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11月総括とタイ事業に関する質問に答えてみた

タイに旅行では行ったことがあるけれど、事業となると未知数...。最近よくタイ進出の相談をいくつか受けます。

かれこれタイに足を踏み入れてから9年弱が経過します。その過程で多くの経験をしました。

  • 21歳の学生時代にタイの日系広告代理店でインターン

  • 新卒でメガベンチャー人材会社に入社。新卒1年目からタイに出向し新規事業の立ち上げを担当。

  • タイ発のフィンテックスタートアップの東京支社での勤務

  • タイ人妻と結婚

  • 現在はタイでローカルに根ざした飲食事業を展開

またBtoBからBtoC、日系企業向けの事業からローカル向けの事業まで幅広く経験してきました。海外事業となると成功確率が日本と比べて低くなりますが、なるべく事業成功の角度を上げるために、これまで受けてきた「こんな事業をタイで展開したいけど、どうすればいい?」という疑問に答えていきたいと思います。

(あくまで私の経験をもとに推測した内容です&タイで大きな成功を成し遂げたわけではないので、参考程度に)

またタイ進出に関して、ご質問がある方は記事の後半に質問ボックスのURLを貼っておりますので、そこから投稿してみてください。

では実際にいただいた相談、質問の回答を書いていきます。

相談 1 : タイで業界特化の広告代理店を立ち上げたい

ある業界に特化した広告代理店事業を運営する方から相談をいただきました。まだその企業は社員が数名で、今すぐ海外に展開するというリソースはないとおっしゃっていましたが、こうした「広告代理店事業」をタイで展開する場合に「日系企業向け」か「タイローカル顧客向け」かに分かれてくると思います。(もちろん両方もある)

タイでは世界でも有数の日本企業の多い国で、日系企業を相手に事業をするだけでも一定規模までは成長できる土壌があります。

実際に多くの日系の広告代理点や人材紹介会社は日系企業のクライアントを中心に開拓し、成長を遂げています。

なので、まずは日系企業向けに展開するのかどうかを決める必要があり、「業界特化」とする場合に日系企業の市場だけでニーズが十分あるかを見極める必要があると思ってます。

あとはタイでどれくらいスケールさせるのかという点です。日系企業が多いといっても5800社ほどで、「そのマーケット内で事業が成り立てばOK」というのであればそれで問題ないですが、「せっかくタイで展開するのだから、多くのローカル顧客にも認知されたい」というのであれば話は別です。

タイのローカル顧客向けになると、日系企業にサービスを提供する場合に比べて単価が低くなりがちです。特に広告予算などは日系企業が普通に払う金額に対して、「高い!」と感じるタイ企業も少なくないです。

なので、自分以外のメンバーはタイ人ということをしないと、利益があまり残らないという事態もありえます。日本人を多く採用するにしても、規制があってそれなりにお金もかかります。

ただタイ人だけで運営するとなると、マネジメントの難易度が上がるので、英語が喋れる経営者、または経営層に近い人がタイで事業を起こす必要があるかと思います。
また英語ができるだけではダメで、現地の文化に溶け込みながら仕事ができる柔軟な人材が望ましいでしょう。

もちろん規模の大きな会社は通訳を採用したり、英語が話せて事業立ち上げができる人材を現地に送りますが、多くの会社では難しいでしょう。

なので経営者層が現地にくるか、「現地に骨埋めてきます(新卒1年目の私)」といってコミットしてくれる人を送る方が成功すると個人的に思います。

相談2 : タイで富裕層向けのベーカリー事業を立ち上げたい

日本で一定の知名度があるのでタイでも展開したいというお話も複数いただきました。確かにタイでもパンを食べる習慣はあり、パンを売ること自体は不可能ではないと思います。

ただよく相談を受ける際にあるのが「富裕層向け」という言葉です。富裕層とはどれくらいの所得を指しているのか、どこに住む人を指しているのかが曖昧で、この時点でサービスのコンセプトがぶれてしまいます。

タイ人は特別富裕層でなくても「え、そんなサクッとBMW、ベンツ買っちゃうの?」みたいなこともよくあります。「買い物は勇気だ」と語るタイ人もいます。

また日本人より年収が低くても、日本より割高なスシローは毎日大行列です。

このように、日本人より年収が低くても金払いが良いタイ人が多くいます。タイの月末のショッピングモールにぜひ行っていただきたいです。すごい熱気です。

話が脱線しましたが、実はターゲットと思っていない層もターゲットになり得る可能性があるということです。

ネットでタイ人の平均年収だけ見ると、日本人よりも低いなと思うかもしれませんが、そのタイ人の住む環境や私生活のルーティンによっては可処分所得が日本人よりも多いなんてこともありえます。なので、実際にサービスを出してみるまでわからない、といったところが実情です。

また「『日本からきたパン屋』というマーケティングで勝負する!」だと注意が必要です。タイでは「日本=パン屋が優れている」と思っていない方が多い可能性があります。
どちらかといえば「寿司焼肉ラーメン抹茶はやっぱり日本だよね」と思っている方が多いと思います。

日本産ブランドが使えないとなると、「タイローカルのベーカリーとどう差別化するか」それは、味なのか、価格なのか、見た目なのか。

味でも「日本の方がうまい!」といっても味は優劣ではなく、好みの部分もあるので、もしかしたら日本のパンは「全然甘く(辛く)ないのにやたらと高い」と捉えられるかもしれません。

なのでまずは大型のショッピングモールでのポップアップや、小さな店舗から始めるのが良いかもしれません。

相談3 : タイで抹茶カフェを作りたい

タイでは抹茶カフェがめちゃくちゃ多いです。ネットで検索できる今、抹茶の仕入れも難しくなく、仕入れたら簡単に作れるというので、増えているのでしょう。

特にタイで抹茶は高い価格(日本と同等かそれ以上)を設定しやすく、原価があまりかからないので、ビジネスとしては美味しいのかもしれません。

バンコク市内で「Matcha cafe」と検索するとたくさんでてきますし、空間デザインが得意なタイ人はかなりおしゃれな抹茶カフェを運営しています。

ここで「日本から来た抹茶です!」といっても、他のタイ人オーナーの抹茶も日本から来ているわけなので、「日本から来た」が弱くなってしまいます。

よほど品質を上げて味で差別化するか、マーケティングコストをかけるかしないと結構難しそうなイメージがあります。

とはいえ、うちのケーキ屋でも抹茶商品は扱っており、そこそこ売れています。抹茶のニーズはかなり根強いので、個人的にはバンコクの中心よりも、良いサービスの供給が少ない郊外にお店を出してみるのも良いと思います。

その場合に必要なのは郊外の土地勘です。信頼できるタイ人か現地に詳しい日本人に教えてもらうのが良いと思います。(私はこの辺り、最近自信がついてきたのでご相談ください)

相談4 : タイで〇〇業界に特化したメディアを作りたい

私も新卒1年目から「日本でこのメディアがうまく行ったから、タイでもお願いね」という形で、タイでメディアの立ち上げを行いました。

メディア事業自体の立ち上げは不可能ではないものの、やはり現地メンバーの採用、教育が必要になります。

ただ他の事業と違って、「最初はオンラインで軽く運営して試す」ということもできます。最近はChatGPTの誕生もあり、翻訳のコストがかなり下がっているので、メディアの海外展開は比較的やりやすい時代かなと思います。

一方で、同じ業界のメディアでも国が変われば習慣やルールも変わります。例えば日本の人事業界とタイの人事業界では違ったトピックが注目されます。

これがペット業界や車業界になっても同じことが言えます。なのである程度、現地のその業界に精通したタイ人を採用することが成功の鍵になります。


海外事業はやってみないとわからない

このようにタイにいるといろんなタイ展開に関する質問を受けますが、結論やってみないとわからないです。

難しいと思っていたものがうまくいくパターンもあれば、「日本では大人気のブランドなのに、店内がガラガラ?」みたいなこともよくあります。

とはいえ、避けられるリスクもあると思いますし、少なからずお役に立てる情報をシェアできると思いますので、お気軽にいつでも質問してください。

https://peing.net/ja/1f22e1ef29c44a

これからのnoteでもタイミングを見て回答を発信していきたいと思います。

追伸:11月の振り返り


11月は移動の多い月でした。カンボジア→日本→タイ→ネパールと、毎週末かなり移動していたと思います。

タイ以外の国に行くほど、アジア全域で事業をやりたいという気持ちは強くなりますが、改めてタイはASEANでもかなり規模の大きい国ということを認識させられます。

よくタイはシンガポールに次ぐアジアのハブだと言われますが、確かに各国へのアクセスも良く、経済自体も比較的成熟し、インフラが整っており、事業もしやすい。

まずはそのタイで安定した基盤を作りつつ、飛行機片道1-3時間ほどの隣国での事業展開を仕掛けていくのが良いなと常々思います。

事業内容もなるべく他国で展開しやすいものを中心に扱い、タイで磨き上げ、ASEANに広く展開するのが良い。予定では33歳(2027年)までに2か国目の展開を計画しています。

さて、来年1月からは2店舗目を出店予定です。この調子で3-4ヶ月に1店舗ずつ出していく計画を練っています。来年8月(サービスリリース1年)で熱狂5店舗出店!です。

まずはタイで広く認知されるブランド、商品を作る。タイで満足せずに、他国でまた0からスタートし、現地の洗礼を受けながら事業を作る。おそらくそんなことをしているうちに、話のネタに尽きないおもしろい人生が出来上がっていきそうな予感がします。

この国を私に任せてくださいという方はいつでもご連絡ください。アジアの事業家になって、忘れられない思い出を作りましょう。

そんな野心的な想いも持ちつつ、11月末で2名のスタッフが退職予定..。幸いにもネガティブな理由ではなく「それは仕方がないな」という理由なのですが、やはりタイは流動的です。

一方で、9月から入ってくれた若手社員が目まぐるしく成長していて、顔つきも変わってきている。なんかそういう成長を見たり、みんなで頑張って働いて、その後にみんなでうまいもの食べたりするのが最近の幸せを感じる瞬間です。

昨日も社員みんなで夜ご飯を食べながら、「もっと仲間を増やしてぇなぁ。世界中に。」と思いました。

もうこの人生は世界中で事業を作りながら、それぞれの現地の仲間たちと宴をすることに全部費やしてもいいなと思えています。そんな人生が完成したら最高じゃないですか。その人生の完成の過程にいることに毎日興奮を覚えています。

この旅路が絶えないためにも足元をしっかり固めて進めていきます。

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