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「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」感想と要点紹介⑩

こんにちは、papaたぬきです。
書籍「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」より、
感情へのアプローチのひとつである「拡張」についてまとめたものを記事にしたいと思います。

これまでの記事では自らの思考を観察し、価値に沿った行動をとらせなくするようなネガティブな考えを捉え、その思考と一体化することなく距離をとるといった「脱フュージョン」のテクニックを紹介してきました。
今回は、自らに起きる感情や衝動を捉え、価値に沿った行動に移るために必要な扱い方について「拡張」というテクニックを紹介したいと思います。


私たちが日頃強い感情に晒された場合、身体や心はひどく緊張し、思うような身動きがとれなくなってしまいがちです。
不快な感情があればそれを排除しようと躍起になり、ときには行動化として不適切な言動をとってしまうこともあるでしょう。


今回の「拡張」では、不快な感情があってもそれを排除しようとせず、むしろ感情が自由に動き回れるように心にスペースを空けるイメージをもち、自然と消えるまであるがままにさせる、といったアプローチになります。


「感情に居場所を作ってやる」という表現で書かれており、不快な感情に十分なスペースを与えてやれば、それらはそれ以上に私たちを張りつめさせたり、重圧をかけたりしないといいます。
感情と争ったり避けようとしているうちは緊張が続き、感情が自由に動き回れるほどのスペースを空けられる状態とはいえません。
大切なことは「観察すること」と言われており、以前の記事でも書いた「観察する自己」の出番となります。
自分の感情、そして身体感覚をよく観察することが拡張のポイントといわれています。

身体意識のエクササイズ

感情に居場所を作ってやるためにまず身体感覚に注意を向け、よく観察することが必要といわれています。
詳細な説明は割愛しますが、自分の身体の一箇所にそれぞれ10秒ほど注意を向けることを繰り返していく方法が紹介されていました。


頭から爪先まで身体をCTスキャンするように観察していき、どこかに固さ、緊張、痛み、不快感、温かさ、リズム、心地よさなどの感覚がどうなっているかをよく観察します。
深呼吸をし、空気が外から身体の中に入り、肺が機能している感覚、酸素が全身に行き渡るイメージ、内蔵感覚的な気づきも有効になります。


またこれらのエクササイズに取り組んでいる間、「思考する自己」の働きで様々な考えが次々と浮かんでは消え、ネガティブなささやきをしては行き去っていくという体験もなされるといわれています。


ただその思考に捉われるのでなく、かといって無視したり無くそうとするのでなく、その音声をラジオの音声のようなイメージで背景で聞き流すようにし、それまでしていたことに淡々と戻ればいいのです。

思考はそのまま、来るまま、去るままにし、存在は認めつつも注意を払う必要はないのです。
拡張を行うとき、思考は背景で行き来させ、感情に注意を向けるようにします。

拡張の4つのステップ

ステップ1 観察する

身体感覚に注意を向けたところで、一番不快な感覚は何かを観察してみます。
見つけられたら、それはどんな特徴をしているか探ってみます。
どんな輪郭、形、大きさ、重さ、色か。
身体の表面にあるのか内側なのか。
どんな温度、感触か。動きはあるのか。
イメージしてみましょう。

ステップ2 息を吹き込む

イメージができたら、そのイメージの内部や周囲に息を吹き込み、自由に動き回れるだけのスペースを作ってやるイメージをします。
何回かゆっくりと深呼吸し、その呼吸が感覚に流れこんでいくよう想像します。

ステップ3 感情の居場所を作ってやる

呼吸によって拡げられたスペースのイメージが感情の居場所になります。
私のイメージでは、興奮している馬を狭い厩舎に閉じ込めるのでなく、柵がついている広い牧場に放ち、ある程度好きなように走り回らせるような感じでした。

ステップ4 容認する

たとえそれが好ましいものでなくても、感覚の存在を容認します。

「あるがままにさせる」ともいえます。

不快な感情ならなおさら追い払いたい衝動に駆られるかもしれませんが、思考する自己が語りかけてきた場合は「心よ、ありがとう」と伝え、観察に戻りましょう。
感情を変えることが目的ではなく、感情と戦うことをやめ、受け入れることが目的になります。

もし感情が変化したり不快な感覚がなくなるようなことがあっても、それは本来の目的にされるのでなく、あくまで副産物だといえます。

感情を追いやらず、あるがままにさせられたら、次は「自分の価値に沿った行動をとる」のが求められます。
どんなに強い感情に晒され、衝動が込み上げたとしても、拡張のテクニックを繰り返し練習することで感情を観察し、行動の選択肢を改めて確認し、実行することができるといわれています。
感情や衝動は、実際の海の波のように押しては返し、そして永遠になくなることはありません。
ときに強い波が押し寄せたとしてもうまくサーフィンできる技術があれば、波に抗うことなく、海に溺れることなく、上手にやり過ごせるようになるのです。
衝動については、衝動の波が生まれてくるところ、頂点に達するところ、崩れ落ちるところを観察することがポイントになります。
衝動に1から10までの等級をつけるのも役に立つようです。(たとえば「煙草を吸いたい衝動があり、それは今のところ7の段階だ」など)
衝動を観察したら、衝動に息を吹き込み、居場所を作ってやり、あるがままにさせます。
そして自分の価値に沿った行動を選択していきます。

練習を重ねていくと、自分の思考、感情、衝動にセンサーがよく反応するようになりますが、何もすべての衝動をやり過ごす必要はなく、人生の障害になり得る問題に関する衝動のみ対応が必要になります。
よって、すべてのコントロール戦略をやめる訳ではなく、ある程度の問題解決的な行動はOKとみなす必要もあります。

続きはまた次回に。

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