンポストを始めようと思っているけど始められていない人(開始前)」と「コンポストを始めたけど、続けるのが難しくてやめてしまった人(断念者)」の話も聞いてみようという話になったので、リクルートをして、インタビューすることにしました。

コンポスト開始前の人は15人ほど、コンポスト断念者は5人ほどお話を聞くことができました。

結果的に、実践者、開始前、断念者と合計約40人もの方をリクルートできたのは、正直意外でした。

コンポストの認知度や実施している人がどれだけいるだろう、その中で応募してくれる人はどれぐらいいるんだろうと思っていましたが、十分な人数が集まり情報を得ることができました。

コンポストの認知度や実践者が自分が思っているほどあるようで、
そしてuniiリサーチさんがとてもリクルートしやすいともあってクイックにインフォーマントを募集することができたのも助かりました。
(自分もuniiリサーチさんパネルとして登録していますが、応募の仕方や実際にインタビューまで進んだときもLINE上で完結できるので、やりとりしやすいですね)

  • インタビュー結果を分析して分かったこと

課題:どういった人がコンポストをやっているのか

以下の3パターンのタイプの人がいることがわかりました。

  1. 環境意識が高い人

  2. 家庭から捨てる生ゴミの量を減らしたいと思っている人

  3. 家庭菜園などのために堆肥を作りたいと思っている人

課題:コンポストが普及しなくて、続けることができない要因は何か

今回はコンポスト実践者だけでなく、コンポスト実践してない人(開始前や断念者)の話を比較できたのがよくて、そこでよく分かったことは

現状のコンポストって環境意識がかなり高い人じゃないと始めることができなくて、そして続かないんだなということが分かってきました。

ここで環境意識が高いと言っているのは、自分の時間やお金を使って具体的に行動に移している人のイメージで、普段使う洗濯洗剤を自然派のものに変えているだとか、環境問題がテーマの講演会に行ったりだとかゴミ拾いやビーチクリーン活動に行っているというようなイメージの人です。
(この環境意識の高い、中ぐらい、低いというのも大事な要素になってきたので、認識を合わせる上でどれぐらいの人が高いという設定にするかを定義もしました)

そういう環境意識が高い人じゃないと続かなく、そのモチベーションが続かなく途中で断念してしまうことがあるということがわかりました。

生ゴミの量を減らしたいというモチベーションだけでは、以下のようにあコンポストの負の要素が、開始前は不安に思ったり、実施中は実際に出てきて継続できなくなってしまうんです。

  • 虫が沸いてしまう。匂いが出てしまう

  • 途中で面倒になってしまう

  • 何を入れたら大丈夫なのか、ダメなのかが分からず失敗(匂いがでるなど)してしまう

  • 一度堆肥ができたけど、その堆肥の使い道がない

  • 実施した分の変化が少ないのでモチベーションが続かない

これらの要素は環境意識が高ければ、それでもなんとかしようとして越えられるハードルなのですが、生ゴミを減らしたいというだけのモチベーションでは、結局可燃ゴミでも捨てることはできますし、
開始前だったらコンポスト以外の手段での生ゴミ処理方法はあるので(生ゴミ処理器など)そちらが候補になってきてしまいます。


定量調査

定量調査としてWebでのアンケート調査も2回ほど行いました。

プロジェクトの初期の昨年2021年9月に受容性の調査や適正価格を知ることができるPSM分析というのをやったのですが、これは今回は割愛して別に機会に気が向けば記事を書こうかなと思います。

前述した定性調査の直後の今年2022年7月ごろに
コンポストの認知や潜在ユーザー(やりたいという関心はあるが始められてない人)がどれぐらいいるのかを知るためにWebアンケート調査を行いました。

  • サービス検討

定量調査なので、サンプル数は2〜300は欲しいですが、
そこまで予算はないので低料金でしっかり調査できるところはないか探してみました。

色々探した結果Freeasyというサービスを使うことにして、結構良かったです。

アンケート設計や画面の作成などは自分でやらないといけないですが、10問程度なら手軽にできますし、集計結果もすぐに出て簡単なクロス集計ならすぐに出来ます。

価格帯も今回は300サンプルで6問だったので、18,000円ととても安価に定量調査をすることができました


  • 調査設計と結果

今回はサンプル数は300人にしました。
以前の調査などでコンポストの認知が6〜70%ぐらいあると推定していて、
設問の中でコンポストを認知してる人を分岐で進める設計にしようと思ったので、コンポスト認知者が200人ほどになるようなサンプル数にしました。

ここからは調査設計とその結果を簡単に紹介します。

コンポストの認知
以下の結果で想定通り上の2つの選択肢を2つ合わせて59%と約6割の認知がありました。

Q.コンポストをご存知ですか?

コンポストの認知

この調査結果からもコンポスト自体の認知度は意外とあるんだなというのが自分の感想です。
名前を知っているレベルまで合わせると60%ほどあり、たまにこのプロジェクトの話をして「コンポストって知ってますか」というと「知ってますよ」と答える人が結構いるので認知度は高いようです。

こういうところは自分の思い込みで低いだろうとか思ってたらダメですね。


コンポストの実践者と潜在ユーザー

実践者と今後やってみたいと思っている人を潜在ユーザーとしました。
また、今後やってみたいと思っている人には段階を設けて、「情報収集している」つまり何か行動をしているのか、「まだ何も調べていない」つまり漠然とやってみたいな〜と思っている人に分けました。

  • Q.現在、コンポストを実施していますか?
    実施していない方は今後の実施意欲についてお答えください(コンポスト認知者のみ回答)

コンポストへの関心

今後やってみたいと思っている人(情報収集している人としていない人)は合わせて、実数で86人いましたので、サンプル数の300で割って

86/300=28.7%と潜在ユーザーは約30%もいるということがわかりました。

(上記グラフは認知者ベース(全数177人)なので、グラフ上の数字の合計とは異なります)

コンポストの始められない理由

定性調査で始められない理由がいくつか分かってきたので、それがどれぐらいの割合でいるのかを調査してみました。

Q,コンポストをやってみたいと思っている方にお聞きします。
やってみたいと思っているけど、現在始められていない理由を全て選んでください。(複数回答)

コンポストへの不安

元々分かっていた「虫や匂い」がやはり一番多かったですが、
他の理由は突出してどれが多かったり少なかったりせず、まんべんなくあるなというのが印象なので、結構複数の理由が占めているんだと分かりました。


まとめ

競合の製品を自ら体験してユーザーの気持ちを体験し、
定性調査で様々のユーザーの思考を聞いて分析し、
その思考や考えの人がどれぐらいいるのかを定量調査で確認をしてきました。

特に新しい事業やプロジェクトでは分からないことが多すぎるので、
自分達が決断・判断するためにも情報は必要ですし、
他の方に説明する(ピッチイベントやビジネスコンテストなど)にもこういうデータを定性的にも定量的にも明らかにするのはとても重要だと感じました。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

最初に書いたように実施したことベースの振り返りで気づきや学びへの昇華は少なめかなと思いますが、

ここが参考になったとか、ここをもう少し教えて欲しいなどあったらコメントやTwitterで返信くれれば、全力で反応するようにします!

最後になりますが、こんな調査をしてきたその結果を活かして、今後も活かしていくコンポスペットというプロダクトを現在クラウドファンディング中ですので、
少しでも興味を持っていただけたらページを見ていただき、少しでも気になったら、支援してくださるとありがたいです。

1/8追記:無事目標金額達成してサクセスしました!ご支援ありがとうございました!!🙇


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