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摂食障害について知る

こんにちは、papaたぬきです。
今回は摂食障害に関してまとめたものを記事にします。
・摂食障害について知りたい方
・すでに知っているけど改めて確認したい方
・支援者の方で現在対応中だけど摂食障害をどう理解すればいいか悩まれている方
などに読んでもらえると幸いです。
今回は摂食障害についてかなり大まかに把握することを目標としているので、各章に出てくる専門用語の解説は別の記事で書きたいと思います。

摂食障害とは

摂食障害とは精神疾患のひとつで、食行動を中心にさまざまな問題が生じる病気です。
私たちにとって「食べる」行為は生きていくために必要不可欠のものですが、それに問題が生じるとなると、

・お腹が空いてるのに食べない
・一定の量以上に食べすぎる
・食べても吐いたりして十分な栄養をとらない
・妙な食べ方をする
・食事の問題で身体や生活に問題が起きているのに問題と思わない

などという現象がおきます。

摂食障害の中核的な問題として、

・体重や体型が自己評価に過剰に影響を受けている
・体重や体型のコントロールができているか否かの自己の能力によって、その自尊心が決定されてしまう

という点があげられます。
この認知の偏りがその人の生活全体、さらに大袈裟にいえば人生を支配している状態が摂食障害であるといえます。

摂食障害の種類

まずは大分類である2種類、すなわち
「食べなさすぎる(拒食)」
のか
食べすぎる(過食)
のかです。

神経性やせ症/神経性無食欲症
 Anorexia Nervosa : AN
 アノレクシア・ネルヴォーザ : エーエヌ

特徴
・体重が軽すぎる。
・BMIが17.5以下で診断。
・痩せるために過剰な食事制限、過剰な運動、嘔吐や下剤乱用などの行為がみられる。
神経性過食症
 Bulimia Nervosa : BN
 ブリミア・ネルヴォーザ : ビーエヌ

特徴
・体重が普通または重すぎる。
・痩せる努力をしても続かない。
・体重を意識して嘔吐、下剤乱用などの行為がみられる。
・過食嘔吐後の強い後悔、自己嫌悪。罪悪感、抑うつが伴いやすい。

以下に、さらに分けた摂食障害の4種類を記します。

過食性障害
 Binge Eating Disorder : BED

特徴
・衝動的なむちゃ食い。ストレスも関係する。
・体重が重すぎる。
・体重をコントロールする意識はないか、少ない。
神経性やせ症排出型
 Anorexia Nervosa Binge-eating/purping type ; AN-BP

特徴
・体重が軽すぎる。
・食べたあとに嘔吐や下剤乱用など排出行為をして体重が増えないようにしている。
神経性やせ症制限型
 Anorexia Nervosa Restricting type ; ANR

特徴
・体重が軽すぎる。
・食べない。
回避・制限性食物摂取症
 Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder : ARFID

特徴
・特定の食物を過剰に避ける。
・特定の食物しか食べない。

また、「障害」という名前を使わず「症」という呼び方をするようになってきており、

摂食障害
 Eating Disorder
 イーティング・ディスオーダー

から、

摂食症
 Dysorexia Nervosa
 ディソレクシア・ネルヴォーザ

と呼ばれるようになっています。

摂食障害のタイプ

摂食障害には症状の重症度、その人のパーソナリティなどによって関わり方が変わってきます。
参考までに、以下に代表的なタイプ分類を記します。

瀧井正人
1.軽症摂食障害
2.中核的摂食障害
3.境界性パーソナリティ障害的摂食障害
野間俊一
1.反応・葛藤型
2.固執型
3.衝動型
トンプソン-ブレナーの摂食障害3類型
1.高機能/完全主義型
2.情動調節障害型
3.回避/抑うつ型

どのタイプ分類も概念が重なる部分があるのがお分かりいただけると思います。
大まかにまとめると、

ストレス反応として摂食障害症状が出現している軽症タイプ。回避、社会不安が併存しやすい。
中核的摂食障害、典型的なAN。頑なに痩せることに向かっていく重症タイプ。
幼少期の虐待体験をもつ、発達性トラウマ障害、境界性パーソナリティ障害などが背景にある感情コントロールが難しいタイプ。

この3つに集約されてくるのだと考えられます。
最近では、「中核的摂食障害」の患者数はずいぶん減り、
そのかわりに「境界性パーソナリティ障害的摂食障害」の患者数が増えているとのことです。

摂食障害の治療

現在推奨される治療は、以下の通りです。
・医師による食事管理、体重管理、心理教育
ガイデッドセルフヘルプを使用した心理教育的セルフヘルプ
・個人CBT、グループCBT
・強化された認知行動療法(Enhanced form of cognitive behavioral therapy : CBT-E
・専門家による支持的臨床管理(Specialist Supportive Clinical Management : SSCM
・モーズレイモデルの神経性やせ症治療(Maudsley Anorexia Nervosa Treatment for Adults : MANTRA
・家族をベースとする治療(Family Based Treatment for Adolescent Anorexia Nervosa ; FBT

他にも、
・メンタライジング・ベースド・セラピー(MBT)
・行動制限を用いた認知行動療法
・力動的精神療法
・対人関係療法
などもあります。

昔は家族関係が病気の原因だとみなされ、
家族から離して入院し行動療法一択といった治療がなされてきたようですが、
現在では家族を味方にし、
協力して症状を改善させる働きかけを行う治療が主流となりつつあるようです。
しかし深刻なANであったり、食べる実力がまだつかない段階においては本人が決して望まなくとも
必要に応じて栄養剤を投与したり、
口から食べられない状況であれば
鼻から管を通して栄養を投与することもあるようです。
薬物療法も状況によって使用されますが、
摂食障害を治療するための薬はなく、
第一選択として薬物療法を選択するのは
むしろ避けるべきだと推奨されています。

摂食障害の特徴を理解する

摂食障害の方の多くは、

「生きている実感がない」
「現実とのつながりが希薄」
「自分よりも他人を優先」
「世の中全般に向ける恐怖、不安」
「自分の感情、欲求に気づけない」
「本当のことが言えない」
「人を頼れず自分ですべて抱えようとする」
「自尊心、自己肯定感が低い」

という特徴を有しているといわれています。

摂食障害を発症する人の何割かに
幼少期からの虐待体験がある人が
多いとの報告があり、
そうなると成長する過程でも
周囲の顔色を伺い、
自分を大切にできず、
人との安心した関係づくりも
難しくなるといった様々な問題を
抱えてきた可能性があります。

もしかすると、
自分がコントロールできる唯一のものが
「体重」であり、
痩せることが良しとされる現代社会において
自分が認められると考えた結果の
拒食なのかもしれません。

また人との安心した関わりが少ないと、
社会性や感情コントロールの能力が育たず、
自分の気持ちに気付けず、
感情を言葉にできず、
衝動として湧き上がった感情は
何かしらの衝動的な行動として
外に出てくるようになっていきます。
ましてや人に甘えることが苦手で、
自分でストイックなまでに問題を抱え込もうとするなら、
ひとりっきりの対処として
暴飲暴食といった行為に及んでいるのかもしれません。
また頭では「治る必要がある」と理解しつつも、
どこかで「治りたくない」と考えてしまうのも特徴のひとつといえます。

自分だけで対処でき、
少しでも痩せれば安心でき、
不安や恐怖を紛らわせることができる魔法のような方法を手放すのは、
やはり抵抗があるのが自然だと思います。

また
「摂食障害である自分だからこそ周囲の人が自分を見てくれる」
「治ってしまったら人から見向きもされなくなってしまうのでないか」
と考える人もいるようです。

入院治療中はずいぶんと素直に、
治療にも前向きで、
退院後に使うための「対処」をびっしりとノートに書いていたという患者さんも、
退院後すぐに再発してしまい再入院するというケースも実際に少なくないようです。

「普通では人と関われない」という思いに至るまで、
どれほどの無力感、孤独感、自己否定がなされたでしょうか。
治療者はこのような思いに至るまでの経緯に理解を示しつつも、
「それでもこの先は自分で生きていかねばならない」
「今までいろいろあっただろうけど、自分の人生は自分で切り開かねばならない」
という確固とした姿勢を維持することも大切だといわれています。

今回は以上となります。

今後より詳細な説明を別の記事で紹介したいと思います。

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